「これこそ映画として観てもらう作品!」田中圭ら豪華キャスト登壇『三谷幸喜「おい、太宰」劇場版』公開記念舞台挨拶
三谷幸喜脚本&監督の「完全ワンシーンワンカット」シリーズ最新作『三谷幸喜「おい、太宰」劇場版』の公開記念舞台挨拶が、7月11日にTOHOシネマズ 日比谷で開催され、田中圭、小池栄子、宮澤エマ、梶原善、松山ケンイチ、三谷幸喜監督が登壇した。
第1弾「short cut」、第2弾「大空港2013」、そして本作は、12年ぶりの第3弾「おい、太宰」の劇場版となる。海辺を舞台に、太宰治を敬愛する平凡な男が時代を超えて奮闘する、ノンストップ・タイムスリップコメディだ。
三谷監督は本作について「まさか劇場版になるとは思っていなくて、いまこうしてこの場に立てているのが不思議」としながらも「これこそ映画として観てもらう作品だなという気がした。放送版よりも集中して観られる映画館のほうがおもしろいですよ!」と自信を口にする。
ワンシーンワンカットの面白味については「やっている方は大変だけれど、ご覧になる方はカット変わりがない分、いっきに観てしまうおもしろさがある。しかもコメディだから、みんなで笑いを共有するという意味でも映画館で観てもらえるのはうれしい」と述べた。
太宰をこよなく愛する平凡な男で、テレビ番組の構成作家、小室健作役の田中。1日1回、合計6日間の撮影を振り返り、「スタジオで事前のリハはしたけれど、いざ現場に行ってみると予想以上に芝居エリアが広かったり、海辺の自然のなかでの撮影なので日によって潮位や天気の問題があった。僕らとスタッフさんと天気が一致しないといけないので、OKが出るのだろうかという不安もあった」とワンシーンワンカットならではの苦労を語った。
本番中に噴き出した汗も小池や宮澤の機転によってアドリブとして物語に組み込まれたそうで、これに三谷監督は「今日は映画館での上映なので、本当は今日も圭君の汗がお客さんにかかるような仕掛けをしたかった」と語り、笑いを誘った。
太宰の恋人で天真爛漫な女性、矢部トミ子役の小池は「撮影中は皆の向いている方向が同じ感じがして、芝居に入った時の集中力が一致して演じながらいいチームワークでできたと思った。舞台好きが多いので6回撮っても同じ回がないくらい、その場で感じた言葉を発してそれを受け取ってくれる技量のある方に囲まれていたので毎日が新鮮だった」と撮影期間を回想した。
健作の妻で好奇心旺盛な健作を支えるしっかり者、小室美代子役の宮澤は「やればやるほどキャラクターの深みと欲が海辺の大自然のなかにいることで解き放たれていった」と報告しながら、海へと入水する場面について「OKテイクになるだろう最終日に三谷さんから『帝国劇場にいる気持ちで芝居してほしい』という演出があったので、とにかく私のできうる限りの大きな芝居をしようと思った。これ以上奥に行ったらダメだなというところで沈んでみたら思いのほか沈んでしまって。振り返ったら松山さんが背中を向けて笑っていた」と舞台裏を披露。これに松山は「あのシーンが大好き。下田の浜辺が帝国劇場になっていてビックリした。見どころポイントの一つです」とプッシュした。
地元の漁師、打雷次郎のほか合計3役を務めた梶原は「事前に入念な打ち合わせをして早着替えの努力をしたけれど、本編を観てみると何の気なしに自分がいる。苦労のかけらも見えない。それはそれですばらしいと思った」とひと安心。撮影中の移動は画面に映らないようカメラマンの後ろにピッタリ寄り添って着替えたり、唯一の移動経路であるトンネルをダッシュしたり、かなり苦労したという。
とあるシーンでは予想以上に田中が早く戻って来てしまったそうで、梶原は「自分がカメラに映ってはマズいと思って岩肌の足場の悪い所を超ダッシュした。人間ってこんなに頑張れるんだと思った」と苦笑い。三谷監督は「今回の撮影で一番疲れていて、いまもまだ疲れが取れていないと思う」と梶原の見えざる努力を労っていた。
健作がタイムスリップ先で出会った男、太宰役の松山は、青森県出身の太宰と同郷。セリフを津軽弁にすべく、地元の知り合いのアナウンサーを相手に方言を学び直したという。「僕も東京暮らしが長くてシティボーイになってしまったので、青森駅の喫茶店に2人で入ってずっと方言の練習をしていました。ただ青森の中にも津軽弁と下北弁があって、僕はゆかりの深い下北弁の自分の感じも入れたいと思ったので、かなりミックスしています。なので本作の言葉は『青森の言葉』という表現でお願いします」とこだわりを見せた。これに三谷監督は「いまだかつて太宰を描いて青森言葉でしゃべった人はいないはず。本作はまさに画期的です!」と絶賛していた。
また、本作を別のキャラクターで演じるとしたらどの役を演じたいか?と問われた田中は「みんな嫌です!」と即答し「移動している梶原さんのことも見ているし、映ってはいけないプレッシャーのなかでタイミングを計りながら演じるのは疲れる。山のなかを行ったり来たりするのも大変なので…考えられないです」とお手上げだった。
映画館限定で上映される“もう1つのエンディング”も見どころとなる。最後に三谷監督は「“もう1つのエンディング”は放送版を観た方でも楽しめるように用意したものですが、実際はそのおまけのエンディングこそ本当のエンディングのつもりで撮ったものです」と明かしながら「本作を映画館での大画面で観ると、劇中の不思議な浜辺に自分がいるかのような感覚になると思います。その臨場感をたっぷりと味わっていただきたいです」と呼びかけた。
文/山崎伸子