綾野剛「亀梨和也、ここにあり」と惚れ惚れ!『でっちあげ』嵐を呼んだ対決シーンは「映画の神様っているのかなと思わせてくれた」
『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』(6月27日公開)のレッドカーペット&プレミアイベントが6月16日にカナデビアホールで行われ、綾野剛、柴咲コウ、亀梨和也、大倉孝二、迫田孝也、三浦綺羅、木村文乃、光石研、北村一輝、小林薫、三池崇史監督が出席した。
第6回新潮ドキュメント賞を受賞した、福田ますみのルポルタージュ「でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相」(新潮文庫刊)をもとに映画化した本作。2003年、小学校教諭の薮下誠一(綾野)は、保護者の氷室律子(柴咲)に児童、拓翔(三浦)への体罰で告発される。児童側を擁護する550人の大弁護団が結成され、民事裁判へと発展するが、法廷は薮下の完全否認から幕を開ける。
この日キャストと監督はレッドカーペットを晴れやかな笑顔で闊歩し、近距離でファンと対面した。あちこちから歓声を浴びた綾野は、「剛さん、今日はありがとう!」と観客から声をかけられると「こちらこそありがとう!」と応答する場面も。渾身作を引っ提げたイベントで、ファンとの交流を大いに楽しんでいた。三池監督は「上映が始まったら、皆さんを地獄に突き落とします。始まる前、楽しく過ごしていただけたら」と語り、会場の笑いを誘っていた。
綾野は、児童に凄惨な体罰をした「史上最悪の殺人教師」として各メディアを騒がせる小学校教師、薮下役を演じた。「本当にうれしいです。最高の気持ちです。こういった景色を作っていただき、改めて感謝申し上げます」と会場を見渡して、感無量の面持ち。「渾身の作品が誕生しました。各部署の皆さんの繊細さ、濃密さをギュッと圧縮して1本の作品にまとめました。129分、感じたことのない、体験したことのないような時間を提供できると思います」と完成作への手応えを力強く語った。
三池監督が「すっげえ怖い」と吐露し、さらには小学校の校長である段田役を演じた光石も「本当に怖かった」と評したのが、律子役を演じた柴咲。終始、三池監督と絶妙なやり取りを見せていた柴咲は、「三池さんともお久しぶりで。三池さんの作品のなかで律子を演じることができて、とても幸せでした」としみじみ。「演じている時は、あまりこの役柄を評価しないようにしようと思って。与えられたもの、監督が求めているもの、自分から出てくるもの。そういったパッションを大切にして演じていました。私は律子を愛しているし、愛のこもった役をどのように捉えていただけるか楽しみにしています」と反響に期待していた。
薮下の体罰事件を顔写真付きで実名報道をする記者、鳴海役を演じたのが、亀梨だ。薮下と鳴海が直接対決するシーンでは、もともと人工的な雨を降らす準備をしていたものの、本当に豪雨が発生したという。亀梨とは14年ぶりの共演となった綾野は、鳴海との対決シーンを振り返り「印象にしっかりと残っていますね」とにっこり。
「14年ぶりに亀ちゃんと対峙する。前作でも、実は同じような状態で対峙をしていて。お互いの成長を確かめ合いながら、この作品のためにできることをお互いに考えていた。長く続けていると、こういったご褒美みたいなことが起こる」とここまでの道のりに思いを馳せながら、「個人的にはとてもシビれましたし、最高の鳴海を生き抜いてくれて、僕にとってもとても大切なシーンになりました。実際に本当の嵐を呼んでしまったという。亀梨和也、ここにありだな」と喜びをあふれさせた。すると「嵐」という言葉に反応した亀梨は、「『嵐』は、直系の先輩ということで。ややこしいですが、ちょっと来てくださった。ありがたいですね」とお茶目に語り、綾野と会場も大笑い。さらに「実際に大雨がブワーッと降ってきた。立っていても溺れてしまうような感じで。風もすごかった。10分くらい経ったら、また晴れ間が出てきた」と当日の様子を興奮気味に明かすと、綾野も「映画の神様っているのかなと思わせてもらえた」と亀梨と作り上げた奇跡的なシーンに、感激しきりだった。
また律子の息子で、薮下からひどい体罰を受けたとされる少年の拓翔役を演じた三浦は、綾野との共演について「僕が撮影初日で緊張していたんですが、剛さんが『よろしく』とギューッとしてくれたので、その時に緊張がほぐれました。撮影の合間もお互いの呼び名を決めたり、お話ができたのでうれしかったです」と感謝。「でも演技の迫力がすごくて、本当にびっくりしちゃったシーンもあるので、皆さんに見つけてもらえたらうれしいです」と綾野の素顔と演技のギャップに驚いた様子。続けて「柴咲さんも演技中の迫力がすごくて。こんなお母さんだったら、怖いしどうしよう…と思いました」と先生と母親の迫力に震えたと語る。綾野は「年齢が違うとか関係なくて、対等な関係のなかで一緒にお芝居を作っていく共演者として、とてもリスペクトが生まれた」と三浦の姿勢を称え、「これからの綺羅くんを見続けていきたい」と希望。柴咲も「すごく素直に、その時の感情をお芝居に映しだしていた。『そうだよね、それがいいんだよな』と改めて学んだし、勇気づけられた。私も素直にお芝居をしていこうと思えました。ありがとうございます」と大いに刺激を受けたと話していた。
取材・文/成田おり枝