クセ強キャラのオンパレード!常識を取っ払った『ChaO』のキャラクターデザインに込められた意図とは?
『鉄コン筋クリート』(06)、『海獣の子供』(19)、『映画 えんとつ町のプペル』(20)などで知られるSTUDIO4°Cのオリジナルアニメーション映画『ChaO』(公開中)。本作は主人公の青年ステファンと人魚姫のチャオによる、種族と文化を超えた恋と奇跡の物語だが、2人を取り巻く、一瞬見ただけでも印象に残る個性豊かな造形のキャラクターたちにも、ぜひ注目してほしい。
本作の舞台は、人間と人魚が共存する未来社会。船舶を造る会社で働くステファン(声:鈴鹿央士)は、ある日突然、人魚王国のお姫さま、チャオ(声:山田杏奈)に求婚される。ステファンは訳もわからないまま、チャオと一緒に生活していくなかで、純粋で真っすぐなチャオの愛情を受け、少しずつ彼女に惹かれていく。果たして2人の恋の行方はどうなる?
チャオとの出会いにより成長していくステファンや、愛情いっぱいにステファンを愛するお茶目で健気なチャオの姿も大きな見どころだが、あえて取り上げたいのが、強烈なインパクトを残す脇のキャラクターたちだ。
まるでハンプティダンプティのような見た目が印象的なシー社長(声:山里亮太)、とにかく顔が大きいステファンの叔父、叔母や記者、ステファンとチャオの結婚式に参列する人魚たち、キリッとした眉毛が凛々しい男前部長など。バラエティ豊かなビジュアルで、頭身もシルエットもバラバラなキャラクターたちが次から次へと登場することで、異なる種族が入り乱れる“人と人魚が共存する社会”を表現している。
宮崎駿監督作『となりのトトロ』(88)や『魔女の宅急便』(89)のラインプロデューサーを務めた田中栄子が主宰するクリエイティブ集団STUDIO4°Cは、ハイクオリティな映像と独特な世界観で世界中に多くのファンを抱えてきた。本作では絵を1枚1枚描く⼿描きアニメーションにこだわり、圧倒的な作画量と美しい背景美術が、世界の映画祭でも高く評価されている。
このキャラクターデザインが、アニメーション制作の面でもプラスに働いたそうで、通常のアニメーションでは作中に登場するキャラクターの頭身のバランスを統一させるところ、本作ではその常識を取っ払い“動き”に注力した。結果、一般的なアニメ映画の作画枚数が約3万〜4万と言われているところ、本作の総作画枚数はなんと10万枚超えに!
個性的なキャラクター造形に動きが加わることで、ステファンとチャオ以外のキャラクターもとても生き生きと輝いている。青木康浩監督は、「世の中、どんな人でも自分が主役だと思って生きていると思うんです。僕らからすると脇役に見えるような人でも、その人にはその人の人生がありますから。みんなが同じ時間を生きていて、街中ではいろいろ人生が交差している。そのなかでちょっとした偶然から恋が生まれることもある。そんな些細な“奇跡”を描いてみたかったんです」と回顧している。
フィルムの隅々にまでほとばしるキャラクターたちの生命力を、ぜひスクリーンでたっぷりと堪能してほしい。
文/山崎伸子