『許されざるもの』『チェイサー』『ロビー!』に至るまで…現代韓国市民の“代弁者”ハ・ジョンウの軌跡を辿る
人気俳優ハ・ジョンウが監督・主演をつとめたコメディ『ロビー! 4000億円を懸けた仁義なき18ホール』が、2月27日(金)より劇場公開される。『ローラーコースター!』(13)、『いつか家族に』(15)に続く3本目の監督作となる本作は、接待ゴルフを題材にした共感&爆笑必至の社会派コメディ。主人公の新興テック企業社長をハ・ジョンウ自ら演じ、自社の生き残りを懸けて苦手な接待ゴルフに挑む波乱万丈の数日間を愉快に描く。鋭い観察眼に基づくブラックな笑い、多彩かつ実力派揃いのキャストが織り成す群像模様、徹底的なリハーサルのもとで繰り広げられたという怪演合戦など、見どころは多い。日本のビジネスマンたちも大いに頷くであろう接待習慣のバカバカしさを始め、同業者=俳優陣からの信頼の厚さ、ユーモアと知性はイコールであるという真理なども痛感させる快作だ。
前作『いつか家族に』は、ハ・ジョンウ本人のキャラに合っていないハートウォーミングな作風が、滲みでるダークな感性を逆に際立たせてしまった怪作だった。10年ぶりの監督復帰作となった今回は、『ローラーコースター!』で披露したコメディ作家としての並外れた技量を取り戻し、痛快なまでにブラックな人間観察眼とスピーディーな語りを堪能させてくれる。心行くまで楽しんでほしい“ハ・ジョンウ・ワールド”の結晶だ。
そして『ロビー!』は、本人がいちばんよく理解しているであろう俳優ハ・ジョンウの魅力と力量をシンプルに引きだした良作でもある。韓国中からかき集めたようなクセモノ俳優陣の交通整理に注力する一方、自分自身は余計な芝居をせずに作品の幹となり、ストーリーを的確に支える役割に徹する(俳優のワンマン映画にありがちな「自分推し」な内容にはなっていない…前作はそうだったかもしれないが)。そのバランス感覚にも演出のうまさを感じるが、作品にとって最適解の演技を掴む役者としての勘のよさも堪能させてくれる。思えばそれはデビュー当時から備わっていた能力かもしれない。
韓国の人々が持つ現代的特性を体現する俳優
ハ・ジョンウが映画俳優として最初に注目されたのは、2005年。本名のキム・ソンフンから改名した年に主演したインディペンデント映画『許されざるもの』(05)で、彼は除隊間近の兵長を演じ、第8回ディレクターズ・カット・アワードなどの国内映画賞で新人賞を獲得。このとき組んだユン・ジョンビン監督とは、その後も名コンビとしていくつも話題作を世に放った。麻薬ビジネスにいそしむ犯罪組織の若頭を演じた『悪いやつら』(12)、権力に楯突く盗賊団に仲間入りする元肉屋に扮した『群盗』(14)、南米の小国でファン・ジョンミン演じる麻薬王の共犯にされてしまうビジネスマンを熱演したNetflixドラマシリーズ「ナルコの神」など、時空を超えて多彩な役柄に挑戦している。
ユン・ジョンビン監督は付き合いが長いだけあって、俳優ハ・ジョンウの魅力を最も的確に引きだした監督と言える。ハ・ジョンウの長所はなんといっても「現代性」と、自分の欠点や弱点をさらけだすことにためらいのない「気取りのなさ」、別の言い方をすれば「自己批評性」にあるのではないか。韓国には意外と自虐的ユーモアを備えた人が少なくないが、ハ・ジョンウはそういう自国民の現代的特性を最も自然に体現している俳優だと思う。
それでも、ユン・ジョンビン監督はイメージが一方向に凝り固まらないよう、さまざまな役柄や作品内容を盟友ハ・ジョンウにチャレンジさせてきた。『悪いやつら』では1980~90年代にかけて変貌を遂げていく現代韓国犯罪史、『群盗』では横暴な権力に牙を剥く盗賊団の痛快娯楽時代劇など、多彩なジャンルに対応する俳優ハ・ジョンウの柔軟性を引きだした。あるいは、現代とは異なる時代や場所のストーリーであっても、観客に無理なく感情移入させるための配役なのかもしれない。

