見逃していたらもったいない!「未知のソウル」「ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語」…2025年の隠れた傑作韓国ドラマ6選
女性同士の友情と別れ、そして再会をていねいに描く「ウンジュンとサンヨン」
今年は2人の女性を主人公にしたドラマが豊作だったが、「ウンジュンとサンヨン」もそのなかの1本に数えられる。小学校時代からの親友、そしてライバルでもあったウンジュンとサンヨン。しかしある出来事をきっかけに絶交してしまい、そのまま疎遠になってしまった。大人になった2人はある日、サンヨンからのアプローチによって再会。実は彼女は病で余命わずかだった。サンヨンは「人生最後の願い」をウンジュンに託し、 もう一度日々を共に過ごしていく。
彼女たちの10代から40代までを伏線をちりばめつつていねいに描き、「人生とは積み重ねである」という普遍的なメッセージを視聴者へ届けることに成功した本作は、全15話を一挙配信というチャレンジングな編成にもかかわらず“イッキ見”してしまうファンが多かったそうだ。ドラマ作家ウンジュン役には安定感間違いなしなキム・ゴウン、映画会社社長サンヨン役を『秘顔』(24)での狂気あふれる演技で青龍映画賞助演女優賞受賞など数多の賞賛を受けたパク・ジヒョンがそれぞれ演じたことも、いまを生きる同世代の女性の心をつかんだ理由だろう。キム・ゴウンは現在、サスペンス「告白の代価」が配信中で、打って変わったサイコパス役の力演も高評価を受けている。またパク・ジヒョンは『大人の童話 この恋、青少年は禁止です!』(2026年1月9日公開)が控えている。昼は公務員、夜は官能小説家として活動する作家に扮し、SUPER JUNIORのチェ・シウォンとラブコメディを繰り広げる。
欠点だらけのレジデントが成長していく姿に感動!「いつかは賢いレジデント生活」
いまなお愛されるドラマ「賢い医師生活」シリーズのスピンオフとして制作された「いつかは賢いレジデント生活」の主人公は、鍾路ユルジェ病院分院で産婦人科に採用された新人4人。寝る時間もないくらい手に負えないほどの仕事をこなし、アマチュアゆえの失敗の数々を経験しながら、“いつかは賢い名医”を目指していく姿を描く。
医師としての姿のみならず、彼らの友情や恋愛、家族愛といった等身大の人間的在りようを生き生きと描き出した「賢い医師生活」シリーズの良さを持つ本作もまた、厚みあるキャラクターの描写はさすがだった。出戻りレジデントのイヨンのほか、仕事よりもプライベートが気になるナムギョン、出来が良いゆえに時々独りよがりになるサビ、お調子者で失敗してしまうジェイルは、みな少しずつどこかに欠点があり、劣等感や嫉妬心から足を引っ張ってしまうことも。そんななかでも互いに励まし合って困難を乗り越えていく様子は、生命が生まれてくる産婦人科という場所も相まって静かな感動を呼び起こす。イヨンを好演したコ・ユンジョンは、Netflixで「その恋、通訳できますか?」の配信が控えている。
中年男性がたどる“男らしさ”からの解放から目が離せない「ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語」
最後に、「じゃああんたが作ってみろよ」や「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」といった日本のドラマに通じる痛快さがあるドラマをおすすめしたい。『エクストリーム・ジョブ』(19)や「ムービング」などヒット作を盛り上げて来たリュ・スンリョンによる新作ヒューマンコメディドラマ「ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語」だ。ソウルの一等地に自宅を持ち、「自分は組織にとって価値がある」と思い込んでいた不遜な中年男性キム・ナクスが、あるとき自身の地位もプライドもすべて一瞬で失う。崖っぷちに立たされた彼は、「大企業の部長」というかりそめの肩書きではない“本当の自分”を見つけ出し人生を再編しようとする。
ナクスはいわゆる嫌われるタイプの上司であり、夫であり、父親だ。だが一方でそれは韓国の家父長制の歴史や、男性中心で競争の激しい社会が押しつけてきた〝男らしさ〟の呪いの結果でもある。本作は近年日本でも注目される“男性らしさ”からの解放というテーマを扱った、意外な社会派の快作だ。演じたリュ・スンリョンの持つ渋みや人間味によるものなのだろうか、ナクスにどうしようもなくイライラしたり呆れたりしながらも、なぜか目が離せなかった。そしてリュ・スンリョンは、『エクストリーム・ジョブ』の脚本家とキャストが再タッグを組んだ新作主演映画『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』も、12月26日より公開中。アーチェリー競技から引退した平凡なサラリーマンに扮していて、この年末も笑わせてくれそうだ。
文/荒井 南

