一人の科学教師に人類の命運が託された理由とは?キーワードでひも解く『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の世界

一人の科学教師に人類の命運が託された理由とは?キーワードでひも解く『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の世界

グレースが宇宙で出会った知的生命体ロッキー

高度な技術力を持つエリド40(エリダヌス座40番星)の知的生命体エリディアンの一人。地球と同じくマイクロファージの被害に遭っている母星を救うためタウ・セチを訪れ、そこでグレースと出会う。5本の肢がある岩のようなクモに似た外見をしており、コンピュータ並みの計算力と記憶力を持ち、驚異的な強さと気密性のある化合物キセノナイトを粘土のように操って日用品から宇宙船まで作ることができる。小さなかぎ爪のついた肢でせっせとキセノナイトをこねる姿が愛らしい。なお、エリド40は実在する惑星で、「スター・トレック」に登場するミスター・スポックの故郷バルカン星のモデルにもなった。ついでにいえばタウ・セチも実在する恒星だ。

【写真を見る】孤独な科学教師グレースは宇宙で出会った異星人ロッキーと協力して故郷を救おうとする
【写真を見る】孤独な科学教師グレースは宇宙で出会った異星人ロッキーと協力して故郷を救おうとする

エリディアンは目がない代わりに高性能なソナーで相手を知覚し、クジラのように音でコミュニケーションを取る。和音を使ってグレースとやり取りする様は、まるで『未知との遭遇』(77)のよう。グレースは互いの言葉のデータベースを作成し、音声翻訳プログラムを組むことで会話が可能になった。好奇心旺盛なロッキーがグレースの言動をおもしろがり、なにかにつけて「質問!」と繰り返す姿も笑いを誘う。両者の出会いから交流の過程も丁寧に描かれ、中盤の見せ場になっている。なおロッキーの名は、その外見と『ロッキー』(76)からグレースが命名した(エリディアンもグレースによる命名)。

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」は片道切符の捨て身のミッション
「プロジェクト・ヘイル・メアリー」は片道切符の捨て身のミッション

タウ・セチで出会い、互いの目的が同じだと知ったグレースとロッキーは、科学知識と技術力で協力し合いながらアストロファージを研究。ついに、タウ・セチのサンプルを採取したところ、驚くべき事実が判明する…。不可能に挑むスリリングな人間ドラマと異星人との熱き友情物語、そして宇宙で繰り広げるスペクタクルと見どころ満載の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』。壮大な物語の行く末をスクリーンで味わってほしい。


文/神武団四郎

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