宗教とタブーに支配された歴史の闇に迫る『デビルズ・バス』5月23日に日本公開、歪みが垣間見える本予告も

宗教とタブーに支配された歴史の闇に迫る『デビルズ・バス』5月23日に日本公開、歪みが垣間見える本予告も

実際の裁判記録をもとに宗教とタブーに支配された歴史の暗部を描く『デビルズ・バス』が5月23日(金)に公開決定。キービジュアル、予告映像が解禁となった。

【写真を見る】女性が赤ん坊を滝の上から投げ落とす悪夢のような光景…
【写真を見る】女性が赤ん坊を滝の上から投げ落とす悪夢のような光景…[c] 2024 Ulrich Seidl Filmproduktion, Heimatfilm, Coop99 Filmproduktion

監督はシッチェス・カタロニア国際映画祭ほか世界各地の映画祭を席巻し、第88回アカデミー賞外国語映画賞のオーストリア代表作品に選出された『グッドナイト・マミー』(14)のヴェロニカ・フランツ&ゼヴリン・フィアラ。世界との不和を理由に、この世から消え去ってしまいたいと願う女性が、宗教上自死することも許されず、やがて驚くべき行動に出てしまうという、陰惨で衝撃的な物語が描かれる。実際の裁判記録をもとに、宗教とタブーに支配された歴史の暗部がいまなお響く痛みとして現代に蘇った。容赦ないストーリーテリングと、美しくも残酷な映像表現が評価され、第74回ベルリン国際映画祭では銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞。さらに、第57回シッチェス・カタロニア国際映画祭でも最優秀作品賞を受賞するという快挙を達成している。

『デビルズ・バス』キービジュアル
『デビルズ・バス』キービジュアル[c] 2024 Ulrich Seidl Filmproduktion, Heimatfilm, Coop99 Filmproduktion

今回到着したキービジュアルに描かれているのは、動物の死体が異様に祭られた小屋の前に、静かに横たわる主人公アグネスの姿だ。穏やかに眠っているかのようにも見える彼女とは対照的に、小屋を取り巻く空気は不気味に歪み、アグネスが生きる村(=世界)のいびつさ、そして彼女自身との、決して埋まらない深い断絶が浮かび上がる。さらに、「私が、壊れていく。」というコピーからも、彼女が辿る悲しく、容赦のない運命を予感させ、結末への不安を否応なく掻き立てるデザインとなっている。

本予告映像は、女性が赤ん坊を滝の上から投げ落とす、悪夢のような衝撃映像で幕を開ける。続いて映し出されるのは、閉鎖的な小さな村に嫁ぎ、精神的に追い詰められていくアグネスの姿。村に馴染もうと努める彼女に対し、周囲は子どもを授かることを強く望み、その重圧が心を蝕んでいく。やがてアグネスは、夜ごと暴力を受ける村人や、首を失った死体を目撃し、村に根づく不穏な習慣を肌で感じ取るようになる。次第に現実と幻想の境界が曖昧になり、錯乱状態に陥ったアグネス。しかし、信心深い村人たちは、彼女を“悪魔に憑かれた存在”として忌み嫌い、救いの手を差し伸べようとはしない。自らの死を覚悟し、髪を毟り取るアグネス。その後も映像は、現実と悪夢の狭間を漂っていく。

村に根づく不穏な習慣とは?
村に根づく不穏な習慣とは?[c] 2024 Ulrich Seidl Filmproduktion, Heimatfilm, Coop99 Filmproduktion

血に染まる川に袋をかぶり斬首を待つ人影、狂乱する村人たち、刺されそうになる子ども。そして、顔が溶け落ちる赤ん坊。これらはすべて、追い詰められたアグネスの妄想なのか。狂っているのは村か、それともアグネス自身か。歪んだ史実に封じられた、禁断の悲劇を暴き出す『デビルズ・バス』。果たして、それは遠い過去の出来事と言い切れるのだろうか。ぜひ劇場で、あなた自身の目で確かめてほしい。

文/平尾嘉浩

「MOVIE WALKER PRESS」のホラー特化ブランド「PRESS HORROR」もチェック!
作品情報へ