監督
松原文枝監督のドキュメンタリー映画第2作目。80年前の満洲で起きた「接待」という名の性暴力の実態、日本の敗戦とともに消えたまぼろしの国で生きて日本に帰るために、敵であるロシア軍に助けを求めた開拓団を描いたドキュメンタリー。
ストーリー
満洲事変以降、国策のもと満蒙開拓が実施され、開拓団が中国はるか満洲の地に渡っていった。だが、日本の敗戦が色濃くなると、突如としてソ連軍が満洲に侵攻。守ってくれるはずの関東軍の姿もなく、満蒙開拓団は過酷な状況に追い込まれ、集団自決を選択した開拓団もあれば、逃げ続けた末に息絶えた人も多かった。そんななか、岐阜県から渡った黒川開拓団の人々は生きて日本に帰るために、敵であるソ連軍に助けを求めた。しかしその見返りは、数えで18歳以上の女性たちによる「接待」だった。接待の意味すらわからないまま、女性たちは性の相手として差し出されたのだ。帰国後、女性たちを待っていたのは労いではなく、差別と偏見の目、口さがない誹謗中傷だった。村の人々は同情から口を塞ぎ、女性たちは込み上げる怒りと恐怖を抑え、身をひそめる。青春の時を過ごすはずだった行先は、多くの犠牲を出し、日本の敗戦とともに消えてしまった。身も心も傷を負った女性たちの声はかき消され、この事実は長年伏せられてきた。だが、黒川の女性たちは手を携え、戦争から70年近く経った2013年、公の場でこの事実を明かした。したこと、されたこと、みてきたこと。幾重にも重なる加害の事実と、犠牲の史実を封印させないために――。