日本のサッカー哲学に風穴を開けた!多彩なエゴイストを描く「ブルーロック」の強烈なメッセージ
多種多様な個性を持ったエゴイストたち
そんな物語の構造的な魅力の発露となっているのが、多種多様な個性を持ったキャラクターたちだ。
主人公の潔世一は、全国出場を懸けた県大会で、GKと1対1で対峙する絶好の機会を迎えたのにもかかわらず、「サッカーは11人でやるスポーツだ」と考えて仲間へのパスを選択し、勝利を逃した高校2年生の少年。「もし、あの場面でパスじゃなくシュートを撃っていたら」と忸怩たる思いを抱え、己のサッカー人生を変えるために「青い監獄」に足を踏み入れる。
自分の得意なところを聞かれても即答できない、技術も身体能力も平凡な選手である潔だったが、「青い監獄」の非常識なルールや暴論に翻弄されながらも、こんなところで終わりたくないという一心で足搔き、心の底に閉じこめられていた己の強烈なエゴを自覚し、成長を遂げていく。「青い監獄」入寮当時のランクは300人中299位で、最下位クラスから実力で登っていく“下剋上”キャラクターというところも、応援したくなる要素だ。
ほかにも、潔と同じチームで、彼を脱落のピンチから救った蜂楽廻。天才的なボールコントロールセンスを持つが、面倒くさがりの凪誠士郎。「オシャ」に異常な拘りを持つ蟻生十兵衛。自らを「王様」と称する馬狼照英。潔に似た能力を持ち、潔を潰そうとする二子一揮。漢気と熱血にあふれた國神錬介。トップアスリートになる夢を親から押しつけられて育った氷織羊。50メートル走5秒77という驚異的なスピードを持つ千切豹馬。財閥御曹司の退屈な生活から抜けだすために「青い監獄」に参加した御影玲王。「青い監獄」のトップランカーである糸師凛。“新世代世界11傑(ワールドベストイレブン)”の一人だが、口汚く乱暴なミヒャエル・カイザーなど、漫画らしいキャラクターからすぐ隣にいそうなヤツまで様々。
“エゴ=人格”で閉塞感とモヤモヤを吹き飛ばす
ポジションによってキャラクターの性格をつけていくスポーツ漫画は多いが、本作では全員がFW。その個性を、生育歴や経験によって形成された“エゴ=人格”と、その人格だからこそ獲得できた“能力”で表現しており、キャラクターを知れば知るほどおもしろさを感じるところも、ブラックホール的な魅力の一つだろう。
特に、「青い監獄」に参加する前のエピソードを書いた「小説 ブルーロック 戦いの前、僕らは。」を読むと、よりキャラクターが理解できるのでおすすめ。古い価値観に縛られ停滞している社会、過去の実績に囚われ新しいやり方を取り入れられない体質、形骸化したルールを押しつけて若者の声に耳を塞ぐ大人、勝手に限界を決めて努力を放棄する己の弱さ…。いま、心に抱いている閉塞感とモヤモヤを吹き飛ばす力を手に入れたいのなら、読んで損はない。
6月11日から北中米W杯の本大会がアメリカ・カナダ・メキシコで開催中だ。日本代表メンバーに名を連ねるのが上田綺世。日本人選手史上初のエールディヴィジ得点王となり(オランダプロリーグの得点王)、海外のサッカーサイト「MAD FOOTBALL」の2025ベストCFでは、アルゼンチン代表のラウタロ・マルティネスを抑えて5番目に選出された俊英だ。世界で活躍する日本人選手の多くがMFやDFというなか、FWとして名を上げている上田選手の活躍には大いに期待したいところ。
前回カタールW杯が開催された2022年秋にはテレビアニメ「ブルーロック」が放送され、日本代表の活躍と共に本作も話題に。そして、2026年にはついに実写映画化。主人公、潔世一を演じる高橋文哉を筆頭に若きストライカー役で旬の若手俳優たちが集結し、絵心甚八役には窪田正孝がキャスティングされている。さらなる広がりを見せる「ブルーロック」から目が離せない。
文/ナカムラミナコ
