ボスになりたくない男たちの後継者争い!映画『BOSS/ボス』ラ・ヒチャン監督が語るキャスティング秘話と笑いへのこだわり

ボスになりたくない男たちの後継者争い!映画『BOSS/ボス』ラ・ヒチャン監督が語るキャスティング秘話と笑いへのこだわり

リンクをコピー

ギャング組織の後継者争いという韓国ノワール映画では定番の設定を逆手に取り、「ボスになりたくない男たちの物語」というとびきりユニークなエンターテインメント映画となった映画『BOSS/ボス』(公開中)。韓国で244万人を動員し、2025年年間興収第5位を記録するヒットとなった本作の監督と脚本を手掛けたのは、今後の韓国映画界を牽引していくであろう逸材の一人、ラ・ヒチャン監督だ。今回、監督を直撃し、映画を彩る人気俳優のキャスティングの経緯から撮影秘話まで、たっぷりと話をうかがった。

ギャングのカリスマボスを支え、激しい抗争を生き抜いてきた3人の男たち。ある日、ボスが不慮の死を遂げたことで、彼らが新たな後継者候補となる。ところが本命候補のスンテ(チョ・ウジン)は料理人として全国制覇を夢見ていて、やる気ゼロ。対抗馬のガンピョ(チョン・ギョンホ)も、タンゴダンサーを目指していて、同じくやる気ゼロ。唯一、やる気満々のパノ(パク・ジファン)は、残念なほどに人望がゼロだった。そんななか、馬鹿正直すぎて身元がバレバレの潜入捜査官テギュ(イ・ギュヒョン)も巻き込み、予測不能の後継者譲り合い合戦が幕を開ける!

「私がみなさんに望んだのは、笑わせようとする演技をしないこと」

【写真を見る】韓国でメガヒットしたクライムコメディ『BOSS/ボス』
【写真を見る】韓国でメガヒットしたクライムコメディ『BOSS/ボス』[c] 2025 HIVE MEDIA CORP & MINDMARK, Inc ALL RIGHTS RESERVED.

本命候補のスンテ役に、『国家が破産する日』(18)、『SEOBOK/ソボク』(21)のチョ・ウジン、対抗馬のガンピョ役に、ドラマ「ごめん、愛してる」のチョン・ギョンホ、残念な大穴候補のパノ役に、「犯罪都市」シリーズのパク・ジファン。ほかにもダメすぎる潜入捜査官・テギュ役に、『無垢なる証人』(19)のイ・ギュヒョン、昔気質のボスに、『しあわせな選択』(25)のイ・ソンミンなど、隅々まで行き届いたキャスティングにうなる。ラ・ヒチャン監督も、この主要キャストについては「これまで長年テレビや映画で観てきた人気俳優の方々で、私も一観客として彼らの演技に魅せられてきたファンの一人です」と語り、「できれば自分の映画でいつか一緒にやりたいと願っていましたが、まさか本当にそれが実現できるとは!」と手放しで喜びを口にする。

ド派手な乱闘シーンも見どころの1つ
ド派手な乱闘シーンも見どころの1つ[c] 2025 HIVE MEDIA CORP & MINDMARK, Inc ALL RIGHTS RESERVED.

しかも、それぞれのキャラクターが適材適所で貪欲に笑いをとっていく本作。コメディ演出についてのこだわりを聞くと、監督からは意外な答えが返ってきた。「私が一つだけ皆さんに望んだのは『笑わせようとする演技をしないこと』でした。『私たちは決してコメディを撮るんじゃない、夢や目標を強烈に求めている人たちを撮るんだ』と言いました」。スンテやガンピョは自分の夢を叶えたい。パノも必死にボスの座を目指そうとし、潜入捜査官テギュも仕事に対して生真面目すぎるからこそ、空回りしてしまう。彼らが一生懸命に奮闘すればするほど滑稽に見え、絶妙な笑いが生じていく。さらに、それぞれの個性が上乗せされたキャラクターが、その笑いを倍増させていくのは監督のねらいどおりだった。「本作はどこか現実離れした設定なので、それをどう現実的な人物として描いていくかが重要なポイントでした。でも、芸達者な俳優の皆さんが、脚本に足りなかったリアリティを補ってくれたんです。現場で一緒に話し合い、よりおもしろいキャラクターに作り上げてくださいました」と、心から賛辞を贈る。

「チョ・ウジンは、現場でもリーダーとしての力を発揮してくれました」

料理の道での全国制覇を夢見る料理人の(チョ・ウジン)が本命候補
料理の道での全国制覇を夢見る料理人の(チョ・ウジン)が本命候補[c] 2025 HIVE MEDIA CORP & MINDMARK, Inc ALL RIGHTS RESERVED.

