時間を操り、映画技術を極める!『インセプション』『オッペンハイマー』から『オデュッセイア』へと至るクリストファー・ノーランの軌跡を振り返る

時間を操り、映画技術を極める!『インセプション』『オッペンハイマー』から『オデュッセイア』へと至るクリストファー・ノーランの軌跡を振り返る

複雑な時間構造とカメラの前に存在するものを重視した『インセプション』『インターステラー』

夢の階層ごとに異なる時間速度を設け、それぞれを並行して描くことに成功(『インセプション』)
夢の階層ごとに異なる時間速度を設け、それぞれを並行して描くことに成功(『インセプション』)[c]Everett CollectionAFLO

他人の夢の中に入り込むエージェントたちの奔走を描いた『インセプション』(10)では、夢の階層ごとに異なる時間速度を設け、それぞれの階層を並行して描く複雑な構成を娯楽大作へと昇華。第83回アカデミー賞で撮影賞、録音賞、音響編集賞、視覚効果賞の4部門を獲得するなど、作家性と巨大なスペクタクルを両立させた結節点となった。

相対性理論による時間の伸縮を宇宙に旅立った父と地球に残された娘の人生に結びつけた『インターステラー』
相対性理論による時間の伸縮を宇宙に旅立った父と地球に残された娘の人生に結びつけた『インターステラー』[c]Everett CollectionAFLO

さらに、滅亡の危機を迎えた人類が新たな星を目指す姿を描いたSF大作『インターステラー』(14)は、相対性理論による時間の伸縮を、宇宙に旅立った父と地球に残された娘の人生へ結びつけている。理論物理学者キップ・ソーンの監修を受けてブラックホールやワームホールを科学的に可視化し、実物大セットやミニチュア、実景撮影を組み合わせることで、未知の宇宙に物理的な手触りを与えた。複雑な時間構造と、カメラの前に存在するものを重視する写実主義が、この時期にはより明確なスタイルとして確立されていた。

より臨場感のある「体験としての映画」を実現させた『ダンケルク』

第二次世界大戦における撤退作戦を陸・海・空の3つの時間幅で進行させた『ダンケルク』
第二次世界大戦における撤退作戦を陸・海・空の3つの時間幅で進行させた『ダンケルク』[c]Everett CollectionAFLO

そうした要素を戦争映画に持ち込んだのが、2017年の『ダンケルク』だ。第二次世界大戦の撤退作戦を「陸=1週間」「海=1日」「空=1時間」という異なる時間幅で進行させ、終盤で一点へ収束させてみせた。撮影ではIMAXフィルムを大規模投入し、戦闘機スピットファイアの狭いコクピットにも巨大なIMAXフィルムカメラを搭載。専用の周辺機構を開発し、俳優とカメラを実際に空へ上げることで、空中戦に独特の臨場感を与えている。CGへの依存を抑え、実景、実物の航空機や艦船を活用した映像は、彼が追求してきた「体験としての映画」をより進めたものとなる。この作品は第90回アカデミー賞で8部門にノミネートされ、編集賞、録音賞、音響編集賞を獲得した。

時間操作が撮影技術そのものに直結した『TENET テネット』

順行する人物と逆行する人物を同じ空間に存在させた『TENET テネット』
順行する人物と逆行する人物を同じ空間に存在させた『TENET テネット』[c]Everett CollectionAFLO

“時間逆行”をテーマに描いたタイムサスペンス『TENET テネット』(20)では、時間操作が撮影技術そのものに直結する。順行する人物と逆行する人物を同じ空間へ存在させるため、IMAXカメラを含むフィルム機材に逆回転撮影を採り入れるなど、車両や人物が互いに異なる時間方向へ動く光景を実写主体で構築した。IMAX上映を前提に撮影からポストプロダクションまで映像を最適化するなど、巨大フォーマットを映画全体の設計へと深く組み込んでいった。


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