一人二役に挑戦した『顔 -かお-』の演技が圧巻!“次世代の演技の神”パク・ジョンミンのキャリアをプレイバック
ヨン・サンホ監督との3度目のタッグとなった『顔 -かお-』
硬軟取り混ぜ、様々なジャンルの作品で魅力を発揮し、名だたる監督たちからの信頼も厚いジョンミン。今回の『顔 -かお-』のヨン・サンホ監督とも、『サイコキネシス -念力-』(18)、2021年にNetflixで配信されたドラマ「地獄が呼んでいる」に続く3度目のタッグだ。本作はサンホ監督が『新感染 ファイナル・エクスプレス』以前から構想していた企画であり原点とも言われる作品で、韓国社会の暗部を鋭くえぐり出している。
視覚障害を乗り越えて、韓国随一の腕を持つまでになった篆刻家のヨンギュと、その父を誇りに思ってきた息子ドンファン。穏やかに暮らしていた父子のもとに、40年前、ドンファンが赤ん坊の頃に行方不明になった母ヨンヒの遺体が発見されたとの知らせが入る。ドンファンは全く知らなかった母の人生を辿るなかで、誰も彼もが「ヨンヒは醜い顔だった」という証言を耳にすることに。母の顔は果たしてどんな顔だったのか。美醜について人々の価値観や意識、差別や偏見が暴かれ、観ているこちらの心理までが試されているような気すらしてくる。
主人公と若き日の父役の一人二役に挑戦
当初、ジョンミンは息子役だけをオファーされていたが、「それだけでは自分の演技を十分に見せられない」と監督に直談判して、若き日の父ヨンギュ役との一人二役に挑戦することに(現在の父ヨンギュを演じるのは、『新感染半島 ファイナル・ステージ』(20)などサンホ監督作に数多く出演しているクォン・ヘヒョ)。ヨンギュ役を演じるために白濁した特殊レンズやかつらをつけてビジュアルも変え、視覚に頼らず指先の感覚だけで文字を彫る動きもマスター。その真実味のある所作は篆刻の技術を判子店で学んだというだけあり、役作りにかけるストイックさはまさに「努力する天才」の面目躍如(!)というところだ。
篆刻職人として必死に夢を叶えようとした父ヨンギュと、母との初対面が白骨遺体で始まり、母の容姿について罵倒する言葉ばかり聞かされるドンファン。ジョンミンはそんな父と子の心情の違いや、心の揺れ動きを繊細に表現し、観客を物語へと没入させる。特に終盤の演技は圧巻。ラストシーンも言いようのない余韻がいつまでも残る。
百想芸術大賞の授賞式のスピーチにおいて、「無冠の帝王と言われていたが、受賞したことで欲が湧いた」と語ったジョンミン。次回作はドラマ「サンナムジャ(原題)」で、大企業のCEOまでに上り詰めたものの、一夜にして全てを失った男が20年前にタイムスリップし、新入社員から人生をリセットしていくというストーリーらしい。
久しぶりに痛快なコメディ演技を楽しませてもらえそうな予感。40代へと向かい、今後どんな進化を遂げていくのか。ますます目を離せそうにない。
文/前田かおり

