一人の科学教師に人類の命運が託された理由とは?キーワードでひも解く『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の世界
ライアン・ゴズリング主演の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(公開中)は、『オデッセイ』(15)の原作者アンディ・ウィアーの同名小説を原作に、人類滅亡を阻止するため、宇宙に飛んだ中学教師の活躍が描いたSF超大作だ。監督を務めたのは『スパイダーマン:スパイダーバース』(18)などの脚本&製作を手掛けてきたフィル・ロード&クリストファー・ミラー。地球から遥か宇宙へ、サスペンスや友情、スペクタクルなど多彩な要素を盛り込みながら展開する本作の世界観を、物語のカギを握るキーワードから紹介する。
太陽エネルギーを吸収する微生物アストロファージ
太陽のエネルギーを吸収する微生物。太陽と金星を輪のように結んだ光る線“ペドロヴァ・ライン”として発見され、やがて太陽から金星へ束になって移動する微細な物質だと判明。その繁殖には二酸化炭素が必要なため、太陽で熱エネルギーを得たのち二酸化炭素密度の濃い金星で繁殖すると、再び餌場である太陽に戻ってきたのだ。このままアストロファージが太陽エネルギーを奪っていけば、地球の気温は10~15℃ほど低下し氷河期に突入するのは確実。人類が初めて遭遇した宇宙生物は、実に厄介な微生物だった。名前の由来は“宇宙(アストロ)”と“食べる(ファージ)”から。
人類の命運を託された科学教師ライランド・グレース
本作の主人公で、知的で論理派、ユーモラスで皮肉屋でもある中学校の科学教師。かつて将来を嘱望された微生物学者だったが、「必ずしも生命に水は必要でない」という説に固執したためバッシングを浴び研究者の道を絶たれてしまう。教師になった現在は、科学への情熱を子どもたちの教育に向けている。問題になった論文を読んだエヴァ・ストラット(ザンドラ・ヒュラー)の誘いでアストロファージ対策チームに参加。アストロファージが生物であることを突き止め、中核メンバーとして研究に没頭する。持ち前の好奇心と科学への情熱に突き動かされるグレースを、『ファースト・マン』(19)で実在の宇宙飛行士に扮したゴズリングが軽やかに演じている。
プロジェクトの責任者エヴァ・ストラット
強い意志と優れた判断力で「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を牽引する責任者。国連によりプロジェクトの全権を委任され、法や国を超越し人材を含むあらゆるリソースを自由に使うことができる。アストロファージ解明のためグレースをプロジェクトにリクルートし、その性格を利用しながら宇宙に飛ばした張本人。目的のためならどんな犠牲や手段も厭わない冷徹な独裁者だが、計画に関する責任はすべて自分にあることを自覚して汚れ役を受け入れている。そんなストラットを演じるのは、『ありがとう、トニ・エルドマン』(16)、『落下の解剖学』(23)、『関心領域』(23)などで称賛されたザンドラ・ヒュラー。感情をいっさい出さない彼女の表情に時折よぎる、心の揺らぎが胸を打つ。
