心揺さぶられる…!『容疑者Xの献身』や『八日目の蝉』『金子差入店』など、思わず涙がこぼれる感動サスペンス&ミステリー映画6選
天才数学者が仕掛けた謎に隠された“献身”とは『容疑者Xの献身』
東野圭吾のベストセラー小説を映画化した、知性と感情が交錯する『容疑者Xの献身』(08)。テレビ版に引き続き福山雅治が天才物理学者の湯川を演じて大ヒットを飛ばし、大人気「ガリレオ」シリーズとしてこれまで3作が劇場公開された。
惨殺された男性の遺体が発見され、被害者の元妻、靖子(松雪泰子)に疑いがかかる。しかし、彼女には完璧なアリバイがあり、捜査協力を依頼された湯川は靖子の隣人で自身の高校時代の友人である数学者の石神(堤真一)に目をつける。
数学者と物理学者という異なる天才同士の対決を軸に、殺人事件の真相と誰にも気づかれなかった“献身”が静かに浮かび上がってくる。湯川と石神との知的対決と、論理で積み上げられたトリックの先にある“人間の情”に様々な想いが押し寄せる珠玉作だ。
被告人と弁護士の対話を通し、倫理と真実を問い直す『三度目の殺人』
是枝裕和監督が挑む、法廷を舞台に倫理と真実を問い直す『三度目の殺人』(17)。殺人事件の加害者と弁護士の対話を通じて、“人が人を裁く”という根源的な問いが観客に突きつけられ、重厚な心理劇としても見応えのある一作に仕上がっている。
弁護士の重盛(福山雅治)は、工場経営者を殺害して現金を奪ったとされる男、三隅(役所広司)の弁護を担当する。だが三隅の供述は二転三転し、事件の動機すら曖昧なまま。やがて重盛は被害者の娘、咲江(広瀬すず)と三隅の接点や事件の背後にある事情を知ることになる。
事件の真相よりもその奥に潜む人間の本質に迫る構成が異色な本作。面会を重ねるごとに揺らぐ“正しさ”は、観る側の倫理観をも激しく揺さぶってくる。静謐な映像と緊張感ある対話劇が法廷ドラマの枠を超えた哲学的な味わいを生み、翻弄されながらも胸を打つ。
せつなく壮絶な女性の物語…“母娘の絆”とはなにかに迫る『八日目の蝉』
少女誘拐事件というショッキングな事件を題材にした角田光代の傑作小説をベースに、“母娘の絆”とはなんなのか?を問う成島出監督作『八日目の蝉』(11)。子供を誘拐した女性と、誘拐犯に育てられた少女。2人の視点から過去と現在が交錯し、せつなさと赦しに満ちた物語が紡がれる。
不倫相手の子どもを誘拐した希和子(永作博美)は、逃亡を続けながらも“母”として少女を育てていた。だが数年後、警察に逮捕され、少女の恵理菜は実の家族のもとへ戻される。そして時が流れ、成長した恵理菜(井上真央)は過去を知る旅に出る。
この作品の最大の魅力は、犯罪と愛情の狭間にある母性を繊細に描いた点。緊張感に満ちた逃亡生活と、お互いを慕い合う母娘のような2人の穏やかな時間の対比がせつない余韻を残す。この過去をどう受け止めるかを静かに問いかける物語が、観る者にも“赦し”の意味を考えさせることだろう。