謎めいた深夜番組に若者たちが救いを求める理由とは?『テレビの中に入りたい』スペシャル映像

謎めいた深夜番組に若者たちが救いを求める理由とは?『テレビの中に入りたい』スペシャル映像

第74回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に正式出品されたA24製作の『テレビの中に入りたい』(9月26日公開)。本作より、新鋭監督ジェーン・シェーンブルンが自ら本作の裏側を語るインタビュー映像&本編シーンが入ったスペシャル映像が解禁となった。

【写真を見る】「ピンク・オペーク」を見ようと自宅のリビングに座るマディと学校の友だち
【写真を見る】「ピンク・オペーク」を見ようと自宅のリビングに座るマディと学校の友だち[c] 2023 PINK OPAQUE RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

第74回ベルリン国際映画祭パノラマ部門をはじめ数々の映画祭で上映されると、「唯一無二の傑作」、「変幻自在の不穏さ」、「型破りな映画」、「この作品を表すのに“リンチ的”という言葉を使いたい」と絶賛され、全米公開では熱狂する若者たちが続出。公開1周年記念で新たなグッズが発売されるなど、続々と“中毒者”を生みだし続けている。

本作は1990年代のアメリカ郊外を舞台に、自分のアイデンティティにもがく若者たちの“自分探し”を描くメランコリック・スリラー。郊外での日々をただやり過ごしているティーンエージャーのオーウェンにとって、謎めいた深夜のテレビ番組「ピンク・オペーク」は生きづらい現実世界を忘れさせてくれる唯一の居場所だった。同じくこの番組に夢中になっていたマディと共に、2人は次第に番組の登場人物と自分たちを重ねるようになっていく。

ガールズヒーロー、イザベルとタラの前に立ち塞がる邪悪な月の男“ミスター・憂鬱”
ガールズヒーロー、イザベルとタラの前に立ち塞がる邪悪な月の男“ミスター・憂鬱”[c] 2023 PINK OPAQUE RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

A24とエマ・ストーンが設立した映画制作会社フルーツ・ツリーが共同製作を務める多様な魅力と美点を兼ね備えた本作は、2024年サンダンス映画祭のミッドナイト部門でプレミア上映されて以降、第40回インディペンデント・スピリット賞では作品賞を含む主要5部門にノミネートされるなど批評家たちを虜にし、全米では2024年5月の4館での限定公開から瞬く間に評判を呼び、5月には469館に拡大。ストーンが惚れ込んだ注目の新進気鋭ジェーン・シェーンブルン監督による特異な吸引力により、世界中に熱狂的なファンを生みだしている。

このたび解禁されるのは、「あんたは女子が好き?」というマディの問いかけに、「好きなのはテレビ番組」と主人公のオーウェンが答え笑顔を見せる印象的な劇中の会話シーンからスタートする『テレビの裏側』(『BEHIND THE GLOW』)と題した本作の貴重なスペシャル映像。シェーンブルン監督が脚本も手掛けた完全オリジナル作品となる本作だが、映像では監督自らが「本作はオーウェンとマディの物語で、2人がハマるテレビ番組が『ピンク・オペーク』だ」とストーリーを語り始め、マディが「ピンク・オペーク」について「怖いし、子ども向きじゃない」と少年時代のオーウェンに語りかける本編シーンが映しだされる。

続いて、シェーンブルン監督が「でも打ち切りになり、その直後にマディが行方をくらましてしまう」と説明すると、「この町を出る。知ってた?」とマディが劇中で語る本編シーンが。大切な相棒だったマディが何も言わずに行方をくらませ、「町に残されたオーウェンは、番組が持っていた意味を問い直すことになる」という監督の言葉に続いて、単なる「テレビ番組だ」と訴えるオーウェンに「本当にそれだけ?」と真剣な表情で問いただす劇中のマディの姿が映し出され、観る者をハッとさせる。

さらに、ダークかつポップな世界観でオーウェンとマディを魅了し、本作の重要なキーとなる謎めいた深夜のテレビ番組「ピンク・オペーク」を生み出すにあたって、シェーンブルン監督は「自分が好きだった番組を参考にした」と自ら語る姿も。「『Are You Afraid Are You Afraid of the Dark?』や『グースバンプス』、『バフィー~恋する十字架~』。当時の衝撃がいまでも残っているような番組」だと語り、インタビュー映像の合間には、本作の撮影現場で監督がキャストに指示を出しているような貴重なメイキング映像、短い本編シーンが散りばめられている。

本作についてシェーンブルン監督は、「私が若い頃、抱いていた苦悩を描きたかった。自分のことが理解できず、フィクションやTV番組にその答えを求めていた」と、自身が葛藤していた想いが本作製作のインスピレーションへとつながっていることも映像の中で明かしている。また、「まだ仮免も持っていない」という「ピンク・オペーク」の中での登場人物の印象的なエモいセリフも流れ、さらに「この作品の根底に描かれているのは、クイアの若者による自分探しの旅。ミステリーの解明も楽しんでもらえるはず」と、観客に向けたメッセージも送っている。

どこかへ行きたいのにどこへも行けない葛藤を抱えながら小さな遊園地で綿菓子を持ち退屈そうに歩くオーウェン
どこかへ行きたいのにどこへも行けない葛藤を抱えながら小さな遊園地で綿菓子を持ち退屈そうに歩くオーウェン[c] 2023 PINK OPAQUE RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

新たに解禁となった場面写真では、アメリカ郊外で閉塞的な日常を過ごすオーウェンが、どこかへ行きたいのにどこへも行けない葛藤を抱えながら街の小さな遊園地で綿菓子を持ち退屈そうに歩く姿、「ピンク・オペーク」を見ようと自宅のリビングに座るマディと学校の友だちを捉えたカット、さらに「ピンク・オペーク」で一心同体のガールズヒーロー、イザベルとタラの前に立ち塞がる邪悪な月の男“ミスター・憂鬱(メランコリー)”の怪しげながらキモかわいい姿も捉えられている。

孤独なティーンエージャーがクラスメイトから深夜の謎めいたテレビ番組のことを聞き、番組の中の世界を現実よりリアルに感じ始める本作。1990年代半ば、主人公が成長していく心揺さぶる不可思議な物語で、数十年にわたって不吉な予感が漂い、やがて限界へと達する。


“本当の自分”を知りたい気持ちと、それを知ることの怖さとの狭間で身動きができないまま、時間だけが過ぎていく。果たして、マディはどこに行ったのか。そして心の中に刻まれた「ピンク・オペーク」はオーウェンに何を語りかけるのか。せつなくも幻想的なメランコリック・スリラー『テレビの中に入りたい』に期待にしてほしい。

文/平尾嘉浩

作品情報へ

関連作品