「極主夫道」おおのこうすけが主要キャラを描き下ろし!『BOSS/ボス』は強面×愛嬌のクセ強キャラ&実力派キャストが弾ける、斬新な韓国ノワールだ

コラム

「極主夫道」おおのこうすけが主要キャラを描き下ろし!『BOSS/ボス』は強面×愛嬌のクセ強キャラ&実力派キャストが弾ける、斬新な韓国ノワールだ

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現代韓国エンタメに欠かせないパク・ジファン&チョン・ギョンホ

誰からも期待されていない残念なパノ
誰からも期待されていない残念なパノ[c]2025 HIVE MEDIA CORP & MINDMARK, Inc ALL RIGHTS RESERVED.

これに対抗する2人の「ボス候補」も、存在感として負けていない。

スンテをライバル視するパノは、「男ならテッペンとってなんぼ」とイキる(が、中身は完全なチキンの)旧来型の狂犬ヤクザ。演じるパク・ジファンは、映画「犯罪都市」シリーズで、毎回マ・ドンソクに締め上げられ使い走りにされている元ヤクザ役(1作目ではヤクザ組長)で知られる。いまの韓国のエンタメ界でこの手の役をパク・ジファン以上におもしろく演じられる俳優はいないだろう。「俺がやるからよ」とドヤ顔でしゃしゃり出るたびに、その場にいる全員に否定されるというお約束の場面は、その表情その佇まいの情けなさに、何度見ても吹いてしまう。

見事なダンスステップを見せるガンピョ
見事なダンスステップを見せるガンピョ[c]2025 HIVE MEDIA CORP & MINDMARK, Inc ALL RIGHTS RESERVED.

スンテの対抗馬ガンピョは、「次期ボスになる」という約束で刑務所に入った先々代親分の息子だ。後継者を決める組織内投票のタイミングで出所してきた彼は、息子を親分にしたい一心の母親の強いバックアップで表舞台に躍り出るも、刑務所で運命的に出会った社交ダンスにドハマりし、これまた親分になることを拒絶する。演じるチョン・ギョンホは、大ヒットドラマ「賢い医師生活」の主演の一人で、主演作が絶えないコミカルな演技が上手いスター俳優。この役が彼への宛て書きでは?と思うのは、ドラマを含めた様々な場面でダンスをしている印象があるからだ。本作では乱闘シーンのアクションもすべて社交ダンス風で、最終盤のパノとの一騎打ちは、チョン・ギョンホは長い手脚を、パク・ジファンは濃ゆい変顔を、それぞれに駆使した爆笑の場面となっている。

潜入10年目!身元バレバレなテギュ
潜入10年目!身元バレバレなテギュ[c]2025 HIVE MEDIA CORP & MINDMARK, Inc ALL RIGHTS RESERVED.

3人に加えて、スンテの右腕だが実は潜入警官で終盤で波乱を巻き起こすテギュを演じたイ・ギュヒョンについても特筆しておきたい。テギュは組織の一員ではあるが、むしろスンテの中華料理店の従業員といっていい存在だ。忠実な部下という体で現れながら、中盤以降の崩れっぷり(褒めてます)が凄まじく、これがスンテの冷静さ、シゴデキぶりを際立たせてくれる。

演じるイ・ギュヒョンは、韓国ドラマファンにはドラマ「刑務所のルールブック」の薬物依存症の囚人ヘロリン役で知られるが、最近作「なりすましの鼠」で演じた刑事役のようなハードな役柄もハマる。その2作品でもそうだったが、常に「なにかしらの秘密を抱えている」という含みを匂わせるのが上手い。終盤には「あのドラマ」を彷彿とさせる爆笑演技で、パク・ジファンに負けず劣らずの笑いを振りまいてくれる。

これまでの定石を鮮やかに裏切る新しい韓国ノワール劇

さて、最後にこの映画が1999年から始まる理由にも言及しておきたい。当時の韓国は、2002年のワールドカップ日韓共催を目指して、国家的なクリーン作戦が実行されていた。ヤクザは町から排除され、ヤクザ組織は、一見合法的な「企業舎弟」へと変貌してゆく。そうした社会的背景の中で2001年、失われゆく旧来型のヤクザをロマンティックに描いて大ヒットしたのが、伝説的ヤクザ映画『友へ チング』だ。また、ハ・ジョンウを大スターに押し上げた2013年の大ヒット作『悪いやつら』も、この時代が舞台として描かれている。2つの映画もそうであったように、組織が変質する時には必ず対立と陰謀があるもので、もちろん本作の「ボス選び」にも裏があるのだ。

組織の中での成功や出世よりも自分の幸せを叶えたいスンテたち
組織の中での成功や出世よりも自分の幸せを叶えたいスンテたち[c]2025 HIVE MEDIA CORP & MINDMARK, Inc ALL RIGHTS RESERVED.

だが本作は、そうした時代のロマン――言うなれば「破滅する男の美学」のようなものに、けっして憧れない。組織のテッペンをとってこそ男。大勢の子分や弟分を従えて肩で風切って歩くのが男。メンツのためなら命もなげうつのが男。組織あってこその自分――劇中でスンテの小学校の娘が言うように、そういうヤクザの前時代的「男らしさ」は、もはや「怖い」でなく「ダサい」という時代なのだ。そう考えると、現代風にアップデートされたスンテが慕われ、カッコよく見える理由も納得がいく。映画は「いまの時代の理想の上司」を描いているとも、言えるのかもしれない。


文/渥美志保

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