吉田恵輔監督作『四月の余白』で映画初主演!一ノ瀬ワタルが自身の肉体と過去を宿して挑んだ魂の演技「なにが怖いかを肌で知っている、という自負がある」
人の痛みも、言葉も、愛でさえも、簡単には届かない相手とどう向き合えばいいのか。現在公開中の『四月の余白』が映し出すのは、社会や世間からはみ出した者の中でも、さらに行き場を失っていく者への眼差しだ。吉田恵輔監督が思春期に出会った非行少年や彼らを取り巻くコミュニティの記憶を手繰り寄せ、暴力の連鎖と更生の可能性、その間でもがく人々の姿を描きながら、「人は変われるのか?」というテーマに迫る。
非行から立ち直って更生施設「みらいの里」を運営する西健吾を演じ、映画初主演を務めた一ノ瀬ワタルが、正解のない問いへの真っ直ぐな思いを語った。
「演じるうえでは孤独が大事だと思ったので、撮影中はできるだけ誰とも触れ合わないようにしていました」
――吉田恵輔監督の実体験から得た要素も含むオリジナル脚本をどのように読みましたか?
「脚本を読む前に、“体罰”をテーマにした映画を作りたいということはうかがっていて、すごく興味深いなと思いました。自分の中で体罰が是か非かというのはずっとよくわからなかったんです。子どものころに少年柔道教室に通っていたんですけど、先生たちはみんな厳しくて、体罰ではなくてもやっぱり投げられると痛いんです。その後キックボクシングを習っていた時も、やんちゃな生徒たちが稽古を通して更生していくのを見ていて。そこで礼儀を知ったのか痛みを知ったのかわからないですけど、なにが彼らを変えたのか、という疑問が自分の中にはありました」
――演じた西健吾は、元半グレで自身も犯罪に手を染めた過去を持ちながら、同じような境遇の子どもたちを救おうとします。この役を引き受けるにあたっては、どのようなアプローチを試みましたか?
「『ザ・ノンフィクション』というドキュメンタリー番組で、家に居場所のない子どもたちを預かるお寺の熱血和尚を取り上げた回があって、最初はその人みたいな感じかなと思いました。吉田監督が思い描いていたのは同じ番組のまた別の男性で、その回も見たんですけど、いいこともしていた人なのに全然そうは見えなかったんです。さらっと怖いことを言ったりして。そういう人をモデルにしてもらうといいかもしれません、みたいなことは言われました」
――かつてワルだった以外に、意外とミーハーだったり見栄っ張りだったりする一面も出てきますね。
「一番大事にしていたのは、みらいの里にいる子どもたちだったんです。まずそこを最初に考えて役作りをしました。ミーハーな部分に関しては、過去にしてきた悪いことを武勇伝のように語って、それがニュースにもなって、つい調子に乗ってしまうような、そういうところも見せたいかなと思った気がします」
――ということは、海斗役の上阪隼人さんや詩役の山崎七海さんなど、施設に入所する子どもたちを演じた役者さんたちとの触れ合いを大事にされていたのでしょうか。
「それが、西を演じるうえでは、孤独というのも大事だと思ったんです。だからむしろ触れ合わないようにしていました。ずっと愛知県の蒲郡に滞在して撮影していたんですけど、その間は誰とも食事に行かなかったですね。プライベートのごはんはコンビニだけ。現場でもちょっと楽しそうな雰囲気になっていたら、自分からその場を離れて、あまり近づかないようにしていました。喋る時は喋りますけど、逃げる時はこそっと。気を遣わせたくないので」
――「サンクチュアリ」の撮影でも敢えて孤独になって集中したお話をされていましたが、今回の西はなぜ孤独だと思ったのですか?
「この映画の中で、西にはみらいの里しかないように思いました。それが生きる糧というか。みらいの里で子どもたちを救っているつもりだけど、西もみらいの里に支えられている。そういった意味ではみらいの里がある撮影現場でだけ喋りたい思いがあって、そのための助走を作りたかったという感じですかね。大人のキャストの皆さんとも、基本は喋らないようにしていました」
