『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』原作者が絶賛する、板垣李光人&中村倫也の声とキャラクターとの親和性

『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』原作者が絶賛する、板垣李光人&中村倫也の声とキャラクターとの親和性

白泉社ヤングアニマル誌で連載され、第46回日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した武田一義による同名漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』(公開中)。太平洋戦争の末期、南方のペリリュー島に派兵された若者たち。日本軍1万人のうち、最後まで生き残ったのはわずか34人という戦場を描く。命を落とした兵士の戦果を(時に脚色を交えて)伝える功績係に任命された田丸を演じるのは板垣李光人、狙撃の腕を買われて前線に抜てきされる吉敷を託されたのは中村倫也。そんな2人は“戦火の友情物語”をどう生きたのか、原作者の武田を交えて語ってもらった。

「『ペリリュー』は、日記のような感覚で読み進められるところがあると感じます」(板垣)

――可愛らしいキャラクターと凄絶な戦場のギャップが鮮烈な作品です。武田先生は前作「さよならタマちゃん」から本作に通じるキャラクターデザインをされていますが、アシスタントをされていた奥浩哉先生(「GANTZ」ほか)のタッチとはずいぶん違いますよね。どのようにしてこのデザインに到達されたのでしょう。

武田「元々の絵は、奥先生に近いものでした。アシスタント時代に精巣腫瘍というガンを患い、その闘病記を描こうと思い立った時に、“病気を扱う以上どうしてもしんどい話になるから、せめてキャラが可愛いから読めるデザインにしよう”とこの形にたどり着きました。病気と戦争の違いはあれど、『ペリリュー』でも同じ考えを踏襲しています」

連載当初から、可愛らしいキャラクターデザインで描かれるリアルな戦場の描写が話題となった「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」
連載当初から、可愛らしいキャラクターデザインで描かれるリアルな戦場の描写が話題となった「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」[c]武⽥⼀義・⽩泉社/2025「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」製作委員会

――以前のインタビューで、武田先生は田丸、吉敷、2人の上官である島田が同時に生まれたとおっしゃっていましたよね。原作の第1話にもある描写ですが、島田が田丸の前で涙を流すシーンが冒頭にあるのが印象的でした。戦争映画や漫画において、上官が部下の前で早々に涙を見せるのは珍しいように感じます。

武田「おっしゃるとおり、戦争の物語だと上官って主人公に対比して怖いやつや悪いやつに描かれがちですが、そうはしたくありませんでした。おっかない上官は別のキャラクターで描いていましたし、『ペリリュー』は基本軸として“いろいろな人たちがいるのが普通”という考えで作っているため、初めから差異が見えるようにしたかったのです」

――中村さんはアフレコに際し、「原作を読んだ時点で役作りは完了した」と話されていましたが、なにか特別な読み方をされたのでしょうか。

命を懸けた戦いに身を投じた兵士たちの生き様に没入する!
命を懸けた戦いに身を投じた兵士たちの生き様に没入する![c]武⽥⼀義・⽩泉社/2025「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」製作委員会

中村「というよりも、没入させられたんですよね。原作を読んでいると、自分のなかのなにかしらの記憶と結びついて熱帯の島特有の潮風がまとわりついてくる感じや、波や風で揺れる木々の音、鳥の鳴き声、においといったものが立ち上がってきました。僕は戦場のにおいに関しては知りませんが、戦闘が始まってからそれらが全部崩れていく感覚自体はわかるように思ったのです。他作品で恐縮ですが、浅野いにお先生の『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』を読んだ時に“いま自分が住んでいる部屋の外にUFOが浮かんでいるんじゃないか”と錯覚したことがあって、『ペリリュー』も同じ没入感を抱きました。先ほどのお話にもあったように、武田先生がキャラデザ含めてあえて作り込みすぎないようにしてくれたことで、読者である僕が自分から引っ張り出してきた感覚と融合させられた気がします。そのなかで生きる吉敷という人物が持っている核心に近いものに触れられた気がして、不思議と“できそう”と思えました」

板垣が演じた、漫画家になることを夢見る田丸
板垣が演じた、漫画家になることを夢見る田丸[c]武⽥⼀義・⽩泉社/2025「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」製作委員会

板垣「『ペリリュー』は、いかにも物語的なものではなく、日記のような感覚で読み進められるところがあると僕は感じます。武田先生が戦地から生きて帰ってこられた方々に取材をされているからこその質感なのでしょうが、いまの時代に描かれたものと頭ではわかっていても“田丸のような当事者の方が漫画として遺したのでは?”と思えるリアリティがありました。その瞬間の状況とそこに付随する残酷さが手に取るようにわかる感覚になりました」

■衣装協力
・中村倫也
シャツ:¥146,300(税込)
ジャケット:¥259,600(税込)
パンツ :¥125,400(税込)
※すべてMARNI/マルニ ジャパン クライアントサービス(0120-374-708)