『パラサイト 半地下の家族』での偉業から5年。4位でデビューした『ミッキー17』の成績がポン・ジュノ作品の指標に?
3月28日から3月30日までの全国映画動員ランキングが発表。公開4週目を迎えた『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』(公開中)と『ウィキッド ふたりの魔女』(公開中)、今年の春休みを代表する“2強”が今週も強さを発揮。4週連続でワンツーフィニッシュを飾った。
ロバート・パティンソンが何度も生き返る!?『ミッキー17』は4位デビュー
“2強”の成績を紹介する前に、今回は初登場の新作タイトルから『ミッキー17』(公開中)をピックアップしよう。『パラサイト 半地下の家族』(19)で第92回アカデミー賞作品賞など、様々な歴史的偉業を成し遂げたポン・ジュノ監督の最新作となった同作は、初日から3日間で動員7万6000人、興収1億2100万円を記録し4位にランクインした。
ロバート・パティンソンが演じる主人公のミッキーが、身勝手な権力者から命じられる過酷な任務で命を落としては不思議な装置で生き返り、また搾取され続ける“使い捨てワーカー”となる。ある時、生死の境をさまよいながら帰還した17人目のミッキーの前に、手違いで生みだされた18人目のミッキーが現れてしまう。2人同時に存在することがバレると、どちらも消されてしまう。そんな窮地に陥った彼らは、権力者への逆襲を試みていく。
世界中が待ち望んできたポン・ジュノ監督の新作ではあるが、これまで彼が手掛けてきた作品は(12年前にハリウッド資本を入れて手掛けた『スノーピアサー』も含め)、日本国内ではミニシアターなど小規模での上映が中心だったため、今回のようなハリウッドメジャー作品と興行成績の面で比較するのは少々難しいところ。
前作『パラサイト』も韓国映画としては珍しい公開規模で、動員ランキングでは初登場5位スタート。しかしそこからしばらくトップ5圏内を守り抜き、アカデミー賞の授賞式直後に首位にジャンプアップ。3週連続でトップを守り続け、日本国内の韓国映画歴代1位となる興収47億4000万円を記録。ちなみにこれは、2000年以降のアカデミー賞作品賞受賞作のなかでも第2位。前例にないほどアカデミー賞受賞の恩恵を受けた作品と言えるだろう。
その点を踏まえると、「ミニシアター界隈で圧倒的な支持を集めた監督が、いきなり大作メジャー映画に挑むとどうなるのか?」という、過去にも多数の例があるパターンとも比較しがたいものがある。しかも今回は韓国映画界からハリウッドメジャーへの進出という例外もあり、また“格差社会”という題材が『パラサイト』と通じているとはいえ、ジャンル的にはまるで異なっている。
よって『ミッキー17』の今回の初動、ならびに今後同作が重ねていく成績は、ポン・ジュノという作家の日本国内における純然としたバリューを示す一つの指標となるのではないだろうか。昨今の洋画不況のなかでどこまで戦えるのか、大いに注目しておきたい。