日仏共同製作『私はあなたを知らない、』で新境地!中野量太監督が描く“家族”の物語はなぜ世界を魅了するのか?

日仏共同製作『私はあなたを知らない、』で新境地!中野量太監督が描く“家族”の物語はなぜ世界を魅了するのか?

「中野監督は、人の感情をダイレクトに揺さぶる脚本を書くことができる」(矢田部)

【写真を見る】坂口健太郎がむき出しのフランスパンを背負って保育園へ!?
【写真を見る】坂口健太郎がむき出しのフランスパンを背負って保育園へ!?[c]IDKYPs./Pyramide Productions

——日本とフランスでは見え方がかなり違うシーンもあったそうですね。

中野「そうですね。例えば運動会で夕平が朝子のために声を上げるシーンは、日本人なら夕平の行動を『恥ずかしいな』と受け止めることが多い場面ですが、フランス人の多くは、『よくやった!』『いいお父さんだ』と受け止めるそうなんです。まったく逆であることに驚きましたね。だから紗月がこういったことを理由に、夕平に別れを告げることがあまり理解できないという意見もありました。『別れを選ぶのは、紗月が夕平に娘を取られると思ったからでしょ』という捉え方をされたり。ただ僕自身はフランス側の価値観に寄せて作っているわけではないので、その場面を変えようとは思いませんでした」

ボーテ「多くのフランス人やほかの国の人がその場面を違った解釈で受け取ることは理解できます。ただ、我々ピラミデ・プロダクションズとしては、日本の文化や価値観を尊重することを大切にしていました。なにより、私たちは中野監督の選択を信頼しているので」

——同じシーンでも価値観や文化的背景によって捉え方が異なるというのは興味深いですね。中野監督は今回、国際共同製作ということもあり、制作の段階から海外の観客を意識していたのでしょうか。

中野「めちゃめちゃ意識しました。根本のところでは、最初から“外に開いて作る”という想いがありました。国が違っても人間の在り方や考え方には絶対に共通点があると思っていて、この作品もストーリー自体はユニバーサルなものだと思っています。ただ細かい文化の違いに合わせて寄せることはしないだけで」

「『浅田家!』は、フランスの人たちから『Beautiful』と言われました」(中野)

——『浅田家!』はフランスでも25万人を超える観客を動員する大ヒットを記録しました。中野監督の作品がフランスの観客にもこれほど支持されるのはなぜだと思いますか。

ボーテ「まず、テーマが普遍的であること。そして、ドラマでありながらコメディでもある。そのバランスや描き方がとても巧いことが大きいと思います。おっしゃる通り、『浅田家!』はフランスでも大成功しました。私が中野監督と初めて会ったのは、クロックワークスのオフィスへ向かうエレベーターの中だったのですが、その時に『私はフランスで一番の「浅田家!」ファンです』と伝えたんです(笑)。『湯を沸かすほどの熱い愛』も大好きです。あの映画には、心を強く動かされるなにかがある。フランス語でもうまく説明できないほど、特別なものです」

——中野監督はデビュー作から一貫して“家族”というテーマを描き続けていますが、家族観というのは国によっても大きく異なるのではないかと思います。その点はフランスでどのように受け止められているのでしょうか。

ボーテ「私は中野監督の家族の描き方を『日本独自の家族観』だとは思っていません。もちろん細かい部分では違いがあります。例えば本作でも日本とフランスでは別れの捉え方が少し違うかもしれない。それでも、物語の根本にあるものはユニバーサルであると考えます」


オーディションで朝子役を掴み取った早瀬憩
オーディションで朝子役を掴み取った早瀬憩[c]IDKYPs./Pyramide Productions

——中野監督ご自身は、フランスでの反響をどのように感じましたか。

中野「『浅田家!』はフランスの人たちからすごく反響がありましたね。おもしろかったのは、『Beautiful』という言葉を本当によく言われたこと。それは映像が美しいという意味ではなく、人の心についてなんです。映画の中で、主人公は知らない誰かのために泥だらけの写真を洗います。日本人からは、そういう場面に対して『美しい』という感想をあまりもらったことがなかった。けれどフランスでは口々に言われたんです。ユーモアも含め、いろんなものが刺さったのだとは思いますが、一番は“誰かのために”という行為の美しさなのかなと感じました」

矢田部「先ほどフレデリックさんが“ユニバーサル”とおっしゃったのは、状況が違っても、人間の感情そのものは世界共通だからだと思います。中野監督は、人の感情をダイレクトに揺さぶる脚本を書くことができる。本作だと『自分の母親を殺した男を赦せるのか、その人を父親だと思えるのか』という、信じられないようなところから出発して、最後には大きな感情へとたどり着く。そこは日本でもフランスでも、世界中で共有できるものだと思います」

母親が殺された事件の真相を知るため、朝子は当時の弁護士(滝藤賢一)に話を聞きに行く
母親が殺された事件の真相を知るため、朝子は当時の弁護士(滝藤賢一)に話を聞きに行く[c]IDKYPs./Pyramide Productions
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