時間を操り、映画技術を極める!『インセプション』『オッペンハイマー』から『オデュッセイア』へと至るクリストファー・ノーランの軌跡を振り返る
『オッペンハイマー』(23)で第96回アカデミー賞作品賞、監督賞を含む7部門を獲得したクリストファー・ノーラン。そんな彼が最新作としてメガホンをとったのが、すべての物語の原点と言われる、吟遊詩人ホメロスの叙事詩を映画化した『オデュッセイア』(9月11日公開)だ。
全米で7月17日に封切られると、8月18日時点までで興収約5億468万ドル(Box Office Essentials調べ)を記録し、ノーラン史上1位の2008年の『ダークナイト』(約5億3334万ドル、再上映を含むと約5億3498万ドル)に迫る勢い。また、すでに全世界興収は2012年の『ダークナイト ライジング』(約10億8542万ドル)超えの約12億9447万ドルに達し、IMAXだけでは全世界で2億8900万ドルという歴代最高興収を打ち立てるなど、まさにノーラン監督の最高傑作と呼ぶにふさわしい作品だ。
そんなノーラン自身のフィルモグラフィにおいて13作目となる本作では、6か国にまたがる大規模なロケーションを敢行し、また長編映画として史上初となる、全編IMAXフィルムカメラでの撮影を実現。『オッペンハイマー』で描かれた核兵器開発史から古代ギリシャの英雄譚へと題材は大きく飛躍するが、本作には20数年にわたって培われた作家性と映画技術を更新し、それを極めてきたノーランの歩みが凝縮されている。
男の復讐劇を時間逆行させて描いた『メメント』で高評価を獲得
ノーランの名を広く知らしめたのは、時制を自在に操る物語だった。低予算で製作した長編デビュー作『フォロウィング』(98)で作家志望の青年が窮地に陥る物語を複数の時間軸で交錯させたのち、『メメント』(00)では時間を逆行したり断片化する大胆な構成を採用。短期間しか記憶を保てない主人公の動揺を観客に共有させ、編集そのものをサスペンスへ貢献させた。その結果、第74回アカデミー賞では脚本賞と編集賞にノミネートされ、その斬新な語り口がハリウッドでも高く評価される。
IMAXフィルム撮影を本格導入した『ダークナイト』
やがて『インソムニア』(02)、『バットマン ビギンズ』(05)でハリウッドメジャー大作へ進出し、続く『ダークナイト』(08)がノーラン監督にとっての一大転機となる。架空都市ゴッサム・シティをシカゴなどの現実世界に置き換え、バットマンの世界をリアルなノワール(犯罪)ものとして再構築。『ダークナイト』では同時に、長編映画へのIMAXフィルム撮影を本格導入し、ジョーカーによる銀行の襲撃シーンなど6つのシークエンスを巨大フォーマットで捉えてみせた。
都市の奥行きや光の階調まで克明に記録するビジュアルは、観客にその場に居合わせているかのような感覚を与え、以後のハリウッド大作におけるIMAX活用(フィルム・デジタル問わず)にも多大なる影響を及ぼすことに。トリロジーの完結編『ダークナイト ライジング』(12)では、IMAXの適用範囲をさらに拡張させている。

