丸山隆平が『金子差入店』で見せた役者としての進化「40代としての覚悟と責任感を持って取り組んだ」

インタビュー

丸山隆平が『金子差入店』で見せた役者としての進化「40代としての覚悟と責任感を持って取り組んだ」

「役として対話できたことが僕にとっての財産」

少女を殺害した犯人と、差入代行のため面会するが…
少女を殺害した犯人と、差入代行のため面会するが…[c]2025「金子差入店」製作委員会

──北村匠海さん演じる事件の犯人である小島貴史の、狂気に満ちたキャラは衝撃的なものでした。撮影で印象深い部分は?

「金子はとある事情を抱えた人間ですけど、張り詰めた独特の緊張感だけじゃなく、小島とも違うような、自問自答する心境を匂わすような作りにもなっていたと感じました。金子から小島を見ると、あくまでも奇怪な第三者で特異に感じ受けながらも、どこかで他人事とも思えないような心情…というんですかね。

金子の過去に言及する小島のシーンもありますが、これが塀の中とか外とかいう意味を超越して、お芝居したあとにも自身に問いかけられるような場面でした。振り返れば北村さんは独自のレシピで挑んだ芝居という印象でした。冷静に鬼気迫る演技を見せ、監督も大絶賛してて、ちょっと嫉妬しましたけれども(笑)。彼の技術もそうですし、キャリアだけでもない彼の培ってきたものによって、お芝居のなかでどの役にもアプローチできるっていうのはすばらしいなと。役として対話できたことが僕にとっての財産だったと思っています」。

丸山は演じる役柄を自身に共存させて体現するイメージトレーニングを毎回行っているという
丸山は演じる役柄を自身に共存させて体現するイメージトレーニングを毎回行っているという撮影/興梠真穂

──金子の眼光がよかったですね。

「本当ですか!うれしい。感想を自分で言わせてもらうと『俺こんな顔してたんや!』ですね(笑)。自分ってこんな表情してたんだ!?っていうのは映画を観て初めて思いました。また、これは僕だけかもしれませんが、現場でのモニターチェックはできるだけしないんです。見ちゃうとその芝居を追いかけてしまうというか、さらに欲が出てしまったりするので、とにかく監督が現場でおっしゃることを体現することに徹します。狙ってうまくできる人だったらいいんですが。監督のなかでOKだったらOKが出るわけだし、それをわざわざ見て確認っていうのは、僕自身が野暮ったいと思っちゃって。あくまでいまの、僕個人の勝手な感覚なんですが。しかしアプローチができる人は常に確認して、微調整することが凄いことだなとも思います。撮影が進んでいくにつれてストレスも重圧も変わっていくし、それが逆にある種の幸福度となって丁寧に変化していく感じでした」。

ある日、息子の幼馴染の少女が殺害される事件が発生する
ある日、息子の幼馴染の少女が殺害される事件が発生する[c]2025「金子差入店」製作委員会

──音楽業と役者業とのバランスは、専業の方々より大変だと想像しますが?

「実は“お得なこと”のほうが多い気がします。求められる技術と使う脳みそは違うと思うんですが、表現の部分で言うと、音楽もお芝居もバラエティもそうなんですけど、すべてに共通するのは、余白・空間・間みたいなところで、例えば“休符”みたいなニュアンスです。ここにセンスが出るってよく言われるじゃないですか。

それは現場での把握能力とか相手との空気感や“間”のことだったり。それらの共通点で言えばすべてがその瞬間の“セッション”なんですよね。お芝居もセッションだしバラエティも完全なセッションで。どの“間”で突っ込むか、あるいは引くのかと。その共通点があるから、いろんなジャンルをやることで相互作用が生まれてくるので、感覚としては結構お得なんです。コメディアンって言われる方は一つ必ず芸があって、かつお芝居もできるし笑いもできる。そうしたことが1本筋が通ってる気がします」。


丸山が初の父親役で見せる表情にも注目
丸山が初の父親役で見せる表情にも注目[c]2025「金子差入店」製作委員会

「幼いころから僕の父が言ってたのが『謙虚でいなさい』という言葉」

──親と子どものつながりについても、すごく考えさせられる作品になっていました。丸山さんご自身でなにかご家族とのことで心に残ってることは?

「そういう側面もありますね。親子の在り方や、加害者側のシーンなど。幼いころから僕の父が言ってたのが『謙虚でいなさい』という言葉でした。謙虚とは、調べると『へりくだる』という意味も含まれてるんですよね。仮にある程度の評価があったとしても、回答には極力控えめにと。いまも印象に残る父の言葉で、それを努めるようにしていますが、アイドルとしてもその時代や時期としてステージが変わってくると、へりくだり過ぎても逆に嫌味にもなってくる場合もあると思うんです。ってことは、謙虚さの形が立場やキャリアや年齢によって変わってくるのだと。いまでも謙虚さの塩梅ってやっぱり難しいし、その言葉はいつでも忘れていません。ちなみに(父が遺した言葉みたいな話に聞こえるかもしれませんが)、父は元気ですよ(笑)」。

取材・文/米澤和幸

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