「アニメの原点は人の描いたものだというところに立ち返りたい」片渕須直監督が制作中の新作『つるばみ色のなぎ子たち』に込めたこだわりや若手育成について語る

「アニメの原点は人の描いたものだというところに立ち返りたい」片渕須直監督が制作中の新作『つるばみ色のなぎ子たち』に込めたこだわりや若手育成について語る

2020年頃から制作が始まった本作。募集をして集まった新人アニメーターたちにも早速原画を任せ、彼らを育成しながら作り上げている最中だという。公開されているパイロット映像には、若手が描いたカットも混ざっているようで、若いアニメーターを育てていくことも非常に大切なことだと片渕監督は語る。

片渕監督が作ろうとしているアニメーションは、ただ平安時代を描くことではない。平安時代の“生活”を感じられるよう、記号的ではなく実質を携えた動き作るためには、そういった絵を描けるスタッフを自分たちで作り出すしかない。アニメーションを制作する際、最初に上がった原画を演出家や作画監督が上からすべて描き直すというのがスタンダードなやり方だが、片渕監督のチームでは、最初に上がった原画に対し直してほしいところを口頭で伝え、それを理解して修正できるところまで現場のスタッフを持っていこうとしているのだという。そうすることで、そのカットはほかの誰でもなく「最後まで自分で描いたカット」になる。だからこそ、次の世代を担うアニメーターをきちんと育て上げていくためには、スケジュールに追われることなく時間をかけることが必要だと話す。それゆえに、公開まではまだ時間がかかるようだ。「うちに集まってきてくれている若い人たちは、一見物静かでおとなしすぎると思われちゃうかもしれないですが、絵を描いて動かした時に大きな力を発揮して自分を表現できる。そういう人たちをもっと育んでいきたいなと思いますし、そういうことがアニメーションを今後も作り続けるうえで非常に大事になってくると思います」と胸のうちを明かした。

監督への質問コーナーに移ると、手の描き方についての質問が挙がった。やや大きめに描かれている手の作画や演出について、片渕監督は以下のように語る。「『この世界の片隅で』でこうの(史代)さんの漫画を映画で描いていくとなった時に、手を大きくするといいのではないかと思ったんです。『この世界の片隅に』って、戦争中の生活を描いた映画だと思って観ていらっしゃる方が多いかもしれないですが、僕はスキンシップを描いた話だなと思っています。手を大きくすることによって、触れ合う感覚とか、そういうものが非常によく発揮できたと思います。大きな手を描くことで、観ている人に人間の体温が伝わっていたのかもと思ったりしました」。

【写真を見る】イベント後、片渕監督は「原動画スタッフ募集中です(笑)」と付け加え会場を和ませた
【写真を見る】イベント後、片渕監督は「原動画スタッフ募集中です(笑)」と付け加え会場を和ませた

ただアニメーションを作るのではなく、業界の未来を見据えながら、新人アニメーターの育成と共に新作の制作を進めている片渕監督。以前、制作したパイロット映像を新人スタッフたちと一緒に大きな画面で観る機会を設けた際、筆目がよく見えて「人が描いた絵なんだな」ということがよくわかったのだそう。そこで片渕監督は、絵が動いて一つの世界を作っていく不思議さこそが、アニメーションの出発点だったのではないかということに気付く。「アニメの原点は、やっぱり人の描いたものだというところにいつも立ち返りたいと、そういうふうに思っていたんです」とアニメに対する熱い愛情を語り、セミナーは幕を閉じた。

第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバルは、12月17日(水)まで開催中。期間中はミッドランドスクエア シネマや109シネマズ名古屋をはじめ、名古屋市内の上映施設を中心とした会場で多くのアニメーション作品が上映されるほか、多彩なゲストを迎えてのトークショーも開催される。


取材・文/編集部

関連作品