自分をそのまま受け入れてくれる人に出会えたら…『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』『最強のふたり』など“2人”の絆に心揺さぶられる映画
この過酷な世の中を生きていくうえで、自分のありのままの姿を受け入れてくれる人がいたら、どれほど心強いことだろう。6月13日(金)より公開される映画『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』は、他人の目を気にせず自由奔放に恋愛を楽しむ女性と、ゲイであることを世間に隠している孤独な青年との唯一無二の絆を描くストーリー。今回は、印象的なセリフの多い本作の魅力をはじめ、ソウルメイトとも呼ぶべき“2人”が登場する、観ると元気が出る作品を紹介していきたい。
20歳で出会った男女の13年間をたどる青春映画『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』
国際ブッカー賞やダブリン文学賞にノミネートされるなど、海外でも高く評価された韓国の作家パク・サンヨンのベストセラー小説「大都会の愛し方」のうち、「ジェヒ」の章を基に映画化した『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』。メガホンをとったのは『女は冷たい嘘をつく』(16)のイ・オニ監督。2人の主人公、エネルギッシュで奔放な女性ジェヒ役に映画『破墓/パミョ』(24)のキム・ゴウン、ゲイの青年フンス役に世界的に注目されたドラマシリーズ「Pachinko パチンコ」のノ・サンヒョンがキャスティングされ、誰もが憧れるかっこいいバディを演じきった。
20歳の時、ソウルの大学で出会ったジェヒとフンスは、社会にうまくなじめないはみだし者同士。とある出来事をきっかけに親しくなった2人は、21歳でルームメイトとして一緒に暮らし始める。お互いに恋愛のこと、家族のこと、なんでも話せて、みっともないところも安心して見せられる大親友の2人の関係は、大学を卒業し、社会人になったあとも変わらない。だが、そんなある日、2人の友情を揺るがす危機が降りかかる。
観る者の共感を呼ぶ、ジェヒとフンスの生き生きとしたリアルなセリフの応酬は本作の見どころの一つ。ゲイであることを隠して生きてきたフンスは、男性とデートをしている現場を目撃されたことで、ジェヒに「弱みを握られた」と思い込んでしまう。後日、彼女から「なんでそんなにトガってるの?あんたらしさがなんで“弱み”なの?」と言われた時のフンスのハッとしたような表情は胸に沁みる。自分が弱みだと思っている部分にこそ、実は自分らしさが宿っている。おそらく、その後のフンスの人生を支え続けたに違いないそのセリフを、数年後に形を変えて、ジェヒにさりげなく伝えるシーンは必見だ。
また普段は強気なジェヒが予期せぬトラブルに見舞われ、一緒に病院へ付き添ってくれたフンスに不安を吐き出すシーンも印象的。「なぜ私のことを知ろうともしないのに好き勝手に悪口を言って、簡単に決めつけるの。怖いよ」と話すジェヒの泣き顔は、唯一の理解者であり、何も言わずに自分に優しく寄り添ってくれるフンスの前でしか見せない姿だろう。
ユーモアあふれる軽やかでポップなテイストと、ヒリヒリするような痛みやせつなさが共存する世界観。連日クラブで夜遊びをしたり、酔った勢いでお互いの手首に自分たちの名前のイニシャルのタトゥーを入れてしまったりと、表面的には軽いノリの遊び仲間のように見えても、「いつまで男に振り回されてんだ?お前らしくない」「自分だけが不幸だと思ってる?」など、時にズバリと核心を突くことを言い合える2人は、本当に誰よりも理解し合っている、かけがえのないソウルメイトだ。
こと恋愛になると、夢中になってしまうジェヒが自分を心配してくれるフンスに「平気だよ、あんたがいる」とキッパリ言い切るシーンがある。その言葉どおり、ままならない恋愛に、どれだけ深く傷ついても、最後は笑って前を向くことができたのは、お互いの存在があったから。クライマックスのダンスシーンのジェヒとフンスの弾けるような笑顔を見れば、この出会いは偶然ではなく、2人が成長するための必然だったのだと思えてうれしくなる。
共通点のない2人の生涯最後の冒険旅行『最高の人生の見つけ方』
ロブ・ライナー監督の『最高の人生の見つけ方(2007)』(07)はジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマン、同い歳の名優2人が共演するユーモラスで感動的なヒューマンドラマ。ロサンゼルスに暮らす実業家のエドワード(ニコルソン)と、自動車整備工のカーター(フリーマン)は、共に余命6か月と宣告された末期ガン患者。病室でたまたま一緒になった2人は、“死ぬ前にやりたいこと”のリストを作り、それを実現するための冒険の旅に出発する。
社会的立場は大きく違っても、入院中、同じ病室でつらい手術や抗がん剤治療を乗り越えた2人は、もはや戦友。南仏、タンザニア、エジプト、インド、中国、香港…彼らは旅先の国々で、すばらしい景色を眺めながら、自分の家族や結婚、宗教観などについて語り、心を開き合っていく。頑なな態度で一人娘と長年疎遠だったエドワードが、「親愛なる友よ。目を閉じて、水の流れに身を任せるんだ」というカーターからの手紙に背中を押され、勇気を出すシーンは温かく、彼への強い信頼が感じられる。冒頭のナレーション「人生の価値は自分を認めてくれる人がいるかで決まると思う」が、ラストへとつながる構成も秀逸。