『サンダーボルツ*』が北米V2達成!MCUの不調を打破する“質重視”戦略のロールモデルに?

『サンダーボルツ*』が北米V2達成!MCUの不調を打破する“質重視”戦略のロールモデルに?

先週末(5月9日から5月11日まで)の北米興収ランキングは、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品『サンダーボルツ*』(日本公開中)が2週連続でNo. 1を獲得。同作を含む上位4作品の顔ぶれと並びは前週から変化なく、全体の総興収は前週対比58.1%で約1ヶ月半ぶりに1億ドルを下回る週末となったが、まだまだ上位にいる大作勢は好調。決して閑散期に逆戻りしたというわけではなさそうだ。

オープニング興収が伸び悩むも、2週目でまずまずの維持を記録した『サンダーボルツ*』
オープニング興収が伸び悩むも、2週目でまずまずの維持を記録した『サンダーボルツ*』[c]Everett Collection/AFLO

『サンダーボルツ*』のこの週末3日間の興収は3239万ドル。MCU作品は2週目に大きく数字を落とす傾向があるが、『サンダーボルツ*』の場合はオープニング週末対比43.6%。コロナ禍以降に公開された作品としては『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOL3』(23)の52.4%、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(21)の46%、『デッドプール&ウルヴァリン』(24)の45.8%に次ぐ2週目の維持率で、予想以上の粘り腰を見せていることがわかる。

これは前回の当記事でも触れたように、作品評価の高さと今後のMCU作品における重要な位置付けの作品になる点がプラスに働いているといえよう。ディズニーのCEOボブ・アイガーは先日、投資家向けの電話会議においてこれまでのMCUの“量重視”の戦略を反省した上で、『サンダーボルツ*』をMCUの新戦略(=質重視の作品づくり)における「最初で最良の例」と称賛の言葉を述べている。

作品評価の高さでじわじわと興収を積み上げ、北米累計興収1億5000万ドルも見えてきた!
作品評価の高さでじわじわと興収を積み上げ、北米累計興収1億5000万ドルも見えてきた![c]Everett Collection/AFLO

北米累計興収は先週末の時点で1億2774万ドルとなっており、その後の平日も順調に数字を重ね次週末には1億5000万ドルに到達する見込み。また、海外興収を含めた全世界興収も3億ドル到達が視野に入っている。これまでのMCU作品と比較すればペースは遅いものの、いまが復興期であることを考えれば順調な推移と判断できる。これで興行的成功も伴えば、ヒーロー映画の低迷期から本格的に脱却する糸口となるはずだ。

一方で、前週から3分の2の興収を維持して2位をキープした『Sinners』は、ついに北米累計興収2億ドルを突破。原作を持たないオリジナルの実写映画が北米累計2億ドルを突破するのは、『ゼロ・グラビティ』(13)以来だろう。ビッグヒットになりづらいホラー作品かつオリジナル作品として、その健闘ぶりは目を見張るものがある。こちらも全世界興収3億ドル到達が目前。

【写真を見る】YA小説原作のピエロホラーが好スタート!新たなホラーフランチャイズ誕生の可能性も
【写真を見る】YA小説原作のピエロホラーが好スタート!新たなホラーフランチャイズ誕生の可能性も[c]Everett Collection/AFLO

この週末に新たに公開されたタイトルはいずれも上位には届かなかったものの、特筆すべきものがあるのは5位に初登場を果たしたホラー映画『Clown in a Cornfield』。アダム・チェザーレのヤングアダルト小説を原作にした同作は、静かな町ケトル・スプリングスで新たなスタートを切ろうとしていた父娘の前に、“フレンド・ザ・クラウン”という殺人ピエロが現れるという物語だ。


今年のサウス・バイ・サウスウエスト映画祭でお披露目され、まずまずの高評価を得た同作は、初日から3日間で興収364万ドルを記録。製作費100万ドルに満たない低予算映画であることを踏まえれば大成功のスタートであり、興収1000万ドル超えも視野に入っているとか。なにより原作小説はすでに2巻、3巻と続編が刊行されており、今作の成功によってシリーズ化はほぼ確実。また新たなホラーフランチャイズが誕生するかもしれない。


文/久保田 和馬

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