トム・ヒドルストンが明かす『サンキュー、チャック』に刻まされたスティーヴン・キング作品の本質「恐怖や死よりも人生の“恵み”を重視するのが彼の作家性」

トム・ヒドルストンが明かす『サンキュー、チャック』に刻まされたスティーヴン・キング作品の本質「恐怖や死よりも人生の“恵み”を重視するのが彼の作家性」

マーベル・シネマティック・ユニバースのロキ役などで知られるトム・ヒドルストンが、華麗なダンスのステップで観客を魅了する――。『サンキュー、チャック』(公開中)は、そんなエモーショナルなダンスシーンと、独創的な語り口で感動を届ける一作だ。

各地で天変地異が起こり、ネットやSNSも遮断された世界。そこに突如として「チャールズ・クランツ、ありがとう」という広告が出現する。そのチャールズ=チャックの39年の人生をたどるこのヒューマンミステリーで、大人時代のチャックを任されたのが、トム・ヒドルストン。トロント国際映画祭で観客賞を受賞するなど、多くの人の心を掴んだ本作の日本公開を前に、彼がインタビューに応じてくれた。

「各年代のチャックを演じた3人が、僕へと繋がっていく。そこがすばらしい」

『サンキュー、チャック』は、あのスティーヴン・キングの短編の映画化。キングといえばホラー小説の大家だが、『スタンド・バイ・ミー』(86)、『ショーシャンクの空に』(94)のような“非ホラー”の映画化作品に傑作が多いことでも知られ、『サンキュー、チャック』もその流れに連なる作品。ヒドルストンにまず、キングについて聞いてみた。

トロント映画祭観客賞を受賞した『サンキュー、チャック』
トロント映画祭観客賞を受賞した『サンキュー、チャック』[c]2024 DANCE ANYWAY, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

「僕が初めてキングの世界を知ったのは、フランク・ダラボン監督の『ショーシャンクの空に』です。最初に観たのは1990年代でしたが、最近も観直したところ、友情の価値、そしてその友情が人生の困難な時期にいかに大切なのか、ということを改めて痛感しました。人間が生きている理由のひとつは、友達を作って一緒に笑い合ったりして育む繋がりにあるでしょう。今回の『サンキュー、チャック』の原作を読み、キングは人生の価値を心から理解し、その文章に知恵と寛大さがあふれていると実感しました。彼は私たちを怖がらせる物語も書いていますが、最も興味があるのは人生そのものなんです。本作のチャックは幼いころに両親を亡くしますが、祖父母、さらに大人になってからは妻や息子との幸せな時間も経験します。つまり、苦痛や喜びが複雑に絡み合っているのが人生。そこをキングは熟知し、恐怖や死よりも人生の“恵み”を重視する。それこそが彼の作家性だと納得しました」。

マイク・フラナガン監督の息子コディが幼少期のチャックを演じた
マイク・フラナガン監督の息子コディが幼少期のチャックを演じた[c]Everett Collection / AFLO

本作のマイク・フラナガン監督は、これまでも『ジェラルドのゲーム』(17)、『ドクター・スリープ』(19)など、スティーヴン・キングの映画化でメガホンをとってきた。最適な監督と言えるが、そんなフラナガンから、本作のテーマを「人間は誰しもが多面的な存在」と聞かされていたヒドルストン。チャックの幼少期を、監督の実の息子であるコディ・フラナガンが演じていることもあり、監督の想いを体現しようとしたと、ヒドルストンは明かす。


「コディだけでなく、ベンジャミン・パジャック、ジェイコブ・トレンブレイと、各年代のチャックを演じた3人が、僕へと繋がっていく。そこがすばらしいと感じました。僕が出演したパートは、まだチャックにエネルギーがある中年期で、子ども時代の経験が内側に残っている。スーツを着てブリーフケースを持った、明らかにビジネスマン風の外見ながら、若いころの魂がみなぎり、想像力で心は刺激される。そんなチャックを、僕は演じようと心掛けたたつもりです」。

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