「この映画を観られてよかった」…ちぐはぐな父娘の“記憶”を辿る旅路を描く『旅の終わりのたからもの』に「ラストは涙が止まらない」
歴史遺産を含む名所をたどる!父娘が旅するポーランド
第二次世界大戦期にナチス・ドイツによる侵攻と占領を受け、ドイツ敗戦後にはソビエト連邦による影響下に置かれ長きにわたる苦境にあったポーランド。その後、エストニアの主権宣言、ベルリンの壁崩壊が起こり、1991年に連邦の解散が宣言されると、ポーランドでも自由選挙が実施され、民主主義国家への道を進んでいくことになる。
本作の舞台として描かれるポーランドはまさにその過渡期にあり、世界中から観光客が訪れ始める一方で、急進的な市場経済化によるインフレや失業で苦しむ人々も多く、光と影が同時に存在していた時代。劇中では寂れた街並みが映しだされ、ロケーション面でもリアリティの追求が徹底されているところにも注目だ。
そんなルーシーとエデクのポーランドへの旅は、ポーランド最大の空港で現在「ワルシャワ・ショパン空港」と呼ばれる旧称「オケンチェ空港」からスタートする。空港で親しくなったタクシー運転手のステファンと共に、フレデリック・ショパン博物館やゲットーの壁、現在はアートや音楽があふれ芸術の中心地として生まれ変わっているエデクの故郷であるウッチ、そしてアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所など歴史遺産を含む名所を巡っていく。本作はそんな2人の珍道中を一緒に体感しているような気分も味わうことができる。
観客から最も印象に残った場所として挙げられたのは、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所。そこで目にするのは、単なる観光名所ではなく、歴史的にも類を見ない残酷な出来事を決して風化させてはいけないという強い想いそのもの。ルーシーは “博物館”と呼ぶ人々にたびたび異議を唱える場面もあり、過去の悲劇をどう受け止め、次の世代へ伝えていくのかという問いが、観客にも静かに投げかけられている。
「ホロコーストの映画は何本か観ているが、博物館化したアウシュヴィッツ強制収容所の様子を表したものは初めてだったので、衝撃だった」(50代・女性)
「どこまでも続く敷地や赤っぽいレンガの跡地と青空が対比されているようで、見た目は美しい景色でしたが、そこで起きていた事実を想起するとなんとも言えぬ気持ちになりました」(30代・女性)
「かつての悲劇の現場がいまや観光名所と化している、どこか間の抜けたのどかさと物悲しさを見事に捉えていたと思う」(40代・男性)
「色味が少なくほの暗い街並みが当時の社会情勢を表しているように感じた」(40代・男性)
「いまの景観のきれいな街並みとこんなにも違うのかと驚かされました」(30代・男性)
観客からは当時のポーランドを再現した描写に言及する声も数多く見られた。初めてこの地を訪れたルーシーと同様に、歴史の重みを感じながら物語に入り込んでいたようだ。
