吉田恵輔監督作『四月の余白』で映画初主演!一ノ瀬ワタルが自身の肉体と過去を宿して挑んだ魂の演技「なにが怖いかを肌で知っている、という自負がある」

吉田恵輔監督作『四月の余白』で映画初主演!一ノ瀬ワタルが自身の肉体と過去を宿して挑んだ魂の演技「なにが怖いかを肌で知っている、という自負がある」

「西には、絶対に自分が子どもたちを変えてやる、という自信はあったと思います」

更生施設の入所者を演じた子どもたちとの距離感を大事にしたという一ノ瀬ワタル
更生施設の入所者を演じた子どもたちとの距離感を大事にしたという一ノ瀬ワタル撮影/杉映貴子

――吉田監督の映画には初出演となりましたが、撮影現場はいかがでしたか?

「監督とのコミュニケーションも必要最低限に近かったと思います。こうして取材の場で再会した時、監督から『一ノ瀬さんてこんなに声が大きかったんですね!』と言われたんですけど、監督も撮影中はそれさえ知らなかったぐらいだったんだなと。ただ、わからないことはちゃんと聞いていました。監督は受けとめてくれますから。例えば海斗をはじめ劇中には問題を抱えた子どもたちがたくさん出てきますけど、もしこれが西の10年前を描いた作品だったら、西は多分海斗の何千倍も悪いことをしていたと思うんですよ。だから海斗がどれだけ悪いことをしても西にとっては、俺が子どもだった時はこれぐらいの奴は大勢いたよ、みたいな感じで全然全然動じないというか。監督にはそんなことを言われた記憶があります」

――海斗の母親でさえ「どれだけ頑張っても、あの子と通じ合うのは無理なんじゃないか」と途方に暮れるぐらいでしたが。

「西としては自信がありましたね、子どもたちを変えられるって。絶対に自分が変えてやるという自信はあったと思います」

子どもたちに寄り添う西
子どもたちに寄り添う西[c]2026 N.R.E.

――西は暴力的な一面を持つと同時に、子どものような笑顔をよく見せていますね。

「それについては監督とも話したんです。監督が言うには、この映画は暗くしようと思えばどこまでも暗くできるけど、それはしたくなかったって。自分としては意図的に笑おうとするつもりはなかったんですけど、西が子どもたちを愛することで、普通に可愛く見える時があったり、ありがとうという言葉も自然と出てきたりしました」

――実は海斗も笑う瞬間は意外と多い気がします。西が海斗を見る目は、かつての自分に向けるそれのようでもあり、「あいつ成長できると思うんだよ、いま見捨てたら大変なことになっちゃうんだって」という言葉は自身に言い聞かせているみたいにも聞こえました。海斗のことは理解できている自信があった一方、海斗と対立する入所者の詩からは「(自分には)寄り添ってくれない」と言われてしまいます。あの言葉は、西にはどう聞こえていたのでしょうか。

「そのことも監督と話し合いました。たしかにあれは辛いセリフだけど、西は案外その言葉を理解していないんじゃないかと。なにを言ってるんだい?ぐらいに受けとめていたと思います」

――まさか「寄り添っていない」と言われるなんて心外だった?

「そうですね。西としては、十分寄り添ってるよ、みたいな気持ちだったと思います」

脱走した海斗を追いかける西
脱走した海斗を追いかける西[c]2026 N.R.E.

――それも含めて、自分と子どもたちを信じる力がとても強くて、そのことに西自身も支えられているのかもしれません。だとすると、自分が暴力を振るう人間であることについても、そこまで深くは考えていないのでしょうか。


「愛がある暴力ですから、悪いことをしている自覚はないと思うんです。空手道場の指導じゃないですけど、よくも悪くも、子どもたちを変えるために必要な痛みを教えるつもりだったのかなと」

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