『ドラマなふたり』ではこれ以上ないほど情けないザマに!?世界を夢中にさせるロバート・パティンソンの“ボロボロ姿”
誰もがほだされてしまう…ボロボロ姿が世界で人気に
それまでの過程――いまさら式を延期にも中止にもできずに流されていく、チャーリーのどっちつかずの風情が情けなくて笑える。しかも結婚式の最中にいろんな愚行が露見するのだが、それも彼自身が火を注いだうえに引火してしまうのだから、もはや悲惨すぎて吹きだすしかない。はたして四面楚歌に追い込まれたチャーリーの困り切ったトホホな姿の、なんと味わい深いこと(笑)!
そう、ボロボロ姿で彼は真価を発揮する。例えば、社会の底辺で生きてきた兄弟が銀行強盗を企てる『グッド・タイム』(17)では、弟を救いだそうと汗だく&半泣きで奔走する兄を演じたパティンソンの必死の形相は、もはや息苦しいほど。当時、「トワイライト」から追いかけてきたファンは、「なにもそこまでやらんでも…」としばし呆然とさせられたハズだ。
だが、自ら“汚れ役”に飛び込んでいくパティンソンの傾向は、もはやライフワークのごとく続いていく。孤島の灯台守をする2人の男の攻防戦を描く『ライトハウス』(19)では、彼ら(ウィレム・デフォーと互角の勝負!)がどんどん狂っていく、目をひん剥いた狂気の表情にゾゾっと来る。続く大作『TENET テネット』(20)では久々に麗しいスーツ姿も堪能できるが、一方で状況が把握できずに困惑する表情や目が泳ぐ表情が“ミーム化”され、いろんなセリフを載せてSNSを行き交って愛された。
ほかにも先述した『グッド・タイム』のオフショットが伝説のミームとなったり(勝手にTシャツなどアパレルグッズ化されるほどの大バズリ!本人はのちのインタビューで理由がわからず困惑したと語っている)、史上最も暗いブルース・ウェインと言われた『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(22)のファーストルックや一場面を切り取った大喜利が行われるなど、パティンソンは数々のミームを生みだし続けている。
そんなふうに“ボロボロに追い詰められる男”を好んで演じながらも、ほとんどが作家性の強い意欲作・秀作ぞろいであるという審美眼の確かさを感じさせるからこそ、観る者は安心してツッコミを入れられる。作品やキャラによって味わいが異なる芸の細やかさ、軽重自在の崩れ方、それゆえの見応えや演技力の高さは、いまや誰も異論はないはずだ。
9月11日公開の『オデュッセイア』では、絵に描いたような悪役を演じる。その憎々しいキャラたるや、これまたミーム化しそうな強烈さだ。卑怯さや卑屈さが表情にも佇まいにも表れているが、同時にどこかで“俺だってそう(勇気ある王のような人物に)なりたかった!”という悲しき叫びが聞こえてくるよう。そんな歪んだ裏の感情を潜ませるのもパティンソンが得意とするところで、崩れゆく男の美学と弱さが表裏一体となって、イヤだけどクセになる魅力を放つ。またインタビューなどで見せる素の反応の正直さ、不器用さ、テンパってしまうかわいさも、彼が愛される大きな理由だろう。
はたして『ドラマなふたり』のチャーリーは、エマのなにを知っていたのか、なにを知ろうとしたのか、しなかったのか。真実の愛とは、結婚とは、幸せとは――。さらに本作が持つ深みとして、社会的・文化的な意識や人間同士の関係性、うっすら“差別”や“偏見”も入り込んでいることも挙げられる。それを土台に、地獄のような紆余曲折を経てたどり着くラストシーンでは、これ以上ないほど情けないチャーリーのボロボロな姿を目撃しながらも、それが愛しくてたまらなくさせる離れ業をやってのけたパティンソン、まさに天晴れである。
文/折田千鶴子
