
ロジャー・ムーア
James Bond
東西両陣営のパワー・バランスを突き崩す秘密兵器“ATAC”の行方を追って英国のスーパー・エージェント、ジェームズ・ボンドが活躍するアクション映画で、これはシリーズ第12作目に当たる。製作総指揮はマイケル・G・ウィルソン、製作はアルバート・R・ブロッコリ、監督は編集・アクション監督出身のジョン・グレン。イアン・フレミングの原作を基にリチャード・メイバウムとマイケル・ウィルソンが脚色。撮影はアラン・ヒューム、音楽はビル・コンティ、編集はジョン・グローヴァー、製作デザインはピーター・ラモント、衣装はエリザベス・ウォラー、特殊効果はデレク・メディングスが各々担当。出演はロジャー・ムーア、キャロル・ブーケ、トポル、リン・ホリー・ジョンソン、ジュリアン・グローヴァー、カサンドラ・ハリス、ジル・ベネット、マイケル・ゴザード、ジョン・ワイマン、ステファン・カリファなど。
ギリシャ・コルフ島沖イオニア海で、英国電子情報収集船が事故で沈没し、船に積まれていたATAC(超低周発信機)を引き上げる作業を、イギリス海軍情報部は、海軍退役将校で海洋考古学者であるティモシー・ハブロック卿に依頼した。ATACは、原子力潜水艦からのミサイル攻撃を目的地に誘導するトップ・シークレットで、東側に渡れば、軍事バランスが逆転するのは明らかだ。しかし、ハブロックの一人娘で、潜水のベテラン、メリナ(キャロル・ブーケ)が、両親に協力しようと訪れた時、水上機でやってきた何者かによってハブロック夫妻が銃撃された。惨殺された両親の復讐を決意するメリナ。やがて、この事件解決を命じられたジェームズ・ボンド(ロジャー・ムーア)が、犯人とみられるパイロット、ゴンザレス(ステファン・カリファ)を調査するためマドリッドヘ飛んだ。しかし、ゴンザレスは、メリナの復讐の矢のもとに絶命し、ボンドは、殺し屋ロック(マイケル・ゴザード)にひきいられた一団に命を狙われる。ゴンザレスもこの一味の一人だったのだ。ロンドンに帰ったボンドは、ロックの身許を調べ、彼が北イタリアのスキー・リゾート、コルチナ・ダンペッツォにいることをつきとめる。現地に向かったボンドは、そこでギリシア人富豪クリスタトス(ジュリアン・グローヴァー)に近づく。彼は、美少女ビビ(リン・ホリー・ジョンソン)のパトロンで、次期冬期オリンピックのフィギュア種目で彼女に金メダルを取らせようと特訓させていた。コルチナヘは、メリナも来ていたが、彼女は、ロックの配下の殺し屋たちに命を狙われボンドに救われた。やがて、ボンドとメリナは、コルフ島に行き、そこでボンドは、クリスタトスのビジネス上のライバル、密輸業者のコロンボ(トポル)に会った。彼から、クリスタトスがATACをソ連に売ろうとしていることを聞いたボンドはメリナと共に海底を探作し、ATACを発見。しかし、浮上した二人をクリスタトス一味が襲いATACは奪われてしまった。二人はコロンボの応援を得て、クリスタトスのアジトのあるギリシャのメテオラ山ヘと向かった。敵の攻撃をくぐり、山頂に辿りついたボンドら一行はクリスタトスを倒すが、途中コロンボが傷つく。ATACを取り戻す寸前に、しかしやって来たソ連側との間で再び奪い合いがおこる。ボンドはやっと取り戻し、それを断崖から投げ落とした。それを見て、ソ連側はひきあげてゆくのだった。
James Bond
Melina Havelock
Columbo
Bibi
Kristatos
Lisl
Jacoba Brink
Locque
Kreigler
Gonzales
Q
監督
原作
製作
製作総指揮
撮影
音楽
美術
編集
衣装デザイン
特殊効果
脚色
脚色
字幕監修
この映画「007/ユア・アイズ・オンリー」は、最新ミサイル誘導装置を狙う、ギリシャの大富豪とジェームズ・ボンドが戦う、007シリーズ第12作目の作品だ。
それまで、シリーズの編集やアクション担当だったジョン・グレンが、監督に昇進し、メカニック志向から肉体派へと原点帰りに挑戦している。
「ルパン三世」を彷彿とさせる、マンガチックなカー・アクション、ボンド得意のスキーの妙技、決死のロック・クライミングと、リアルなアクションが楽しい作品だ。
脚本にメイバウムが復帰して、筋立ては悪くないのに、全体に間延びしている。ひとえに新人監督ジョン・グレンの力不足。
映画としては「女王陛下の007」をかなり意識しており、冒頭で亡き妻テレサの墓参り、それに続くあの猫好きの仇敵とのバトルとなるも、今回またも、アンパンマンにやっつけられるバイキンマンのような展開。テレ東版だったが、ヒロインの吹替えが、もろアンパンマン戸田恵子だった笑。
前半、ヒロインと車で逃げる場面は、ロータス・エスプリでなく、仏シトロエン2CV。ルパン三世みたい(向こうはフィアット500)笑。回転したり宙を飛んだりだが、本作はアクション場面も締まらない。それ位、現場で存在感がなかったのだろうか、この監督は。
「女王陛下」でヒロイン・テレサが、スケーター姿でボンドを助けに来る場面へのオマージュとして、フィギュアスケートから女優に転向したリン・ホリー・ジョンソン器用も、北米観客へのサービスで終わっている。
ほぼ全編ヨーロッパが舞台。スキーやボブスレーを使うのも「女王陛下」である。だが締まらない。
後半、海での宝探しも間延びしている。
雪山あり、海岸あり、海中あり、登山ありと、活躍の舞台が何でもありなのが、かえってこの新人監督には荷が重かったかもしれない。
本作では黒幕を内緒にする趣向で、どんでん返しのつもりなのだが、それでも面白くない。ヒロインも女戦士なのだが男顔で、凛々しい代わりに色気がちと弱い。
こうして、せっかくの設定が台無しと感じた007であった。シリーズ中でも出来の悪い1作。
P.S.「死ぬのは奴らだ」の原作のハイライトを、やっと本作の後半で使っているが、迫力なし。
劇伴は「ロッキー」のビル・コンティだが、007とはミスマッチ。彼の曲もまた出来が悪かった。
よほど、M役バーナード・リーの死去がこたえたのだろうか。作品全体が弱い。
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