こんな訪問はご免こうむる!『パニック・ルーム』に『ドント・ブリーズ』、『異端者の家』などヤバイ“家”系映画たち
功名な罠が仕掛けられた屋敷に若いシスターが囚われる『異端者の家』
最新の変な家映画『異端者の家』は巧妙な罠にはめられた2人の若きシスターの体験を描いたA24が放つサイコスリラー。モルモン教の布教のため、森のなかに建つ屋敷を訪れたシスターのパクストン(クロエ・イースト)とバーンズ(ソフィー・サッチャー)。気さくで話し好きな家主、リード(ヒュー・グラント)に気を許した2人だったが、いつの間にか自分たちが監禁されていることに気づいていく。
リードが論じる宗教についての楽しい会話が少しずつ不穏な空気を漂わせ、やがて想定外の事態へとなだれ込んでいく本作。ついに正体を明かした彼に誘導されて入った書斎には2つの扉があり、扉にはそれぞれ「信仰」、「不信仰」と記されている。2人は「信仰」の扉を選ぶほかないが、さらにその奥には不気味な地下室へと続く階段があり、踏み入ったところで鍵を閉められてしまう。リードとの問答に耐えながら脱出を試みるが、彼以外の住人の存在も示唆され…。
タイマー式で施錠される玄関に複雑な地下の構造、なぜかししおどしが規則的に音を立てる書斎の奇妙な装飾など、なにからなにまで謎めいている。宗教についての持論を延々と述べるリードの“実験”の目的も不可解で、いい意味で観る者を裏切り続ける底知れなさが醍醐味。監督&脚本は「クワイエット・プレイス」シリーズの原案、脚本を手掛けたスコット・ベック&ブライアン・ウッズ。はじめは居心地がよさそうだった家が、しだいに奇妙な味わいを醸していく様はお見事。幾重にも罠を張り巡らせ、シスターの自由を奪うリードを怪演するヒュー・グラントの巧みな話術も手伝って、衝撃のラストまで一気に引き込んでいく。
登場人物たちの心理戦やサスペンス、不可解な現象を盛り立てる役割も果たす、様々な仕掛けが施された異質な家たち。最新作『異端者の家』とあわせてチェックしてみてほしい。
文/神武団四郎