「アニメの原点は人の描いたものだというところに立ち返りたい」片渕須直監督が制作中の新作『つるばみ色のなぎ子たち』に込めたこだわりや若手育成について語る

「アニメの原点は人の描いたものだというところに立ち返りたい」片渕須直監督が制作中の新作『つるばみ色のなぎ子たち』に込めたこだわりや若手育成について語る

また、十二単など登場人物たちが身に着けている衣服についても、丁寧に描写するためこだわりを持って研究を行ったという。たとえば「十二単に夏服はあったのか?」ということについては、修復された「源氏物語絵巻」を参考に検証していった。そこから見えてきたのは、青い着物を着ているのは男女共にほとんど夏だけだったということ。つまり、十二単にも夏服があったとするならば、それは青色だったのではないか。青い夏用の十二単を着ているキャラクターのイラストと共に、片渕監督は明かした。

中宮定子に仕えていた女房は清少納言を含めて20人ほどいたと言われているが、それだけの人数のキャラクターをアニメーションで描くことに対して「しんどいですね(笑)」と本音をこぼした片渕監督。しかし、「空想ででっち上げたくはない」とこだわりと語る。女房たちの人物像を検証していく方法の一つとして、片渕監督は「清少納言」という呼び名からひも解いていった。たとえば、「源少納言」。清少納言と同じく、父親か夫が“少納言”の位である人物だと推測できるが、調べてみると彼女は源道方の妻であったことがわかった。息子が書いたとされる歌集には「母は琵琶の名人だった」という記述があり、それをもとに源少納言は琵琶を弾くキャラクターに仕上げていったという。「どんな曲弾いてたんでしょうね。琵琶っていまだと『ベンベンベン』って弾いていますが、この頃の琵琶のバチはしゃもじ状ではなく、とんがっているのでアルペジオが弾けます。残っている譜面を見ると、和音が入っています。そのうち録音したいです」と無邪気に語った。

【写真を見る】1000年前、清少納言の「枕草子」が書かれた時代を生きた少女たちの姿が描かれる
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「枕草子」には、各エピソードのほとんどに何年何月の出来事だったかの記述がない。片渕監督は、登場するキーワードやエピソードを表にまとめ、日付を割り出して時系列順に並べていく作業を行った。するとそこには、ちゃんと物語があったことがわかっていったという。会場に駆け付けた観客からは、あまりに丁寧な時代考証や研究に対し「学術的にまとめて、論文を出してもよいのでは」という声も上がるほどだった。


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