山田の登場シーンはスタッフによる総力戦!『山田くんとLv999の恋をする』作間龍斗と山下美月が明かす“ときめき”の舞台裏
「ラブコメ特有の非現実的なシチュエーションは、笑いをこらえることもありました」(作間)
――山田は茜の言動に反応することが多いので、作間さんの言う臨機応変というのは理にかなっていますね。一方、山下さんはアクションを起こす側でもあり、コメディとしてのお芝居が光っていました。
山下「演じている時は魔法にかかっているので、いろんな表情をしていますが、完成した映画を改めて観ると恥ずかしさもあります。例えば、文化祭で山田くんが女子高生に囲まれるシーンはエキストラの方が現役女子高生だったので、高校生のテンションとキラキラ感に負けないようにしないとって(笑)。ほかにも走ったり転んだり、ゾンビみたいな人に追いかけられたり、体力を使う撮影でもありました」
――茜は感情表現が豊かですが、山田は感情の出し方が難しい役でしたね。
作間「そうですね。ただ、感情を出さないのではなく出ないというのは、自分と共通していて。普段から『なに考えているのかわからない』って言われるので(笑)、そのままお芝居に活かせばいいかなと。自分の中で、山田としての感情は100パーセントにしながら表情を変えていくという感じですね」
――そういう山田が、ふとした時に見せる無自覚な優しさに茜は惹かれていくわけで、もちろん観客もときめきます。この映画には、人をときめかせる瞬間がいくつもありますよね。
作間「ありますね。ただ、さっき山下さんが話していた高校生に追いかけられるシーンのような非現実的なシチュエーションはラブコメ特有で、笑いをこらえることもありました。演じている側としては、ラブコメだからきゅんきゅんさせるためにこうしよう!みたいのは考えなかったかも」
山下「この作品における“ときめき”って、やっぱり山田の格好良さだと思うんですよね。タイトルにも『山田くん』ってあるくらいなので。行動を起こすのは茜のほうだけれど、意識としては、いかに山田が格好よく見えるかも考えていました。」
作間「そっか、山田くんって格好よくなきゃいけないのか」
――たしかに、山田の登場シーンはキラッキラでしたね。
作間「あのキラキラは人工的な力、スタッフの皆さんの力でエンタテインメント感を出してもらいました。ああいった撮影は初めての経験でしたね」
山下「逆光を入れたり、ブロワーで風を吹かせたり、スタッフさんの総力を集結して撮影したシーンですよね。撮影前に本読みをする機会があって、その時に監督から、もっと勢いを出してほしい、もっと感情を出してほしいといったアドバイスをいただけて茜としてどう演じるのか基盤はできていたので、現場では少しアドリブを入れるというか、楽しく演じることができました」
「すばらしい『バレたか』でした」(山下)
――山田と茜のやりとりに自然と見入ってしまう、それは作間さんと山下さんの息の合った芝居が生みだしていると思います。共演してみて、お互いに凄いなと思ったこと、刺激を受けたことはありますか。
山下「撮影期間中にポスター撮りをした時に感じたことですが、山田くんの格好良さって、目がすごく輝いているというよりも、スッとした格好良さ。そういう山田としての作間さんしか拝見していなかったので、ポスター撮影のソロカットを見た時、とてもアイドルでキラキラしていて驚いたんです。その時まで、普段の作間さんは山田に近いのだろうなと思っていたけれど、違う!役なんだ!演じているんだ!って。現場ではずっと山田でいてくれていたのだと、感激でした」
作間「あの撮影の時にそんなことを考えていたとは…ぜんぜん意識してませんでした。ほんとカメラマンさんや照明さん、皆さんの手を借りてキラキラにしてもらってるので。山下さんは、3日ぐらい遅れてのクランクインだったので、それまで僕は茜のいない状態で山田を演じなくてはならない日があって。山下さんが茜をどう作ってくるかで、山田のリアクションも変わるなって思っていたんですが、もう想像以上の茜でしたね。山下さんが演じる茜だったので、なんの不安もなく最後まで駆け抜けることができました」
――“世代を超えてみんなで一緒に山田にときめく”映画ということで、山下さんがときめいたシーン、もしくは好きなシーンを聞かせてください。
山下「後半のシーンになりますが、茜がすごく酔っぱらって、靴が脱げて、ベンチに座らせられて、山田がスッと手を差しだして手をつなぐシーンがあるのですが、作間さんの手がとても大きくて、私の手がすっごく小さくて。単に互いの手が大きい小さいというだけのことではあるけれど、そのシーンはラストシーン直前の大事な場面。それまで異性として見ていなかったのに、手によって偶然それが表現されたことが奇跡だなって思えたのでお気に入りのシーンです」
作間「手でかいんですよ、20センチあります(笑)」
――すてきなエピソードですね。また、原作ファンは「バレたか」のシーンがどんなふうに描かれるのかも気になっていると思います。
作間「ですよね、気になりますよね。そのシーンの段取り(リハーサル)の時に、プロデューサーさんがうるっときて泣き始めたんです。多分、原作がすごく好きで、映画化の企画を立てるなかいろんなことがあって、いよいよ『バレたか』のシーンだったからだと思うんですけど…。そんななか何回かテイクを重ねて、安川監督と一緒に、いまの『バレたか』はどうだった?こっちの『バレたか』のほうがよかった?って、微調整しながら撮っていきました」
山下「ただでさえ難しい山田役、そのなかでも『バレたか』は相当プレッシャーだろうなって思っていましたが、すばらしい『バレたか』でした」
作間「ありがとうございます(笑)」
取材・文/新谷里映