ヘイリー・アトウェルが語る、イーサン・ハントとは大違い(!?)のトム・クルーズの神エピソード!「家族まで大切にしてくれて、最高の時間を過ごすことができた」
「イーサンとのやりとりは、『スティング』など1970年代の映画を参考に組み立てた」
過激なアクションやスタントで注目を浴びる「M:I」シリーズ。これまでもMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)シリーズなどエンタメ大作への出演経験を持つ彼女に、本シリーズならではの特徴を聞いてみると、「撮影段階で脚本がフィックスされていないこと。現場で内容が次々に変わるんです」と明かしてくれた。サービス精神が旺盛なクルーズは、おもしろいアイデアが浮かぶと躊躇せず取り入れるフレキシブルなスタイルで撮影に臨んでいるという。「映画製作に変更はつきものですが、普通は撮影の数週間前に修正点を伝えられ、セリフを覚え直して挑むんです。でもこのシリーズは撮影中でもトムや(クリストファー・)マッカリー監督がアイデアを出し合い、時には『君はどう思う?』『もっといいアイデアはない?』と意見を求められます」。ただし、舞台でも活躍しているアトウェルは即興の現場を楽しんだようだ。「オーディションの時にトムたちから、僕たちはこうやって撮っていると言われました。このスタイルが気になるなら難しいかもしれないけれど、すごく楽しい現場だよって。もちろん私はOKでした」と笑う。
グレースが盗みのプロだという設定も、前作の撮影直前にアトウェルとクルーズの会話から生まれたアイデアだったとか。「私がスタントチームと格闘シーンやナイフを使ったトレーニングをしていた時、だんだん慣れてきて小道具を素早く使いこなせるようになったんです。そこで指でカギを出したり隠したりするトリックをマスターしてトムに見せたら、シンプルだけど優雅ですごくおもしろい!と喜んでくれて、イーサンから鍵を盗む泥棒になったんです」と明かす。さらに彼らはイーサンとグレースの関係性に、1970年代のケイパームービーを取り入れた。「トムと役について話をしていた時、イーサンとグレースが敵からなにかを盗み取ったら楽しいよね、という流れになりました。そこで『スティング』や『おかしなおかしな大追跡』、『華麗なる賭け』など1960年代後半~70年代の映画たちを参考に、2人のやりとりを組み立てたんです」。
「私にとってトムは映画の恩師、メンターのような存在」
もともと1本の映画と想定されていたが、そのボリュームから前後編の超大作となった『デッドレコニング』。5年にわたった共演を終えたクルーズの印象を聞くと「理想的なリーダー」だった。「誰にでも礼儀正しく、ファンにも敬意を持って接するというトムに関する噂は本当でした。彼は強い影響力を持つ現場のボスですが、規律を重んじ、子どもや弱い立場の人に優しく接する、理想的なリーダーなんです」というアトウェルは、トムは共演者の家族も大切にするとロンドンでの撮影中のエピソードを教えてくれた。
「クリスマスイブに、トムはロンドンに住む私の祖母をサプライズでヘリコプターに乗せてくれたんです。夕暮れ時にヘリコプターを操縦してやって来て、夕日に染まったテムズ川の遊覧飛行に連れていってくれました。おばあちゃんは、『私にヘリコプターに乗れっていうの?』と驚いていましたが、トムはどれだけ安全か丁寧に説明して、穏やかに飛行してくれたんです。映画のイーサンとは大違い(笑)。家族まで大切にしてくれて、最高の時間を過ごすことができました」。
アトウェルが“ワンマンスタジオ”と呼ぶ、映画づくりに対する姿勢にも多くを学んだと言う。「トムはストーリー作りや構成から照明をどうセッティングするかなど、実践的な撮影術まで映画づくりに関する広い知識の持ち主で、それをいろんな人と共有することを大事にしています。私もプロダクションミーティングに呼ばれ、どうしたら映画をよりよくできるのかをみんなで話し合いました。大好きな映画がどんどん広がっていってほしい、という想いからなんです。彼と共演して、改めて『M:I』シリーズが世界中で愛されている理由がわかりました。映画に対する愛や真摯な姿勢は学ぶことばかり。私にとってトムは映画の恩師、メンターのような存在です」。
取材・文/神武段四郎