吉田恵輔監督作『四月の余白』で映画初主演!一ノ瀬ワタルが自身の肉体と過去を宿して挑んだ魂の演技「なにが怖いかを肌で知っている、という自負がある」
「人の意見を聞くことはすごく大事にしているんです」
――一ノ瀬さんは恵まれた体格や格闘技の経験があり、過去にも暴力的な特性を持つ役を多く演じる機会があったと思いますが、それを自身の肉体で引き受けることはやはり痛みを伴うものでしょうか。
「痛みはあります。そもそも自分自身がいっぱい殴られてもきたし、いっぱい怒られてきた過去がある。あの時のあの人の顔はめちゃくちゃ怖かったな、みたいな思い出が頭によぎったりすることもあります。本当に怖い芝居をする時はその恐怖を再現したいというか、なにが怖いかを肌で知っている、という自負がもしかしたらあるかもしれないです」
――海斗にはその恐怖がないのかもしれないですね。いかなる暴力も許されないことは大前提として、この映画を観ていると、力をもってしか解決できない現実があることを思い知らされる局面にたびたび出くわします。
「令和のいまに必要悪ではないですけど、西のような立ち位置の人間が必要な場合もある気はするんです。彼も頑張っているけれども、そういう人をどこまで、どういう形で許容するか。そこを観る人に委ねる映画ですよね。ダメな人はダメでしょうし、彼が大勢の人を傷つけてきた過去があるのは事実ですから、それこそ被害者は一生許せないかもしれないですし」
――西にとって自分の過去と向き合うことは試練でもありますが、ご自身の俳優人生を振り返って、いまでも折り合いをつけられていないことはありますか?
「プロの選手として活動していたキックボクシングを辞めて、俳優に転身する時は、すごい勇気が要りました。ただ、結果的によかったとは思っていて、納得もしているんですけど。キックボクシングを続けることに疑問を持っていた時期ではありましたし、役者でやっていこうと決めたのも自分ですし。そういう意味では折り合いをつけられていないことはないかもしれません」
――その答えが一ノ瀬さんの生き方を象徴しているようですね。
「自分で自分を許せないことがあったとしても、自分を言いくるめているような気がします。案外プラスだったなって」
――「人は変われるのか?」ということが本作のテーマにもなっていますが、ご自身だったらどのような答えを返しますか?
「人は変われると思っています。自分次第というか。周りの人の力もありますけど、人は必ず変われる、少しずつだとしても。そういうことを実感した体験もいっぱいしてきました。ダーウィンの名言に『最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るのでもなく、唯一、生き残る者は変化できる者である』という言葉があって、この言葉が好きで、座右の銘にもしています。自分でも変わりたい、変わっていこうという気持ちは常に持っていて、人の意見を聞くことはすごく大事にしているんです。そのためにも頑固になることだけはやめようと思っています。それがもう頑固なのかもしれないですけど(笑)」
取材・文/奈々村久生
※吉田恵輔の「吉」の字は「つちよし」が正式表記
※山崎七海の「崎」の字は「たつさき」が正式表記
