「俳優人生が変わった」山時聡真&菅野美穂が『90メートル』で向き合った親子愛
──お2人は、高校生の佑と美咲のことを、どんな人物だと捉えていましたか?役と同様に、息子として、母として共感できた部分は?
菅野「美咲さんは立派だなぁと思っていました。それまでできていたことが、どんどんできなくなっていく自分に向き合わなきゃいけなくて。そんななかでも息子のことを第一に考えていて。私はふだん育児で怒りっぱなしなので、この高尚な親子と自分を比べて、自己嫌悪になったりしていました。私が同じような状況になったら、こんなふうに振る舞えるかな?きっと無理だろうなと思いながら、それでも病気ということ以前に、“息子を想う母親”であることを念頭において演じられたらいいなと思っていました」
山時「僕はふだんあまり家事をしないんです。だから撮影を通して、洗濯ものを干したり、カレーを作ったり、たくさんの家事をして。やっぱり佑って、本当に強い男の子だなと思いました」
菅野「実際はなかなかやらないよね」
山時「実家暮らしなので、甘えてしまっています(笑)。でも、佑が介護のためにバスケ部を続けられなくなったつらさは、すごく理解できました。僕も高校時代、バスケ部だったんです。仕事で試合に出られなかった時の気持ちや、4番という背番号を背負う責任やうれしさ…そういったところも本当に共感できました。いま、大学に通っていることもそうですし、自分の人生と重なる部分がすごく多かったです」
「菅野さんと出会えたことで、自分の俳優人生が変わった」(山時)
──今回、お2人が初共演した感想はいかがでしたか?
菅野「親子役だから、すごく年が離れているんですけど、山時さんが柔らかい方なので、現場でも話しかけやすかったです。素顔としても優しい息子さんで、ご家族のことが大好きっていうところがすごく素敵だなぁと思って。うちの息子は将来こうならないだろうなぁって(笑)。前に私が山時さんをドラマで拝見した時は、とても熱く自分から人に関わっていく役を演じられていたので、今回はいい意味でギャップがありました。佑は相手のことを思って、自分は引いてしまう役だから。でも、優しさという面では、山時さんは今回の役に近いのかなと思ったりして。だから、演技の振り幅のある、いろんな役ができる俳優さんだなって思いました」
山時「うれしいです。僕は余裕がなくて、テストの時はお芝居の熱量を抑えてしまっていたんです。でも、菅野さんは常に本番で。介護練習で菅野さんとリハーサルをやらせていただいた時に、そこで初めて佑と母として関わったんですが、瞬時に『90メートル』の世界観に引き込まれました。菅野さんのお芝居を見た瞬間から、菅野さんのお芝居に食らいついていくだけだ!と思いました。菅野さんと出会えたことで、自分の俳優人生が変わったというか…」
菅野「いやいや、そんなふうに言ってもらえるなんて…。私も先輩方にそうやって教えてもらっていたから。これから、いろんな作品の撮影が続いていくと思うから、自分のなかで、ちょっとずつ違ったやり方を試していくといいかもね」
山時「ありがとうございます。撮影中も『こういうふうにやっていったらいいかもね』って、たくさん教えてくださって。そんなふうに僕と向き合ってくれたことも含めて、お母さんとしても、菅野さんとしても、すごくつながった感覚がありました。それはこの映画にも忠実に出ているんじゃないかなと思っています」
──劇中では、美咲が患った病気によって、息子と会話でのコミュニケーションをうまく取れないという苦しい姿も描かれていました。菅野さんが美咲を演じる上で難しさを感じた部分はありますか?
菅野「知れば知るほど、勉強すればするほど、本当に大変な病気なんだなという思いでした。たくさんのドキュメンタリー映像を拝見しましたが、美咲さんのように、それでも人生はすばらしいという想いのもと、自ら発信して希望を届けてくださる方もいらっしゃって、感銘を受けました。役作りに関しては、決して興味本位にならないように。役の表現として必要な部分はあるけれど、そこを演じ手として突き詰めるというよりは、いつか当事者の方がこの映画を観ることがあった時、失礼のないように表現するにはどういうやり方がいいのかを考えていました。美咲さんを演じるにあたって、もちろん母としての息子への想いは一番大事にするところだけれど、病気の表現もとても大事な部分だったので、できるだけ誠実に向き合ったつもりではあります」
