『小川のほとりで』のキム・ミニやクォン・ヘヒョ、『教授とわたし、そして映画』のチョン・ユミ…韓国の鬼才ホン・サンスの作品で輝くアクターたち

コラム

『小川のほとりで』のキム・ミニやクォン・ヘヒョ、『教授とわたし、そして映画』のチョン・ユミ…韓国の鬼才ホン・サンスの作品で輝くアクターたち

童顔かつコケティッシュな存在感が絶妙なチョン・ユミ

『教授とわたし、そして映画』で中年男性との恋愛関係に揺れる女子大生を魅力的に演じたチョン・ユミ
『教授とわたし、そして映画』で中年男性との恋愛関係に揺れる女子大生を魅力的に演じたチョン・ユミ[c]Everett Collection/AFLO

ホン・サンス映画のヒロインとしては、『教授とわたし、そして映画』(10)や『ソニはご機嫌ななめ』(13)などのチョン・ユミ、『ハハハ』(10)や『自由が丘で』(14)などのムン・ソリが、以前は常連だった。

『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)、『82年生まれ、キム・ジヨン』(19)などのヒット作&話題作でもおなじみのユミが、上記のホン・サンス作品で演じたのは、中年男性との恋愛関係に揺れる女子大生といった役どころ。一見、清純派。しかしコケティッシュな側面も持ちあわせており、男どもを翻弄する。童顔で困った表情が印象的な、ユミの個性によく合致していた。彼女がヒロインだったころまでのホン・サンス作品は、圧倒的に男性目線で描かれていた。そこに、童顔かつコケティッシュなユミの存在感は、絶妙であった。

ホン・サンスの作風を変えたパートナー、キム・ミニ

【写真を見る】『正しい日 間違えた日』以降、ホン・サンスの公私にわたるミューズとなったキム・ミニ
【写真を見る】『正しい日 間違えた日』以降、ホン・サンスの公私にわたるミューズとなったキム・ミニ[c]Everett Collection/AFLO

『正しい日 間違えた日』(15)以降、サンスのミューズとなったのが、キム・ミニである。そしてこのころから、その作風も落ち着いたトーンになっていく。男性目線から女性目線へ。それは、“キム・ミニ以後”と表現しても差し支えないぐらいの変化だった。物語の展開的に、ギャグや諧謔などが抑えられ、より洗練された方向に向かった。人間を見つめる目に、いまや温かみさえ感じる。

筆者がミニの存在を強烈に認識したのは、全裸での濡れ場も鮮烈なパク・チャヌク監督の『お嬢さん』(16)。それとは対照的な、ホン・サンス作品での彼女の佇まいには、大きな驚きを覚えた。

ヒロインは狂言回し的な存在で色恋沙汰には巻き込まれない(『小川のほとりで』)
ヒロインは狂言回し的な存在で色恋沙汰には巻き込まれない(『小川のほとりで』)[c]2024 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.

サンスとのコンビ最新作である『小川のほとりで』の大学講師役は、狂言回し的な存在。冷静な視線で人と人を有機的に結びつけるが、本編中での彼女自身はロマンスと無縁な存在になっている。ヒロインが色恋沙汰には巻き込まれないホン・サンス作品!かつては考えられなかったのではないか?

『旅人の必需品』での自然さがなんとも上手いイ・ヘヨン

知人から紹介された奇妙なフランス人女性との距離感を測りかねる姿が自然なイ・ヘヨン(『旅人の必需品』)
知人から紹介された奇妙なフランス人女性との距離感を測りかねる姿が自然なイ・ヘヨン(『旅人の必需品』)[c]2024Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.

さらに、『あなたの顔の前に』(21)での主演以降、レギュラー的な存在となっているのがイ・ヘヨンだ。監督と同年代と言える彼女も、クォン・ヘヒョと同様、監督の若いころの作品とは「合わなかった」のかも知れない。

旅人の必需品』(24)では、知人から紹介された奇妙なフランス人女性との会話に、距離感を測りかねる役どころ。親しげに振舞いながらも、不信感が何気なくにじみ出てしまうあたりが、なんとも上手い。