ボス候補本命のスンテは腕利きの料理人だが、監督によると「料理は観客の方々にとっても非常に身近なものなのでそうしました。ギャング組織の組員が夢を抱くという設定なので、アクションにも使えそうな包丁を持つ職業がいいなと思いました」とのこと。それぞれの役には、もれなく見せ場が用意されている。例えば、スンテの場合、冒頭から料理をするシーンが展開されるため、心だけでなく胃袋もつかまれる。

「スンテの店の定番メニューは、ジャージャー麺(チャジャンミョン)とチャンポンが1つの器に盛られた“チャンチャミョン”にしました。韓国人は両方とも好きで、中華料理店へ行くとどっちを食べようかなと迷う人も多いので、スンテが『料理人になりたい。ボスにはなりたくない』というジレンマを料理でも表現できたらいいなと考えました」と、チャンチャミョンという料理も、スンテのキャラクター造形においての暗喩となっていることが判明。

包丁を使ったスンテのアクションシーンも見逃せないが、スンテは「刃物は人にじゃなくて、料理に使うものだ」という名台詞も口にする。とはいえ、それを声高にメッセージとして使うことは避けたかったというラ・ヒチャン監督。「観客の方たちがそういうことを難しく受け止めるということに対して、僕は警戒します。あくまでも映画をおもしろく観てほしいから。ウジンさんは、非常に良い塩梅でそのことを伝えてくれました」。

対抗馬はタンゴダンサーを夢見るガンピョ(チョン・ギョンホ)
対抗馬はタンゴダンサーを夢見るガンピョ(チョン・ギョンホ)[c] 2025 HIVE MEDIA CORP & MINDMARK, Inc ALL RIGHTS RESERVED.

子どもを持つ親であり、ごく普通に料理人として生活をしたいという家庭人の要素も併せ持つスンテについて「現実的でリーダーの素質があり、ボスにふさわしい人ですが、家庭も持っているから、より一層、いろいろなことを深く考えて行動する人だと思います。チョ・ウジンさんもそういう方で、自分の撮影シーンがなくても俳優たちとコミュニケーションをとったり、ワンシーンずつ議論をしたりして、現場でもリーダーとしての力を発揮してくれました」と、チョ・ウジンの人となりを称える。

対抗馬のガンピョが、タンゴダンサー志望という設定も実にユニークだ。演じたチョン・ギョンホについては「ドラマや映画で観ていたイメージよりも遥かにおもしろい方で、普段からジョークで人を笑わせてくれます」と笑顔を見せる。実は脚本段階でのガンピョは、物静かなピアニストという設定だったが、チョン・ギョンホをキャスティングした際に、彼のエネルギッシュなキャラクターにあわせ、タンゴダンサーに変更したそうだ。「彼は本当に自由奔放なエネルギーを持っている方で、台詞や演出について事前に話すと、そこにいろいろと変な動きをつけ加えてくるんです(笑)。タンゴを使ったアクションもそう。もちろん、私の演出意図もちゃんと聞いてくれますが、毎回その予想外の動きを見るのが楽しみでした!」とうれしそうに語る。

大穴候補は単細胞で喧嘩っ早いパノ(パク・ジファン)
大穴候補は単細胞で喧嘩っ早いパノ(パク・ジファン)[c] 2025 HIVE MEDIA CORP & MINDMARK, Inc ALL RIGHTS RESERVED.

唯一、ボスをやる気満々なのに、単細胞で血の気が多いパノには、ついていく部下が皆無だ。演じたパク・ジファンについては「彼は本能的に動く俳優で、一緒に演技をする俳優と共に、そのシーンごとに想定外の動きをされます」と言う。劇中で、テーブルの上でノリノリにダンスをするくだりも、現場で生まれた名シーンだ。さらに、彼がいきなり海に飛び込むシーンもパク・ジファンのアドリブだと聞いてびっくり!ラ・ヒチャン監督も「僕は、なぜあそこで飛び込むの!?と驚きました(笑)」と笑いつつ「でも、もしわかっていても、彼が自分から『やる』と言い出したら止めはしなかったかと。実際、すごく良いシーンになりましたしね」と結果オーライだった様子。

そして、監督が「後半の笑いを引っ張ってくれた」というのが、イ・ギュヒョン演じる実直すぎる潜入捜査官のテギュだ。スンテが彼の素性をとっくに見抜いているからこそ、警察の動きを先読みできており、まさに組織にとっては好都合だった。テギュはラ・ヒチャン監督が脚本を書いている段階から、すごく愛着を持って描いたキャラクターだそうで、「物語を別の局面に持っていくという重要な役割も担っている人物です。下っ端の潜入捜査官で、どこまでもおバカのように映っていますが、彼はただ自分の任務を一生懸命にまっとうしようとするだけ。演じたイ・ギュヒョンさんも、私の意図を本当によく汲み取ってくれました。後半は特に彼の見せ場がたくさんあります」と語るが、映画を観れば大いに納得。


作品情報へ

関連作品

  • BOSS/ボス

    3.8
    2022
    ギャングのボスの後継者候補となった3人の男たちによる、ボスの座譲り合い合戦を描くコメディ