根深く蔓延る社会問題を投影した痛快刑事ドラマ『ベテラン』はなぜここまでヒットしたのか?シリーズの見どころとともに振り返り!
新作では、おなじみの顔&新入りで連続殺人犯と対峙
大ヒット作『ベテラン』の続編は多くのファンに待ち望まれたものの、ジャンルの隆盛のおかげでほかと差別化するために企画は難航。約9年という時を経て、ついに誕生したのが『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』である。この間、前作の関係者にもいろいろあったが、結果的に多くのメンバーがカムバック。もちろん監督のリュ・スンワン、主演のファン・ジョンミンという鉄壁のコンビはそのままに、ボヤいてばかりだが頼れるチーム長役のオ・ダルス、変装&潜入捜査を得意とするミス・ボン役のチャン・ユンジュ、当たりはキツイが誰よりも夫ドチョルのことを理解する妻ジュヨン役のチン・ギョンなど、おなじみの顔ぶれの続投も嬉しい。
加えて、意外なキャラも再登場。前作では暴力団まがいの下請け運送業者だったチョン・ソグ(チョン・マンシク)が、嫌われ者の元服役囚として、さらに新聞記者パク・スンファン(シン・スンファン)が、視聴者数稼ぎに血道を上げる配信者「正義部長」として帰ってくる。これも新作観賞前の要チェックポイントだ。
さらに本作の新顔としては、ソヌ役のヘインのほか、「梨泰院クラス」や「ユミの細胞たち」などで知られ、日本でも高い人気を誇るアン・ボヒョンが出演。事件のカギを握る重要人物ミン・ガンフンを演じている。
今回の敵となるのは、正義の名のもとに殺人を繰り返す謎のシリアルキラー“ヘチ”。その犯行はSNS上で熱狂的な支持者を生みだし、法の制約を超えた”真の正義の執行者”として、ドチョルたち本職の刑事たちを追いつめる。特に、正義のための暴力を遂行してきたドチョルは、高校生に成長した息子ウジンのいじめ問題という複雑な事態にも直面。正義とはなにかを改めて問われることになる。このドチョルの葛藤も、続編ならではの新機軸だ。
そんなドチョルを試すかのように次々と事件を仕掛ける新人警官パク・ソヌの謎めいた存在感からも目が離せない。頭脳派かつ武闘派という異色のキャラクターを、チョン・ヘインが持ち前の純真さと透明感を逆手にとって巧演。その息詰まる心理戦を盛り上げるのが、スプリットフィルターを多用したブライアン・デ・パルマ調のトリッキーなカメラワークだ。さらに、Nソウルタワーでのチェイスシーンや、雨の屋上でのダンスのような格闘シーンなど、斬新なアクションも目白押し。これらの要素をパワフルに融合させてしまう豪腕ぶりが、さすがリュ・スンワン監督である。