ミニシアター支配人が語る、向かっていくべき未来「次はこの作品を観てみようという、一種の連鎖を起こす」

ミニシアター支配人が語る、向かっていくべき未来「次はこの作品を観てみようという、一種の連鎖を起こす」

第48回日本アカデミー賞では『侍タイムスリッパー』(公開中)が最優秀作品賞を受賞するなど、ミニシアター発の作品が映画界を盛り上げている一方で、様々な事情から、存続の危機に立たされている全国各地のミニシアターの現状は依然厳しいまま。そのような状況下で、「全国興行生活衛生同業組合連合会(全興連)」による全国のミニシアターを支えるプロジェクト「#ミニシアターへ行こう」が展開中だ。

【写真を見る】安田淳一監督が貯金取り崩して挑んだという自主製作の『侍タイムスリッパー』
【写真を見る】安田淳一監督が貯金取り崩して挑んだという自主製作の『侍タイムスリッパー』[c]2024未来映画社

MOVIE WALKER PRESSではこのプロジェクトにあわせて、渋谷のユーロスペースの北條誠人支配人(以下北條)、横浜シネマ・ジャック&ベティの梶原俊幸支配人(以下梶原)をゲストに迎えた、映画好き芸人・ジャガモンド斉藤(以下斉藤)によるYouTubeチャンネル「ジャガモンド斉藤のヨケイなお世話」の動画企画撮影現場に潜入!ミニシアターの持つ魅力や向かっていく未来への想いを語る熱いトークの様子をダイジェストでお届けする。

「心に残る強烈な感覚がミニシアターだからこそ発揮できるように感じている」(斉藤)

動画撮影現場に潜入!どんな話が展開するのか
動画撮影現場に潜入!どんな話が展開するのか

斉藤「今年の日本アカデミー賞最優秀作品賞を『侍タイムスリッパー』が獲得しましたが、ミニシアター系から強い作品が出てくるというのは、映画館としても盛り上がる要因になると思います。お2人にとって思い出深い作品はありますか?」

梶原「ジャック&ベティは2005年に一度閉館していて、その後2007年から我々が引き継ぎました。なので、それ以降の話になるのですが、僕が一番印象に残っているのは2010年に上映した『キャタピラー』です。終戦記念日に近い時期の公開だったことも、たくさんの方に来ていただけた要因の一つだと思うのですが、年齢層はやはり高めの方が多かったです。若い人もちょっと怖いもの見たさという感じで訪れている印象がありました。劇場には毎日長蛇の列ができていて。何回上映しても入るかなり珍しい現象だったので、一番記憶に残っています」

斉藤「北條さんはいかがですか?」

北條「塚本晋也監督の『野火』と、片渕須直監督の『この世界の片隅に』です。両方戦争を描いた映画ですが、監督の強い思いが込められている作品ということもあって、特に印象に残っています。とても多くのお客さんに観ていただいた作品です」

斉藤「お2人が挙げた作品はすべて戦争を描いた映画ですが、それはやはりミニシアターならではというのか、強い特色があったりするのでしょうか?」

北條「あると思います。シネコンでやるには個性が強い。もちろんヒットしてシネコンへ広がっていく作品もあるのですが、やっぱり最初はミニシアターで上映しようみたいなところが作り手のなかにもあるんじゃないかなと思っています」

ミニシアターならではの特色とは?
ミニシアターならではの特色とは?

斉藤「『この世界の片隅に』のポスターはどちらかというと柔らかい印象ですが、映画の後半になると原爆投下などもあって、印象がガラッと変わる。心に残る強烈な感覚がミニシアターだからこそ発揮できるように感じています」

北條「まさにそうですね。ほかのお客さんと一緒に観ている空間も大切だと思います。いろいろな人たちと同じ時間、空間を共有して、物語のゴールに向かっていくという体験が、より一層その作品についてのイメージを強く根付かせていくんじゃないかなと」


「『なんだろう?』と思ってもらうことが大切だと考えている」(北條)

巨大な看板が印象的なユーロスペースが入居するビルのKINOHAUS
巨大な看板が印象的なユーロスペースが入居するビルのKINOHAUS

斉藤「ユーロスペースさんといえば、デカい看板のインパクトがすごいですが、こだわりはあるのでしょうか?」

北條「あの看板は最初はなかったものです。ある作品で看板を出してみたいというお話があって試してみたら、結構評判もいい。いままでクールなコンクリートの打ちっぱなしのビルというイメージだったのですが、映画の看板を出すことで『映画館のビルだよね!』というイメージができたこともあって、続けることになりました。いまではすっかり定着しています」

斉藤「すごく特徴的ですし、サイズって大事なんだなって思います。あのデカさって最近はほぼ見かけない。作家性が強い作品は、ドカーンとポスターがある感じがインパクトにつながりますよね」

渋谷ユーロスペースの支配人、北條誠人
渋谷ユーロスペースの支配人、北條誠人

北條「ライブハウスやクラブ帰りの音楽好きな人たちが、看板を見つめながら歩いている光景をよく目にします。『なんだろう?』みたいな顔をして(笑)。そういった方たちがポスターを見て実際に足を運ぶというのは正直多くないと思います。でも『なんだろう?』と思ってもらうことが大切だと考えています」

斉藤「ある種の違和感のようなものが入ってくるって結構大事ってことですよね」

北條「結果的にミニシアターそのものが、街のノイズになっていくってことが大事かなと」

斉藤「いい意味でのノイズですよね。そういう意味ではジャック&ベティさんも、街中にドーンと構えている映画館だし、名前もキャッチーだからインパクトが強い。ノイズという意味で近いものはありますか?」

横浜ジャック&ベティの支配人、梶原俊幸
横浜ジャック&ベティの支配人、梶原俊幸

梶原「ノイズといっていいのかはわかりませんが、映画館の前を通る人が『こんなところに映画館があったんだ』と話していたり、入り口の写真だけを撮って帰る人も意外と多くいます。いまはシネコンが主流になっていて、ショッピングモールのなかに入っている映画館も多く、映画館が存在することすらその街の人が知らないことも。そういう意味では表立って『映画館です!』と出していくことってすごく重要に感じています」

「#ミニシアターへ行こう」特設ページ【PR】
作品情報へ