全編IMAXで撮影したクリストファー・ノーラン監督作『オデュッセイア』は、やはりIMAXで観るべき映画だった!
モノトーンで描かれた冥界、主人公の孤独や虚無感を表現する映像
IMAXが威力を発揮したのは、アクションやスペクタクルだけではない。航路を見失ったオデュッセウスたちが答えを求めて冥界(ハデス)に立ち入るシーンでは、霧に覆われた白い地上と真っ黒な地面で画面を上下に分割し、その狭間を進む兵士たちもシルエットとモノトーンで描写。暗い足もとが地面に溶け込んで見える映像は、縦方向に広い画角も手伝って、地面から這い出た死者たちに冥界へと引きずり込まれる錯覚を覚えてしまう。
女神カリュプソ(シャーリーズ・セロン)の島に漂着したオデュッセウスが浜辺で海を眺めるシーンでは、空から砂浜までを切り取った画面の中にその姿をポツンと小さく置くことで、彼の孤独や虚無感を表現。ほかにも緻密に再現された壮麗な王宮や神殿などスケール感ある映像で、青銅時代をリアルに味わうことができる。
マット・デイモンら演技派の魅力、さらにルドウィグ・ゴランソンがオーケストラを封印して挑んだ劇伴も堪能
オデュッセウス役のマット・デイモン、ペネロペ役のアン・ハサウェイ、カリュプソ役のシャーリーズ・セロン、そして双子のスパルタ王妃とミケーネ王妃を一人二役で演じたルピタ・ニョンゴと4人のオスカーウィナーが名を連ねている本作。技巧派たちの演技がじっくり味わえるのもラージフォーマットの魅力である。帰らぬ夫や命を狙われる息子の身を案じつつ、凛とした態度で宮廷を仕切るペネロペ、孤独をにじませオデュッセウスを引き留めようとするカリュプソ、顔に大きな傷を負わされて感情を押し殺すヘレネなど名演の連続だが、圧巻はなんといってもオデュッセウスだ。デイモンは強さと弱さ、知性派でありながら時に感情に流される王を熱演。10年にわたる苦難の旅を通じて疲弊していく心身や、激しいアクションシーンを含め大役を務めあげた。オスカーを手にした『オッペンハイマー』同様、クローズアップを交えて感情のデティールをみごとに可視化したホイテマの手腕もお見事。感情のふり幅の大きい王子テレマコス役のトム・ホランド、王座を手に入れるためテレマコス暗殺を企てる求婚者アンティノオス役のロバート・パティンソン、魔女キルケ役のサマンサ・モートン、オデュッセウスに寄り添う女神アテナ役のゼンデイヤなど、並み居る演技派の魅力をあますことなく味わえるのもIMAXのアドバンテージなのだ。
IMAXでもう一つ特筆すべきは、非圧縮によるダイナミックレンジの広いサウンド。体感的な超低音、そしてどの座席でも音の移動が把握できる微調整もIMAXシアターの特徴だ。ノーランはサウンド面でも青銅時代を再現するため、オーケストラを封印。音楽は『TENET テネット』(20)、『オッペンハイマー』でも組んだルドウィグ・ゴランソンが担当し、硬質で生々しい打撃音を中心に劇伴が組み立てられた。音のテクスチャーの細部まで味わえるIMAXシアターなら、映像と音楽でオデュッセウスの時代を味わうことができるのだ。
ノーランのこだわりが詰め込まれた『オデュッセイア』は、IMAXの持ち味を極限まで活かした壮大なる叙事詩。理想的な環境でその真価を味わってはみてはどうだろう。なお、ノーランの意図が100%味わえる正方形に近いIMAXフィルム規格1.43:1で上映できるIMAXレーザー/GTテクノロジー対応シアターは、グランドシネマサンシャイン池袋と109シネマズ大阪エキスポシティにあるので、可能ならこちらでの鑑賞がおすすめだ。
文/神武団四郎

