「SHAMAN KING」武井宏之の描き下ろしイラストも公開!超能力アクション活劇『ハイファイブ!』が放つ凸凹ヒーローたちの熱きドラマ
娯楽に徹しつつ韓国のリアルをすくい取る現代作家カン・ヒョンチョル
5人の宿敵となるのは、新興宗教の年老いた教祖、ヨンチュン(シン・グ)。彼もまた他者のエネルギーを自在に吸収するというスーパーパワーの持ち主だが、その能力を世のため人のためには一切使ってこなかったサイテーな爺さんである。永遠の命を得るため、彼は「ハイファイブ」の面々からパワーを奪い取り、若返ろうと目論む。
言うまでもなく、新興宗教も韓国の重大な社会問題のひとつ。たとえば韓国発祥の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は国内での告発から逃れるように、日本での勢力を拡大しており、政界に多大な影響力を与えていることも知られている。『ハイファイブ!』でもやたらスケールのデカい宗教イベントが描かれるが、その下品さ・大仰さも含め、ほとんど現実そのもの。永遠の命を得ようとする教祖のキャラクターも、あながち「単なる映画の嘘」とは断言できない。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)で知られるヨン・サンホ監督は長編アニメ『我は神なり』(13)でニセ宗教が蔓延する現実を描き、『破墓/パミョ』(23)のチャン・ジェヒョン監督は超自然スリラー『サバハ』(19)で新興宗教団体の恐るべき陰謀を描いた。カン・ヒョンチョル監督も優れたエンタテインメント性を保ちながら、自国の歴史や社会問題を巧みに織り交ぜる達人である。リアルタイムで脅威が迫っている日本の映画界のほうがよっぽど呑気で動きが鈍いのは、まぁいつものことと言えようか。ちなみに『サバハ』劇中でキーパーソンの少女クムファと、その双子の姉妹“それ”の二役を演じたのが、『ハイファイブ!』のワンソこと、イ・ジェインである。
これぞ実写版「童夢」!手加減抜きのフルパワー超能力バトル
クライマックスは、まんまと若返ってイケメン化した教祖ヨンチュン(アイドルグループ「GOT7」のパク・ジニョン)と、さらわれた仲間たちを救いに来たワンソが対峙し、宗教施設の広大な地下空間で凄絶なバトルを繰り広げる。この最終対決シークエンスも実に熱い。物理法則を超越したスピードとパワーがぶつかり合うド迫力の高速戦闘シーンは、DCユニバース作品『マン・オブ・スティール』(13)や、『スーパーガール』(26)のクライマックスを彷彿させる。ちなみに監督は「ドラゴンボール」をイメージしたとのこと。日本のクリエイター陣は見事な実写化に悔しがるべし!
ところで、同じく日本の漫画で、いたいけな少女と狂気の老人(外見的には若者だけど)が繰り広げる超能力バトルと言えば、何か大事なものを忘れていないだろうか?そう、大友克洋の伝説的コミック「童夢」である!大友自身の実写化企画も含め、何度も立ち上がっては消えていった「童夢」の映像化を、カン・ヒョンチョル監督はしれっと自分なりに実現してしまったのだ!(個人の意見です)
渾身の一作『スウィング・キッズ』を経て、久々に軽い味わいの小品に戻ってきたかと思いきや、またもや大変な力作を見せてくれたカン・ヒョンチョル監督。その気合十分の成果は、ぜひとも映画館で堪能してほしい。
文/岡本敦史


