『ファーストボイス』綾瀬はるかが着想元のハラスメント裁判を担った弁護士を直撃!特別鼎談が解禁

『ファーストボイス』綾瀬はるかが着想元のハラスメント裁判を担った弁護士を直撃!特別鼎談が解禁

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公開中の映画『ファーストボイス』で主演を務めた綾瀬はるかが、福岡セクシュアル・ハラスメント裁判で原告代理人を務めた元弁護士の辻本育子と現役弁護士の原田直子との鼎談が実現した。

『ファーストボイス』は、100%負けると言われた日本初のハラスメント裁判に挑み、時代の「常識」に挑んだ女性たちの姿を描くリーガルドラマ。ディスコではミラーボールがきらめき、日本がバブル経済絶頂期の好景気に沸いた1989年。お金にならない案件ばかりを引き受けるお人好しの弁護士、朝日道子(綾瀬)のもとに、職場で理不尽な嫌がらせを受け、大好きな仕事をも奪われたとして、会社と上司を提訴をしたいという恵(ファーストサマーウイカ)が訪れる。しかし、それは誰も戦ったことのない前例なき「ハラスメント」を巡る裁判。新人弁護士の栞(松本穂香)は「勝ち目がない」と反対するが、朝日は「この裁判は必ず未来に繋がる」と立ち上がる。キャストには綾瀬、ウイカ、松本をはじめ峯村リエ、山田真歩、工藤阿須加、水川かたまり(空気階段)、鈴鹿央士、迫田孝也、酒向芳、木村多江、筒井道隆らが名を連ねている。

綾瀬が演じる主人公の朝日道子は、辻本と原田、二人の姿を一人のキャラクターに集約し、綾瀬への当て書きとして作られた役柄。今回の鼎談では、綾瀬自らがインタビュアーとなり、二人に当時の裁判の裏側や、現代にも通じる社会問題について話を聞いた。

鼎談の冒頭では朝日道子について、辻本が「こんなに綺麗な方に演じていただいて少し違和感がありましたが、本当にすてきで嬉しかったです」と笑顔を見せる。劇中でデスクに資料が積み上がっている様子や乱れた髪型については、原田が「あのあたりは私ですね」と、自身の姿が反映されていることに親近感を覗かせた。また、綾瀬が「当時、お子さんも育てながら(仕事を)やっていらっしゃったんですよね?」と尋ねると、辻本は育児をしながら裁判に取り組んでいた当時を振り返り、夕方の2時間だけ一度帰宅して料理をし、再び事務所に戻って仕事をしていたという日々を明かした。そのエピソードに綾瀬が「パワフルですね!」と驚くと、原田は「でも、当時の働いている女性はみんなそうでした。私たちだけが特別じゃないなと思っていました」と語った。

1980年代、女性の就職差別や「結婚までの腰かけ」といった価値観が根強く残っていた時代。なぜ前例のない裁判に挑んだのか。綾瀬からの問いに、辻本は「私は兄が3人いて4番目の女の子なんですね。でも父母から一度も『女の子だから』と言われたことがなかった。だから当然、兄たちと同じように大学を卒業したら就職して働くと思ってたんですけれど、大学4年の時に就職が全然できなかったんです。そもそも募集がないんです。それで公務員試験を受けるしかなく、面接の時に『公務員は男女平等な職場だと思ってるかもしれないけれど、やっぱり女性はお手伝いですけれどいいですか?』と面接官が言うんですよね。その時に違和感を覚えて、ちゃんと働ける職業ということで弁護士になろうと思いました」と自身の原点を振り返る。

大学4年で方針を転換し、司法試験の勉強を始めた辻本。就職差別を受けた経験から、弁護士になった際には性差別の事件をライフワークにしようと決意したという。さらに、弁護士として活動するなかで、性差別に関する相談がなかなか寄せられなかったことにも触れた。辻本は「だけど、10年くらい弁護士をしていてもそんな(性差別関連の)相談は来ないんですよ。問題がないから来ないんだったらいいけれど、決してそんなことではない。問題があっても来られないのは、どこに行ったらいいかわからないんじゃないかと思い、女性が問題に直面した時に『あそこの法律事務所に行ってみよう』と思える事務所を作ろうということで、『女性協同法律事務所』を原田さんと2人で作ったんです」と語る。そして原田も「当時、辻本が言っていたのは『女性は能力があって成果を上げるけれど、その成果を自分のこととして主張しないで、上司や他の人たちが自分の成果として主張することに対して異議を述べない。そういう働き方こそ女性に求められているもので、性差別だ』と説明していました」と振り返る。

そして辻本は、当時の女性たちが置かれていた状況と声を上げることの意味について「当時は多くの女性が我慢していたが、憲法上の権利侵害であれば、99人が我慢していても1人が『我慢できない』と言えば戦えるんです」と語った。その言葉に綾瀬も「びっくりするような時代ですね…」と息を呑む。すると二人からは冗談交じりの言葉が返され、重いテーマを扱いながらも、和やかなやり取りが続いた。

