『ミッキー17』でポン・ジュノ監督が描いた、人間とクリーチャーの対比「美しさや威厳を宮崎駿監督作品から学んだ」

インタビュー

『ミッキー17』でポン・ジュノ監督が描いた、人間とクリーチャーの対比「美しさや威厳を宮崎駿監督作品から学んだ」

「映画を1本つくる度に、一度死んでまた生まれ変わるような感覚を抱く」

撮影監督は“光と影の魔術師”であると説明
撮影監督は“光と影の魔術師”であると説明[c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

――撮影監督のダリウス・コンジと組むのは、『オクジャ/okja』以来で2度目ですね。世界的に活躍しているカメラマンですが、彼の撮影はあなたの作品にどんな効果をあたえていますか?

「どんな撮影監督でもそうですが、“光と影の魔術師”というべきですね。ダリウスの場合は、とりわけ影に対して敏感なアンテナを持っています。何年か前に彼の家に遊びに行った時、家の中が暗くて驚きました。奥様が『暗すぎて料理もできない』と怒っているのに、ダリウスは『これでもまだ明るいほうだよ』と(笑)。もとい、本作で一つ例を挙げると、オープニングのシーンです。ミッキーが雪のクレバスの底に横たわっていて、ひと筋の光が差し込んでいるのですが、それはミッキーには当たっていない。普通であれば、主人公には正面から光を当てますが、ミッキーにはひと筋の光も差し込まない。これは彼の立ち位置をよく表していると思います。日陰の存在ということですね。ダリウスがつくる、このような構図が大好きなのです」

――ミッキーは何度も死んでは複製されますが、死という概念は監督の仕事にどんな影響をもたらしていますか?

「映画を1本つくる度に、私は一度死んで、また生まれ変わるような、そんな感覚を抱いています。とにかく精神と肉体のすべてを注ぎ込んでいるので、終わった時にはすべて出し尽くしています。そういう意味では、『ミッキー17』は私の8本目の映画ですから、いまの私は“ポン8”ですね(笑)」

ポン・ジュノ監督が思う、現在の社会状況とは?
ポン・ジュノ監督が思う、現在の社会状況とは?[c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

――監督は貧富の格差を映画の背景として描き続けていますが、前作の『パラサイト 半地下の家族』の時と比べて、そんな社会の状況がどう変わってきていると感じていますか?

「格差社会について研究している学者ではないので、深く知りえているわけではありませんが、この社会で生きている一人として感じていることはあります。ニュースやそこで提示されるデータを見ていると、格差の問題はどんどん悪くなっていると肌感覚で思いますね。これはとても悲しいことです。例えば20歳になったばかりの若い方が、これから社会に出ていこうとする時、どれほどの息苦しさを感じ、また途方に暮れているのか、それについて考えることがあります。この映画のミッキーは、まさにそんな存在と言えるでしょう。善良で不憫な青年です。頼れる人もなく、損な役ばかりがまわってきて、結果的に何度も死ぬという究極の残酷な仕事に就く。しかし、そんな彼でも他者に破壊されずに生き延びようとすることに、私は大きな意味を感じています」

取材・文/相馬学


※宮崎駿の「崎」は「たつさき」が正式表記

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※応募締切:4月18日(金) 23:59 まで
“映画ファンに、もっと映画館で映画を見てほしい”という想いから立ち上がった 「I’m a moviegoer」プロジェクト。これに共感したポン・ジュノ監督が、Tシャツに直筆サイン&コメントを寄せてくれました。

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