激動の時代にこそ響く“怒り”と“魂の声”…映画『宝島』熱気あふれる「コザ暴動」撮影現場に潜入!
ジャンルを超越する“チャンプルー”表現と、沖縄の“死者の声”に耳傾ける
大友監督は、『宝島』をミステリーやサスペンスといった特定のジャンルに限定せず「オンちゃんという人間の身に起こった出来事について、各キャラクターの生活をしっかり描きながら、それぞれの関係性のなかで生まれてくる感情を重視して撮っていきました」と振り返る。「沖縄の言葉で、“ごった煮”を意味する“チャンプルー”という言葉があるけど、ドラマもサスペンスも悲劇も喜劇も、紙一重の背中合わせなものなので、ジャンルを意識している場合ではないなと。『宝島』の映画化をやるってことは、“チャンプルー”を引き受けるってことだと思うんです」。
沖縄には“死者の声”に耳を傾けるという文化があり、彼らのマブイ(魂)が人々に大切なことを伝えてくれるという独特の死生観がある。大友監督は今回、この“死者の声”に耳を傾け、映像に落とし込むことに心血を注いだという。「沖縄の声にならない声やマブイに対して、どれだけ我々が耳を澄ませて本作に挑めているかということが大事だと思ったんです。これには答えはないんですが、『僕が受け取った彼らの声を映画に込めよう』『きっとこういうことがいまの世の中に必要なのではないか』と考えながら、なんとかそれを作品にアウトプットしようと苦心しました」と、作品に本気で向き合うからこそ、答えのない“チャンプルー”のような作品に仕上がったことを明かした。
様々な困難を乗り越え、監督の内に秘めた“怒り”と、沖縄の人々の声なき声、コロナ禍に我々が感じた想いが共鳴し制作された“チャンプルー”のような映画『宝島』の公開がいまから待ち遠しい。
取材・文/編集部
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