 
                          嵐寛寿郎
遠山十四郎
菅英雄昇進第一回監督作品。
これは徳川初期の物語。遠山十四郎は徳川の封建制度を打倒すべく、同志と努力しましたがあえなくこれが失敗に帰すや、巷にあふれる人民の不平不満の声を唄に託して街々に流布致しました。時代に適合した遠山の唄はたちまち全国にはんらんします。驚いたのは政府当局で、ただちにだんあつの手段に出ましたが、いつの世も役人のスロモーは同じと見え仲々に飛ぶ唄には追いつけません。司法省の要職にある井村征蔵は部下の立川坤にこの飛ぶ唄を捕らえることを命じます。立川は思わぬ大命に俄然ハリキリます。そして唄うたいのおきん、次郎吉君等愛すべき人々が彼の手に捕らえられてゆきました。そして遂に唄の作者、遠山と出逢うことになりましたが、何と遠山も立川も、前には討幕運動参加の同志であったのです。ただ、幕府の瓦解後お互いの見解の相違から道を違えていたのですが、遠山の才を買っている立川は井村に彼を推選します。そしてともかく捕らえる者と、捕えらるべき者との会見が行われますが、所詮は水と油でとけ合うわけには参りません。まして芸者の小芳という女性を間にはさんでいる事を、愛する身の敏感さで、それとなく感じているお互いでは--。『遠山を捕縛せよ』との立川にはつらい命令が井村から出ます。仕方なく遠山を捕らえに出向きますが遠山はまんまと闇にまぐれて一目散。そして小芳のところへ逃げて来ましたが、立川に遠山をしばらせてしまえば、と虫の良い考えを起こした井村が、今や小芳を懸命に口説きにかかっているところでした。遠山に罵倒され井村は淑女の手前の面子もあり夢中になって斬りつけますが逆に斬られてしまいます。そして遠山はちょうどかけつけた立川に捕縛されてゆきますが、正当防衛を信ずる彼の心は明るいものです。そして彼の作った唄は相変わらず街から街へ民衆の間を飛んで行きます。
 
                          遠山十四郎
 
                          芸者小芳
 
                          乾小弥太
 
                          立川坤
 
                          
                        井村征蔵
 
                          
                        沼野
 
                          
                        沙多木
 
                          
                        海江田
 
                          
                        権次郎
 
                          
                        大林
 
                          
                        室崎
 
                          
                        瓢齋
 
                          
                        森田
 
                          
                        佐市
 
                          
                        綱平
 
                          
                        文吉
 
                          
                        鞠江
 
                          
                        銀子
 
                          
                        貴美子
 
                          
                        染丸
 
                          
                        次郎吉
 
                          
                        八兵衛
 
                          
                        おきん
 
                          
                        吉五郎
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