アマンダ・セイフライド、魂の歌唱シーン『アン・リー/はじまりの物語』本編映像を独占入手
アカデミー賞に輝いた『ブルータリスト』(24)のチームが再結集した、モナ・ファストヴォールド監督が主演にアマンダ・セイフライドを迎えて挑む衝撃の歴史ミュージカル映画『アン・リー/はじまりの物語』が6月5日(金)より公開となる。良作を届けるサーチライト・ピクチャーズ最新作でもある本作から、このたびセイフライド演じるアン・リーが、アメリカに渡る際、船上で歌い踊り、祈りを捧げる本編シーン映像が解禁された。
18世紀という時代に自らをキリストの女性的化身と信じ、人間の平等とストイックな精神性を説いた指導者アン。性差別、人種差別の横行するイギリス、マンチェスターからたった8人の信徒と新大陸アメリカへわたり、史上最大のユートピアを築こうとした彼女の生きざまを残された文献からひも解く物語となっている。ヴェネチア国際映画祭では、15分にわたるスタンディングオベーションを浴びた。
体を震わせ(シェイク)、歌と共に神へ祈りを捧げるさまから、彼らは“シェーカー”と呼ばれた。禁欲、自給自足の共同生活に表れているように、非常にストイックな精神性を持つ。その信仰から生まれたシンプルモダンなライフスタイルは、信者が途絶え、ユートピア幻想が崩れ去ろうとも、その精神は、日本のみならず世界中で愛される“シェーカーボックス”に代表される木工品や家具といった形で、私たちの生活のなかでいまも影響を与え続けている。
性差や貧富差も厳しい時代、哀しみ、葛藤、理不尽な暴力と、受難のなかにあっても神を信じ続けたアンの情熱的な人生に魅了された『ブルータリスト』のチーム。監督は同作で脚本を担当し、本作でもパートナーのブラディ・コーベットと共に共同脚本、製作も兼ねている。彼女の華麗で大胆な世界観を、アカデミー賞受賞のダニエル・ブルームバーグの音楽、陶酔と恍惚をダイナミックに再現するセリア・ロールソン=ホールの振り付け、100%フィルム撮影による荘厳で深みのある映像で完全映像化。まさに世界最高峰の才能を集めて構築されたミュージカルシーンは、観るものを異次元の興奮と感動へと誘う。
今回解禁となったのは、セイフライド演じるアンが、イギリスのマンチェスターから新大陸アメリカを目指し、船上で祈りを捧げるシーンだ。アメリカで伝道活動を行う牧師の記事に触発され、自らも大西洋を渡ることを決意したアンは、1774年、アメリカへの航海へ旅立つ。弟のウィリアム、姪のナンシー、資金を援助するホックネルらわずか8人の信徒との旅である。
しかし船酔いに苦しみ、嵐による沈没の危機など道中は長く、過酷を極める。彼らは日々神に祈りを捧げ、船はなんとか無事にアメリカへと到着。この過酷な旅を乗り越えられたのは、神の啓示とアンの祈りによるものだと、一行の神への信奉はさらに強化された。アンが神に捧げる歌は、包み込むような慈愛に満ちながら、切実さがあふれている。「すべてが調和、すべてが夏」と繰り返されるフレーズは、いまの苦境を抜けた先への希望。劇中でも非常に印象的なシーンとなっている。
音楽を手掛けたのは、『ブルータリスト』で2025年アカデミー賞作曲賞を受賞したブルームバーグ。ファストヴォールド監督とは『ワールド・トゥ・カム 彼女たちの夜明け』(20)で初タッグを組み、本作が2度目となる。伝統的なシェーカー信徒の旋律を出発点とし、彼はそれらを自身の大胆な想像力に満ちた楽曲群へと変容させ、2時間を超える映画全体を牽引するスコアを作り上げた。
本作では、音楽と振付が“神への祈り”として描かれるため、単なるスコアというわけにはいかない。ファストヴォールド監督も、プロジェクトの初期段階から音楽と動きが重要な要素になることを確信していたと語る。「シェーカーたちは、まるでミュージカルのなかに生きているかのような生活を送っていた。だからこそ重要だったのは、音楽、賛美歌、そして動きを、登場人物たちの“現実”を損なうことなく、どう結びつけていくか、という点でした」。
ブルームバーグは本作の制作初期から深く関与し、脚本完成前には監督と共にシェーカー教団の賛美歌アーカイブを研究して12曲に厳選。そこからさらに彼が映画内の歌のシーン向けに再構築した。2024年初頭から監督と共に、キャストと振付のロールソン=ホールがワークショップで用いる音楽スケッチを作成。夏の全撮影期間中も現場に滞在し、ロケ地で俳優たちのリハーサルと録音を行った。
ファストヴォールド監督は「何世紀も続く伝統に根差しつつ、現代的な視点で再構築することが目的でした。感情の深みを保ちつつ、映画の世界観に不可欠で、かつ明確にオリジナルなサウンドを作り出すことでした」と語り、そこにはブルームバーグの音楽への深い信頼も垣間見える。
ブルームバーグは「本作では非常に特異な音色パレットを用いながら、あらゆる要素を極限まで押し上げようと試みました。シェーカー教団とアン・リーは極めて過激な存在であり、物語が扱うドラマの幅も広大だったため、楽器編成も大きく拡張する必要があった。これは間違いなく、私が関わったなかで最も強烈なプロセスであり、実験的な作品です」と、アカデミー賞作曲賞を受賞してなお、前作を上回るチャレンジングな試みだったと振り返る。
そして劇中実際に彼の楽曲を歌ったセイフライドは「まさに魔法のようでした。何百年も前に書かれた賛美歌を、彼はとても独自の“指紋”を与えることで、現代に生きる私たちが新たに体験できる音楽へと変貌させているんです」と称賛を送っている。
美しい宗教画のような映像とドラマティックな音楽で、現代によみがえるアン・リーの物語をぜひ映画館で堪能していただきたい。
文/山崎伸子