続いて綾瀬は「社会からの逆風や直接的なバッシングなど裁判当時、最も心が折れそうになった瞬間はどんな時か。それをどう乗り越え、二人で支え合ってこられたのでしょうか?」と質問。辻本は、自分たちへの批判以上に原告を守ることを重視していたと明かす。「私たちに対するバッシングというのはそんなに気にならないんです。一番大事なのは原告がそういったバッシングを受けて潰れてしまわないかということなので。それは予想もされたし実際あったわけですが、それに対応するということで、『応援団(支援する会)を作ってください』と最初に言ったんです。支援する会ができたので、原告を支えることについては支援する会にお願いしてしまったという反省もあるんですけれど…。わたし自身はそんなに心は折れなかった(笑)」とコメント。一方の原田も「弁護士会のなかでも『変わったやつがいる』みたいに見られていたので、あまりバッシングと感じはなかったんじゃないですかね」と当時を振り返る。二人の話を聞いた綾瀬は「結構、原告だけじゃなくて支援団体との関係性とか、すごく複雑なんだなと思って…」と感想を述べる。辻本は「支援する会には本当に感謝しかないですよ」と支援者への思いを言葉にした。

続いて、2026年10月1日から新たな改正が施行される男女雇用機会均等法についても話題が広がり、辻本は、同法の課題について「『男女雇用機会均等法』は要するに『機会を均等に与えましょう』であって、チャンスは与えるけれど、その結果が平等になるかどうかにまでは関与しませんよ、という法律なんですよ。だから機会が均等になっても、男女の格差というのは残っているんです。明らかにわかるのは賃金格差ですけれど、福岡セクシュアル・ハラスメント裁判があった当時は男性の正社員の給料が100だとしたら女性は60くらいだったんですね。それが去年の統計でも、女性は男性の4分の3しか給料をもらえていない。そういう格差が35年以上経っても残っているというのは、やっぱり『男女雇用機会均等法』の限界なんじゃないかと私は思うんです」と指摘。さらにハラスメントが生まれる構造についても話は及んだ。辻本は「ハラスメントというのは要するに『力の乱用』なんです。少しでも力の差があると相手を自分の気持ちよさのために攻撃することが、ストレスの多い社会になればなるほど蔓延すると思うんです。だからいまみたいな対症療法では無くならないんじゃないかなと思います」と語る。続けて原田も「相手が反撃できないと思うからやるんですよ、ハラスメントは。反撃したら自分の立場が危うくなるとか、そういう相手にはハラスメントはしないんです」と、ハラスメントが起こる背景について語った。

最後に綾瀬は「ハラスメント問題は、現代の課題としても存在していると思います。いままさに生きている上でのモヤモヤや理不尽と戦っている方々に向けて、最後にメッセージやエールをお願いしたいです」と問いかける。辻本は「本当に自分がやりがいを持って仕事をしたり生きようと思ったら、いろんな壁にぶつかるんです。それは理不尽な差別というものが本当にたくさんある。そういう時に決して『自分がわるいんじゃないか』とか思わずに、諦めずに抗ってほしいなと思います」と語りかけた。続く原田は「もっと『わがまま』になっていいんじゃないかなと。やりたくないことはしないとか、できないことはできないと言っていいと思うんです。私は周りからわがままだと言われていますけれど(笑)、できないことはできないと言うし、やりたくないことはやらないと言う。配偶者との関係でも、家庭責任をしっかり負ってお互いに話し合って分担していくとか、諦めないで、でも自分のやりたいことはやる、やらないことはやらないという『わがまま』を通して生きていくのが一番精神的にもストレスにならないし、いいんじゃないかなと思います」とメッセージを送り、綾瀬も「『自分がやらなきゃ』って思っちゃいますよね。メッセージありがとうございます!」と深く頷いた。

鼎談の終盤では、役や仕事を私生活に引きずらないための工夫についても話が広がり、共演者から「切り替えが早い」と言われるという綾瀬は「(役を演じる上で)別の人を生きるというのは楽しいことでもあると思うんですけれど、エネルギー量をすごく使うので、くったりしちゃうことも多くて。なるべく集中する時以外はダラッとしています(笑)」と明かした。すると二人からも「私たちも事件が終わったらメモして忘れる。そうしないと持ちこたえられない」と語られ、思わぬ共通点に意気投合。重いテーマを扱う一方で、互いの仕事への向き合い方を知ることで距離を縮めていく三人の姿も印象的な鼎談となった。

インタビューを終えた綾瀬は「お2人と直接お話しさせていただけて本当に光栄でした。時代を切り開いてくださった強さと優しさは、現代を生きる私たちへの大きなエールだと感じました。作品の持つ意味を改めて実感できたので、たくさんの方に観ていただけるよう伝えていきたいです」と鼎談を振り返った。

本作の着想元となった実際の裁判で原告代理人を務めた辻本と、現在も弁護士として活動する原田。二人の経験に綾瀬が耳を傾けることで、当時の裁判の背景だけでなく、35年以上の時を経た今もなお残る課題や、現代のハラスメント問題についても語られた。


三人の率直な対話を通して「声を上げる」ことの意味を改めて考えてほしい。

文/サンクレイオ翼

※辻本育子の「辻」の字はしんにょうの点が1つ

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