“28”のトピックで振り返るサバイバル・スリラー『28日後...』と『28週後...』、そして最新作『28年後...』へ

コラム

“28”のトピックで振り返るサバイバル・スリラー『28日後...』と『28週後...』、そして最新作『28年後...』へ

無人のロンドンは実際に交通封鎖をして撮影

8:低予算映画
製作費は800万ドルと比較的低予算ながら、全世界で8270万ドル以上の興行収入を記録し、批評的にも大成功を収めた。

9:感染者役のほとんどがボランティア
エキストラを雇用する余裕がなく、感染者役にはボランティアが起用されている。ボイルとガーランドによるDVDのオーディオコメンタリーのなかでは、ボランティアたちにコーヒーや紅茶を振る舞ったこと、凶暴性を表現した演技が素晴らしかったことが語られている。

10:ロンドンを交通封鎖
ジムが無人のロンドンの街をさまよい歩くシーンでは、実際に早朝のロンドンを封鎖して撮影が行われている。また、ジムが目覚めてから立ち寄った教会で大量の死体を発見するまで、死体はおろか血も映っていない。しかしこの演出によって、無人になった世界の異様さが表現できたとボイルは語っている。ちなみに、コメンタリーでのガーランドによると、走行する車がちらっと映り込んでいるらしいのだが、ボイルはそれを笑い飛ばしている。真偽はいかに?

ジムがロンドンをさまよい歩くシーンは実際に交通封鎖して撮影された(『28日後...』)
ジムがロンドンをさまよい歩くシーンは実際に交通封鎖して撮影された(『28日後...』)[c]Everett Collection/AFLO

11:教会に大量の死体がある意味
大勢が救いを求めて教会にやって来たことが示唆されている。これはルワンダ内戦を捉えた映像に着想を得たと語られており、荒廃した世界を描くにあたってほかにも、シエラレオネ、カンボジア、北アイルランドなどでの内戦や紛争が参考にされている。

12:ロンドンでの撮影は大変
28日後...』よりも前でボイルが大変だったと振り返るのが、『トレインスポッティング』におけるユアン・マクレガーのトイレのシーンと『ザ・ビーチ』でのディカプリオとの撮影。ロンドンのシーンもこれらに匹敵する大変さだったとのこと。

13:デジタルカメラで撮影
「家庭用のビデオカメラが普及したことで低画質な記録映像が残されているはず」と考え、本作はデジタルビデオカメラ「Canon XL1」で撮影されている。ザラついた映像が荒廃した世界の独特な雰囲気を醸しだした。ちなみに、『28年後...』ではiPhoneも使用されており、感染者の集団が生存者を追いかけるシーンでは特殊な器具にiPhone 15 Pro Maxを20台も並べて撮影したという。

感染者の群れが生存者を追いかけるシーンではiPhoneも使用されている(『28年後...』)
感染者の群れが生存者を追いかけるシーンではiPhoneも使用されている(『28年後...』)

黙示録的な世界を盛り上げる音楽たち

14:ジョン・マーフィーによる劇伴
劇伴を手掛けたのはリバプール出身の作曲家、ジョン・マーフィー。『サンシャイン 2057』に『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(21)、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(23)などにも携わっている。サウンドトラックの一曲「In the House - In a Heartbeat」は特に有名で、次作『28週後...』はもちろん、『キック・アス』(10)など他作品でも使用されている。

15:ゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラー
ジムがロンドンをさまよい歩くシーンで流れているのは、カナダのポストロック・バンド、ゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラーによる「East Hastings」。もともと音楽を流す予定ではなかったが、乗り捨てられた車のサイレンが突然鳴りだすシーンで観客を過度にびっくりさせないために使用したという。結果的に不穏で重厚なサウンドが黙示録的な世界観をより際立たせることになった。『28年後...』のクライマックスでもこの曲が使用され、『28日後...』とはまた違った印象を与えている。

より悲劇的なエンディングがあった

16:異なるエンディング
ジム、セリーナ、フランクと彼の娘ハンナは、ラジオで放送されていた安全とされる軍の基地を目指すことに。しかし、目的地に着いたところで感染したフランクが兵士によって射殺され、セリーナ、ハンナは捕えられ、ジムも処刑されそうになる。この窮地をジムが感染者たちを扇動することで脱する。それから28日後、高原の小屋に避難していた3人が偵察機に発見されるところで物語の幕は閉じられる。

このエンディング以外にもいくつかの結末が用意されており、DVDの特典映像でそれらを確認することができる。基地から脱出する際、軍の指揮官に腹部を撃たれて重傷を負うジム。別エンディングではこの傷がもとで彼は死んでしまう。ジムを病院へ運び込み、必死に救命処置を行うセリーナとハンナがその死を見届け、悲しみに暮れるなか、再び銃を手に取り、廊下を歩いて去っていく後ろ姿にはどこか明日への希望も感じさせる。

17:異なるエンディング2
大筋は上記と一緒。死の淵にいるジムに被さるようにメッセンジャーの仕事をしている彼の姿、事故に遭う瞬間が映しだされている。

18:異なるエンディング3
こちらはストーリーボードの段階で見送りになり、実際には撮影されていない。感染したフランクをロープで縛り、治療法を求めて映画冒頭に登場する研究施設へとたどり着いたジムたち。施設内には内側から施錠された部屋があり、そこに潜んでいた生存者を発見する。

19:治療法はあったが…
その生存者は研究所の職員だと思われ、彼からウイルスの治療法を聞きだしたジムたち。しかしそれは、体に流れる全身の血をすべて入れ替えるというもの。3人は途方に暮れるがそこへ大勢の感染者が押し寄せてくる。絶体絶命のなか、ジムとフランクの血液が適合することが判明。反対するセリーナとハンナを押し切り、ジムが自身の血液をフランクに提供しようとする。

別エンディングでは結末が変わるジム(『28日後...』)
別エンディングでは結末が変わるジム(『28日後...』)[c]Everett Collection/AFLO


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