「スター・ウォーズ:キャシアン・アンドー」はなぜ高評価?ディエゴ・ルナが語るシリーズの強み「様々なリスクを恐れなかった」

インタビュー

「スター・ウォーズ:キャシアン・アンドー」はなぜ高評価?ディエゴ・ルナが語るシリーズの強み「様々なリスクを恐れなかった」

「様々なリスクを恐れなかったのが、このシリーズの特徴の一つ」

そんな難民だったキャシアンを助けてくれたのは廃品回収業の女性、マーヴァ(フィオナ・ショウ)。彼女と母子のような絆で結ばれたキャシアンは、同じように廃品や盗品を売りさばく仕事をしているが、あるトラブルをきっかけに、密かに打倒帝国を唱える者たちと出会い、スパイ活動を担うようになる。おもしろいのはそのキャシアンをはじめとしたメインキャラクターがひと筋縄ではいかないところ。みんなヒーローとは言い切れない面も併せ持っている。

「様々なリスクを恐れなかったのが、このシリーズの特徴の一つだと思っています。例えばキャラクター。僕たちは彼らが抱える矛盾についても触れるべきだと決めていたんです。だから、キャシアンを含め、いい人、悪い人というふうに簡単に分けてはいない。すべてのキャラクターのいい面も悪い面も描くというのが僕たちのやり方です。視聴者もそれを理解してほしいとトニーは言っていました」。

本当の親子のような絆を築いたマーヴァとキャシアン
本当の親子のような絆を築いたマーヴァとキャシアン[c]2022 Lucasfilm Ltd.

もちろん、ファンはそれを受け入れ理解した。そのキャラクター描写のリアルさに感動すらした。これまでのシリーズにはない感覚だったからだ。「このシリーズでよく言われるのが、“アダルト”や“マチュア”という言葉です。この評価は、ずっとシリーズを観ながら大人になったファンだからこそなんだと僕は思っています。つまり、シリーズと同じように年を重ねたファンが成熟し、よりチャレンジングな作品が観たいと思うようになった時に生まれた作品だということ。そもそもベースになっている『ローグ・ワン』自体が観客にどう評価されるかわからない、リスクもあるフィルムメイキングをしていましたから。胸が痛くなるよう終わり方だったし、みなさんはそれが大胆だと感じたのではないでしょうか。でも、思い出してください。シリーズ1作目『新たなる希望』も、リスクを恐れない映画だったでしょ?ルールをぶっ壊し、それを悪びれることなく見せてくれた。僕は、『ローグ・ワン』も同じエネルギーを持っていたと感じています」。

言うまでもなく、そのエネルギーは「キャシアン・アンドー」にも引き継がれている。だからこそ『新たなる希望』や『ローグ・ワン』を観た時と同じように胸が熱くなる。しかもこのシーズン2が描くのは、まさに革命前夜。様々な星で、そこに暮らす普通の人々が立ち上がるのだ。

革命の陰に生きる、市井の人々のリアルな姿を描きだす「スター・ウォーズ:キャシアン・アンドー」
革命の陰に生きる、市井の人々のリアルな姿を描きだす「スター・ウォーズ:キャシアン・アンドー」[c]2025 Lucasfilm Ltd.

「“希望”という言葉はこのシリーズにとってとても大きな意味があります」

「もうひとつ、今回のシリーズで僕がおもしろいと思うのは、革命においてフォーカスされないような人々にスポットを当てているところです。感動的なスピーチをした人や、すばらしい作戦を提案した人など、歴史に名を残すような偉人やヒーローではなく市井の人たち。彼らが抱える喪失感や勇気を描き、彼らがいたからこそ革命は起きたのだということを教えています。そしてまた、革命が成功したことで得られる達成感を描くのではなく、革命がどうやって伝搬して行くのか。市井の人々の心がどうやって火山のように噴火するのか、そういうことにも焦点を当てています。だから喪失感や痛み、不平等も描ける。それもこの作品の大きな魅力なんです」。

そして、今回のシーズン2で印象的なのは“希望”という言葉。キャシアンもモン・モスマら反乱勢力のリーダーたちも、この言葉を口にする。“希望”はシリーズのマントラ的存在だったことを思い出させてくれるのだ。

「“希望”という言葉はこのシリーズにとってとても大きな意味があります。銀河の最もダークな時代に、キャラクターたちはギリギリのところに立っている。そういうなかで希望をつかみ取らなければいけないんです。だから、何度も口にして人々に伝えているんですよ。いわば“希望”は、前に進むためのツールなんだと思います。僕自身、希望という言葉は大好きです。私には子どもがいる。この言葉を信じているからこそ、次の世代に引き継がれていく“希望”の象徴である、子どもが欲しいと思ったんです」。


「スター・ウォーズ」シリーズにおける重要なキーワード、“希望”。ディエゴ・ルナも大きな意味がある言葉だと語った
「スター・ウォーズ」シリーズにおける重要なキーワード、“希望”。ディエゴ・ルナも大きな意味がある言葉だと語った[c]2025 Lucasfilm Ltd.

考えてみれば『スター・ウォーズ/シスの復讐(エピソード3)』(05)のラストにはタトゥイーンの2つの太陽を背に赤ちゃんのルークを抱くオーウェン・ラーズの姿が映しだされ、その赤ちゃんこそが“新たなる希望”だった。そして、本シリーズでの“希望”とはなんなのか?ぜひともその目で確かめてほしいと思う。

取材・文/渡辺真紀

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