『mentor』を観た千原ジュニアとの対談が実現!吉田恵輔監督が明かす創作と笑いの接点「物語を書く時に大喜利をしている感覚がある」
『ヒメアノ~ル』(16)、『空白』(21)、『ミッシング』(24)といった監督作で人間が抱く形容しがたい感情を映像で抉り出し、観客の心をわしづかみにしてきた吉田恵輔。監督デビューから20年を迎えた今年、6月に公開された『四月の余白』に続く衝撃のヒューマンドラマ『mentor』が10月16日(金)に公開を迎える。
主演の磯村勇斗とAぇ! groupの末澤誠也が演じるのは、15年前の花火遊びでアパートを全焼させた過去を持つ龍之介と拓海。綾野剛扮する火事で妻子を失った男・埜本が彼らと再会することで再び3人の運命が狂っていく。被害者の埜本はなぜ加害者であるはずの青年の“メンター”となり、優しく接し続けるのか!?龍之介と拓海の友情と贖罪の行方は!?吉田監督流のブラックユーモアが炸裂し、観客の感情をかき乱していく。
そんな吉田監督作品の長年のファンであり、本作をいち早く鑑賞した千原ジュニアと監督とのスペシャル対談が実現!初対面ながら、『mentor』の感想や役者たちの凄み、お互いのメンターについて、さらには物語を作ることなど様々なテーマで盛り上がった対談の模様をお届けする。
「吉田監督の映画は、美しい人が美しくない」(千原ジュニア)
――本編をご覧になってどのような感情が残りましたか?
千原ジュニア(以下、ジュニア)「いや、ちょっと…めちゃくちゃおもしろいっすね」
吉田恵輔監督(以下、吉田監督)「ありがとうございます。いま、しばらく“タメ”があったから一瞬ドキッとしました(笑)」
ジュニア「すばらしかったです。脚本はもちろんですけど、俳優さんがすごいですよね。拓海役の末澤誠也さんは、最近バラエティ番組で初めて一緒になったんですけど、本人はすっごいかわいらしくて男前なのに、それとは一致しないぐらいに役が仕上がってる。監督は美しいものを汚(けが)したいところがあるんやろなと」
吉田監督「俺が描いているのはわりと下町とか郊外の話で、俺自身もそういう地域で育ったので、自分が実際に接してきた人たちの空気に合わせたくて。そうすると、俳優に演じてもらう場合、スター性みたいなものをどうやって削っていくかということになるんですよね。姿勢ひとつでも猫背にして、セリフを喋っていない時も口を開けていてもらうとか、細かいことを癖づけてもらったりします」
ジュニア「他の作品も観させていただいてますけど、吉田監督の映画は美しい人が美しくない。例えば『ミッシング』の石原さとみさんも、始まって5分、10分ぐらいは『可愛すぎるで!』と思うんですけど、そこからどんどん“汚れ”ていって」
吉田監督「あの時は石原さん本人が自分で自分を壊したいという意識を持っていて、メイクや髪型も含めて完全に“壊れた”状態で現場に来ましたから」
ジュニア「そうみたいですね。劇中で失禁するシーンなんかすべてがひっくり返されたみたいなとこありますもんね」
吉田監督「世間であそこまで美しい印象が固まっている人は、そのぐらい覚悟して臨まないとなかなかイメージを壊せない。中途半端に壊そうとするのが一番ディスられてしまうから、やるなら徹底的にやらなきゃなとは思いますね」
ジュニア「今回、龍之介はなぜアーチェリーの選手やったんですか?」
吉田監督「メンタルの揺らぎが見えやすい職業がいいなと思ったんです。例えば俺はボクシングをずっとやっているけど、ボクサーの調子の悪さって素人目にはわかりづらいんです。でもアーチェリーだと的に点数が書いてあって、スコアの数字が低ければ誰が見ても調子が悪いとわかる。自然の中を回るフィールドアーチェリーも、以前に遊びでやったことがあったから、いつか映画にしたいなと思っていて」
ジュニア「文字通り『張り詰める』意味もあるし、的に『刺さる』というのが不穏な空気を作り続ける。弓持って外出るって違和感でしかない。その不穏加減がむちゃくちゃいいですよね。磯村勇斗さんの体もすごいですもんね?」
吉田監督「約1年かけて選手並みの体を作って、半年間みっちり練習してくれて。そこに埜本役の綾野剛さんがさらにデカい状態で現れたという(笑)」
ジュニア「埜本がガス屋っていうところもまた不穏要素を煽りますよね。顔半分を火傷した男がガスボンベを荷台に積んで走っている。これは非常に計算されてるなと」

