トム・ヒドルストンが明かす『サンキュー、チャック』に刻まされたスティーヴン・キング作品の本質「恐怖や死よりも人生の“恵み”を重視するのが彼の作家性」
「顔立ちはフレッド・アステアに似ているので、比較してもらえるのはうれしい(笑)」
少年時代のチャックは、ダンスへの“目覚め”を経験する。大人になって会計士の仕事に就いた彼は、ある瞬間、そのダンスへの欲求が爆発し、そこが本作でも最大の見どころとなっている。冒頭に書いた、ヒドルストンのダンスシーンだ。「今回の撮影で、ダンスが占めた比重は85〜87%」と話していたヒドルストン。つまり、それだけ苦労したわけだが、完成した映像では、あのマイケル・ジャクソンのムーンウォーク、往年のミュージカルスターを彷彿とさせる軽やかなステップも披露し、拍手喝采モノ!少年時代のチャックが祖母と一緒に観たのがジーン・ケリー、フレッド・アステアのダンスだった。そのあたりもヒドルストンは意識したのだろうか?
「ジーン・ケリーは、アメフトのクォーターバックのようなガッチリした体型にもかかわらず優雅に踊っていた。だから僕とはちょっとタイプが違います。一方でフレッド・アステアは、歴史上で最も“重力に逆らって踊った”ダンサー。まるで空を飛んでいるかのようで、僕もその感覚を目指しました。ダンスに限らず、陸上やサッカーの一流選手も、宙に浮いて見えるほどの敏捷性とダイナミックさを保持していますよね?あと僕の顔立ちはちょっとアステアに似ているので、比較してもらえるのはうれしいです(笑)。もちろんダンスに関しては足元にも及びませんが、人生を通して彼のファンでもあったので」。
ここまで本格的に踊ったのは、俳優としての長いキャリアでも初めてだったというヒドルストン。しかしダンスへの情熱は多少なりとも持っていたという。そんな話になると、彼は10代のころを振り返り始めた。
「ティーンエイジャーだった1990年代は、僕の育ったイギリスをはじめヨーロッパではダンスミュージックが人気で、よく仲間とサンプリングしたり、リミックスしたりして、新しい音楽を作って遊んでいました。そんなことをやっていると当然、聴きながらダンスもするわけです。だから音楽への情熱が、ダンスに派生したという感じ。特に真剣に踊るトレーニングをしたわけじゃないんです(笑)。でもこうして10代のころ、親や教師の押し付けではなく、自分から夢中になったことって、その後も一生涯、愛し続けるんですよ。だから音楽は、僕にとって魔法のようなもの。いまでも当時のダンスミュージックは僕を幸せな気分にしてくれます」。
